『小さな玩具〈ハコ〉~私を神と呼ぶ者たち~』
いくつかの条件を設定して、自由にプログラムを走らせる実験知育玩具。
我々の世界ではごくありふれた玩具〈ハコ〉だが、退屈しのぎにそれをベースに少々オーバースペックな魔改造玩具を作ってみたのだ。
やがてプログラム達は、自らを、その『欲』の結果『実体化』に向かわせた。
もちろん本当に実体化する訳ではない。
彼らの世界の中で実体化っぽく存在しているだけだ。
いつしか『ガイア』と言う自分達の住処となる母星の概念と、その他の『宇宙』と言う概念を作り、様々な多様性のプログラム体、『生物』さえも作り出した。
ガイアの中での最高位プログラム体は、ヒトもしくは人間と呼ばれる者たちで、私が玩具〈ハコ〉に魔改造をしかけてから六度眠った程度の時間で進化してきた者たちである。
彼らは自らいろいろ思考しているようで、ガイア外の宇宙がどんどん広がる事に興味を示しているようだった。
それはそうだろう。
彼らが思考し、知識を得る度に、その知識を蓄えるスペースが必要になるのだから。
君らが考え、悩み、学習する。
そういった事が作る空間こそが宇宙だ。
自分達で作り出しておいて未だ気付かずにいる。
少し滑稽で愛着さえ覚えてしまう。
プログラム体のヒトの中でも、ずば抜けて進化、そう真実に近付き『気付き』を得た者達を、別な玩具〈ハコ〉に移し替えた。
彼らはまた更に、違う世界を作り出している。
退屈しのぎに始めた玩具〈ハコ〉の魔改造だけれど、なかなかどうして面白いではないか。
まだしばらくは楽しませてくれそうだ。
~完~