そらんぢ堂

アーカイブ図書館として残します。

小咄『小さな玩具〈ハコ〉~私を神と呼ぶ者たち~』🌍

2022年12月25日 14時30分00秒 | 小咄
『小さな玩具〈ハコ〉~私を神と呼ぶ者たち~』

いくつかの条件を設定して、自由にプログラムを走らせる実験知育玩具。

我々の世界ではごくありふれた玩具〈ハコ〉だが、退屈しのぎにそれをベースに少々オーバースペックな魔改造玩具を作ってみたのだ。

やがてプログラム達は、自らを、その『欲』の結果『実体化』に向かわせた。

もちろん本当に実体化する訳ではない。
彼らの世界の中で実体化っぽく存在しているだけだ。

いつしか『ガイア』と言う自分達の住処となる母星の概念と、その他の『宇宙』と言う概念を作り、様々な多様性のプログラム体、『生物』さえも作り出した。

ガイアの中での最高位プログラム体は、ヒトもしくは人間と呼ばれる者たちで、私が玩具〈ハコ〉に魔改造をしかけてから六度眠った程度の時間で進化してきた者たちである。

彼らは自らいろいろ思考しているようで、ガイア外の宇宙がどんどん広がる事に興味を示しているようだった。

それはそうだろう。
彼らが思考し、知識を得る度に、その知識を蓄えるスペースが必要になるのだから。

君らが考え、悩み、学習する。
そういった事が作る空間こそが宇宙だ。

自分達で作り出しておいて未だ気付かずにいる。
少し滑稽で愛着さえ覚えてしまう。

プログラム体のヒトの中でも、ずば抜けて進化、そう真実に近付き『気付き』を得た者達を、別な玩具〈ハコ〉に移し替えた。

彼らはまた更に、違う世界を作り出している。

退屈しのぎに始めた玩具〈ハコ〉の魔改造だけれど、なかなかどうして面白いではないか。

まだしばらくは楽しませてくれそうだ。

~完~

他人任せの歳時記❄

2022年12月22日 17時00分00秒 | 言いっ放しな独り言
冬至かぁ。
それすら忘れていた。

冬至十日前とは良く言うけれど、それを確認しようにも、今の場所に越してきてから空を見上げなくなってしまったし、体感的な日の長さを感じる事もなくなってしまった。

今の私の場合、季節感はあくまでPCの画面越しに見知らぬ誰かが届けてくれるもの。

他人任せの歳時記でも、まあそれもアリでしょうかね。



言の葉供養0149

2022年12月22日 12時00分00秒 | 言葉遊び、言の葉供養
『風と空と僕と』

風は
どこで生まれ
どこで消えるのか

空は
どこから始まり
どこで終わるのか

僕は
いつから僕で
いつまで僕なのか

仕組みがきっと
そうなのだから

仕組みがきっと
そうなのだから

だから答えは
遥かに遠く霞んでる

※12/20に某所に書下ろしで載せてすぐ消したもの。

早まった特別ルーティン😥

2022年12月19日 20時30分00秒 | 日常記事
日々、決まったルーティンで動くロボットなワタクシ🤖

毎年年末年始は、ヘルパーさん、看護師さん、PTさん、ケアマネさん、暦での具合によってはゴミのおじちゃんまで、通常ルーティンから特別ルーティンへとシフトする🗓🎌🎉

今年も最終週から特別ルーティンへの移行の予定だったのだが、ヘルパーさんの事務所でコロ助罹患者が出たらしく、急遽明日から様々な場面での特別ルーティンへのシフト開始となってしまった🏁

本来なら明日は、午前中に訪問看護で午後にヘルパー(食材買い出し等)なのだが、とりあえずの明日は、どちらも午前中🕙と言う事に😅モロ被りだけど…なんとかなるっしょ❓😆

とにかく明日から特別ルーティンへとシフトするワタクシでありんす🙆✨

小咄『そらんぢ堂~あなたの走馬燈お預かりします~①話』🎅

2022年12月17日 19時00分00秒 | 小咄
【そらんぢ堂~あなたの走馬燈お預かりします~①話】

部屋の中は全体的に冷えていた。
うとうとする彼の足許には電気ストーブがあり、二段式の電熱部の上方だけを点けていて、ふわりと身近な空間だけを無音で優しく暖めていた。

時折音を発している画面と一体型のパソコンの画面には、雪夜のケベック旧市街地を歩きながら撮した映像が流れていた。

ふと、何者かの気配を感じて、彼は穏やかに覚醒してみる。

小さな女の子が立ったまま、パソコンの載るデスクに手をついて画面を覗き込んでいた。

「おじちゃん」
彼は答える。
「ん?なんだい」
「これはサンタさんのおうちの近く?」
彼は画面を確認する。
「残念だけどここは違うみたいだね」
そう言うとマウスとキーボードを動かせる左手だけで操作して、
「ほら、これがサンタさんの村だよ」
と、小さな女の子にサンタクロースビレッジの映像を見せた。

きらきらと輝く瞳で、食い入るように画面を眺める女の子。

「私ねぇ、病気が治ったらサンタさんに会うんだ」
「そうなんだね」
「うん、ママとパパと約束したの」
「じゃあ早く治さないとね」
「うん!」

にこやかに笑った女の子。
その頭を優しく撫でてやる事しか、彼には出来なかった。

どれくらいの時間が過ぎたろう。
短いような長いような。

彼の左手には、既に女の子を感じるものが何もなかった。

麻痺する右半身の足も手も、少し寂しそうな痛みを発した。

小さな女の子がサンタさんに会う事は叶わない。

ここは『そらんぢ堂』で私は主の『そらんぢ』、黄泉の国から戻されたもの。

なんの因果が、なんの意味があるのか分からない。

ただ…今こうして、さっきまで『生』を感じていた小さな女の子が最期に見た夢『走馬燈』を、この手に預かり、そして深淵の入り口にそっと流す役目を淡々とこなすだけ。

窓の外で風が鳴いた。
夜と一緒に誰かも泣いた。

パソコンの画面ではフィンランドの雪景色に、クリスマスライトが淡く反射していた。

ー①話完ー