陛下、お味はいかがでしょう
「天皇の料理番」の絵日記 工藤 極 著
前回に続き、食に関する本を読みました。
とっても面白くてあっという間に読み切りました。
1951年生まれの工藤さんが宮内庁の大膳職(洋食担当)として腕を振るわれた時のいわば回顧録で、工藤さんの人生のアドベンチャーを天皇家への尊敬と愛情をもって綴られています。
まず、宮中晩餐などを除いて普段は昭和天皇は腹八分目で質素な物をお召しになっていたそうです。でも地方行幸などの際は宮内庁から事前に「量を少なめに」と伝えていても地元の幸を使ったご馳走を用意してくれる事が多く、そのような時は残さずに全て召し上がったそうです。「残すのはおもてなししてくれた人に対して失礼」とのお考えからだそうです。尊いです。
また、「身土不二(その土地で生産された物を食べる)」「一物全体(食べる時は一部だけでなく全体を食べる)」をモットーとされていたそうです。
お正月も天皇家は朝から宮中祭祀と一般参賀で朝からゆっくりお召し上がりになる時間がないので、ワンプレートでおせちのようなものをお出ししていたとか。
普段は質素な食生活とはいえ、華やかな宮中祭祀のエピソードも多くあり、読んでいて「へえぇ」と何度も思いました。
笑ってしまったのは、宮内庁で働く、言ってみれば工藤さんの同僚であるAさんが侍従として皇太子御一家にお仕えしていた頃(皇太子=現上皇。今上天皇がまだお子様の時)に葉山の御用邸でご家族で手漕ぎボートに乗られていた時のエピソードです。
海の外側には海上保安庁が護衛、近くは護衛官と侍従達が手漕ぎボートで見守っている時になんとAさんは海に転落し、カナヅチのAさんは手足をバタバタさせて溺れたそうです。
それを見た当時の皇太子殿下(上皇)はAさんを助けようと海に飛び込みAさんのところに近づいていったらこともあろうかAさんは皇太子にしがみついたとか。
二人ともすぐさま他の護衛官によって引き上げられたそうですが、本来お守りすべきお方にしがみついたというので周囲はショックを受けたそうですが、皇太子殿下は「良かったです」と笑顔だったそうでAさんも何のお咎めもなかったそうです。
なんとも微笑ましいエピソードですね。
さいごに。
誰であっても「食べる人のために心を込めて調理をする」事を私は忘れていました。家族のために丁寧に料理しようと思える、一冊でした。しばらくの間は、ね😉