プロコフィエフの日本滞在日記

1918年、ロシアの若き天才作曲家が、大正期のニッポンで過ごした日々

京都へ

1918-06-12 | 日本滞在記
1918年6月12日(旧暦5月30日)

 朝八時半、メローヴィチと特急列車で京都に出発した。京都まで十一時間の旅だ。特急には小さいながらも優雅な展望車があり、かなり速度が速い。美しく、居心地がよく、非常によく整備された日本の旅に、私はおおいに満足した。メローヴィチはいいやつだ。展望車のデッキの肘掛椅子に腰を下ろしながら特急列車で日本を旅し、ドビュッシーの『花火』について語る日が来ようとは、エシポワ先生の教室で学んでいた頃は思いもしなかったと二人で笑い合った。

 私の日本円は確実に減りつつある。もしストロークが信用できなかったとすれば、私の立場は危機に瀕していたにちがいない。
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