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親友が語る手塚治虫の少年時代

2019-05-04 13:26:44 | 関係出版物

田浦紀子・高坂史章編著、和泉書院、2017年、1750円
 田浦・高坂姉弟による手塚治虫の研究書。手塚の同級生や弟妹をはじめ、お付き合いのあった方々の話をまとめたもので、手塚治虫の原点を探ろとする試みである。手塚が没して30年、関係者も高齢となっている今、貴重な一書である。田浦・高坂姉弟は学生時代に「虫マップ-手塚治虫ゆかりの地を訪ねて-」と題するホームページ(http://mushimap.com)を立ち上げ、若き手塚の歩いた大阪の町々を紹介し、手塚治虫紹介に尽力してきた。
 小学生時代の手塚は天文少年であり、昆虫少年であった。1937年に誕生した大阪市立電気科学館は日本で最初にプラネタリウムを設置した科学館で、手塚が小学校3年生の頃だった。丁度、外界に目が向き始める頃で、最新の科学・技術を紹介していた電気科学館に手塚は同級生の石原実さんと一緒に足繁く通っていた。そこでの宇宙体験は手塚の原点の一つと言えよう。
 電気科学館が開館50年となる1987年3月、手塚を招いて市民向けの講演会を開催した。その時が筆者と手塚との唯一の出会いであった。それから30有余年、手塚が歴史の向こうにかすんでいく。人々の記憶にとどめるにはくり返し手塚の名前を連呼し、宣伝するしかない。それをぜひやって欲しいと著者に頼んでいたが、その成果の一つが本書であり、その労を多としつつ出版を喜びたい。そして、次の企画を楽しみにしている。



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