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可哀そうなプトレマイオスと天動説 <2>

2021-03-17 14:24:22 | エッセイ

 今回はネット上にあった図から。あえて出典は明記致しません。誤りやすい例として取り上げただけで、非難しようなどいう気はありませんので、よろしくご理解をお願い申し上げます。

■ちょっと気になるこの図(1)

「天球の上方に中世では神が座していた」というのは良しとして、これをプトレマイオスの宇宙像とされると、やはり、可哀そうなプトレマイオス、でしょう。

 これは前回ご紹介した哲学者=神学者の宇宙像であり、確かにプトレマイオスも採用しましたが、当時の趨勢に従っただけで、自分の考案かのように扱われるとプトレマイオスもびっくりに違いありません。

 恒星天の外に天使がいて、それが恒星天を回すと、その動きが隣り合う天球を通して月まで順次伝わる、という機械的な宇宙がプラトン、アリストテレスから始まり、やがてキリスト教に取り入れられたと思いましたが、・・・・

 

ちょっと気になるこの図(2)

 この図のどこが気になったか、おわかりでしょうか?

導円はあるし、周転円は金星にあって、太陽になし、で間違いではないし・・・

 ですが、この図の雰囲気では金星が地球の下、太陽の反対側に来そうです。むむむ、真夜中に見える金星ですか!

 プトレマイオスでなくとも、原始的な同心円宇宙でもこんなことはありませんでした。

 金星の周転円の中心は地球と太陽を結ぶ線分上にないといけませんよね。

 

ちょっと気になるこの図(3)

 左の図には上の図と同様のエラーに加え、もう一つのエラーが潜んでいます。

 が、これはちょっと高級! これを研究したコペルニクスは惑星には周転円は要らない、その代り、太陽を中心にして地球を回せば良いと気づいたのではありませんか?

 周転円は何のために必要だったのでしょうか? そうです、惑星の逆行現象を作り出すためでした。衝の前後に逆行になるのですから、地球を挟んで太陽と惑星が対峙した時、惑星は周転円上の近地点に来ている筈です。これはどの外惑星でもそうですね。

 こうなるには周転円上で惑星は太陽と同期して回らなければなりません。そう、周転円中心から惑星への向きは地球・太陽の向きと同じ、平行でなければなりません。

 残念なことにこの図では太陽と同期しているようには描かれていませんね。

 周転円は地球公転の反映ですから、周転円の半径は地球・太陽間距離になります。もっとも、プトレマイオスの天動説では惑星間距離は任意にとれますから、これは後日分かったことです。

 コペルニクスは、どの惑星も周転円上では太陽と同じ向きで、かつ、1年で巡ることから、周転円を無くし、その代り地球を回せば良いことに気づいたのです。ですから、もしプトレマイオスがこの図のような姿を提示していたら、天才コペルニクスがプトレマイオスを批判することはなかったかも知れません。それは、勿論、批判の対象たり得ない、というレベルだからです。



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