今年も桜が咲いている。
この国を覆いつくすように
人びとの心を
覆いつくすように
今年も桜が咲いている。
311の
あの春にも
思ったけれど
それでも桜は咲くのだ。
裏山に咲く一本桜。
見る人もなく
ひっそりと咲いている。
写真は
花曇りの日に。
「桜」は
たくさんあるけれど
ソメイヨシノは別格、次元が違う。
と思う。
ただ美しいというだけでは説明のできない
ソメイヨシノの魅力。
その神秘。
ソメイヨシノは
わたしたち日本人の
わたしたち日本人の
心の奥の奥にあるものを揺り起こし、
突き動かす。
いろいろなことを思い出させる。
桜を見上げてきた幾たびもの春。
隣にいた人のこと。
いなかった人のこと。
そのときの気持ち。
喜びも悲しみも、なにもかも。
桜から桜に渡した一年の
数々の出来事。
思い出せるはずもない「なにか」さえ、
桜はわたしたちに、
思い出させようとする。
DNAに記憶されているなにか。
この体に流れる血が覚えている、なにか。
この体に流れる血が覚えている、なにか。
頭上を覆う花の波
風もないのにはらはらと舞う花びら
髪に、肩に、舞い降りて
足元に散り敷いてゆく花びら
川面を流れゆく花筏
立ちつくして
この胸のざわめきを
持てあます
切なくて
愛おしくて
なつかしくて
なにかがわかりそうで
わからない
この手に掴めそうで
指のあいだをすり抜ける
うまく表現できない
この、狂おしい気持ち。
やっぱり在原業平が詠んだ通り、
「世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし」
なのだ。
「世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし」
なのだ。
野に山に、
水辺に、
街に、
うねる雲海のように桜が
あまねく咲き乱れるこの国の神秘。
水辺に、
街に、
うねる雲海のように桜が
あまねく咲き乱れるこの国の神秘。
やはり思う。
桜を見上げるたびに
繰り返し思う。
これからも毎年、思うだろう。
この国に
生まれてよかった。
祈りを込めて。
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PEACE TO UKRAINE
STAND WITH UKRAINE
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