私も年をとったなぁ、と思う。
自分の歩いてきた水墨画の系譜を調べるなんて。
これまでは突き進むばかりで、振り返ることをしないでいたけれど、
そろそろ人生に辻褄を合わせたくなったのかもしれない。
私の師匠は鈴木昇岳といい、水墨画は友人の根岸嘉一郎先生とともに日本画の佐藤紫雲に習ったと話していた。
佐藤紫雲、その先はどう繋がっていたのだろう……
どうにも気になって古本屋でこの画集に辿り着いた。
思いがけず、私の水墨美人画の系譜は水野年方に繋がるらしい。
つまり樋口鳳香の墨美神®︎は、歌川派であるということで、
昨日まで憧れだった歌川派の系譜は、すでに足もとに流れていたのだ。
百年なんて昔は意外とすぐ近くにあったのだと思い知る。
正直言うと古書にしては高く購入を迷ったけれど、
こんな気の利いた包みで届くなら、悪くないと思った。
昨今巷に溢れる過剰であっても無機質な梱包を思うと、
過ぎ去った時間へのリスペクトを感じて良い。
さあ、何があらわれるか、この瞬間は、どきどきである。
長い時間の中で積み重なった空気や、そこにあった匂いなど
さまざまな記憶が、私の手元にやって来た。
失われた時を求めて、ですね。
購入に至った最後の決め手となったのが、この題名。
『鳳舞』
私が受け取るのを待っていた気がする。
中表紙めくると、まず、衆議院副議長 秋田大助 とある。
さらに、国務大臣 山田久就 の賛辞
あれ。根岸先生のご親戚かしら。
最後に佐藤紫雲先生の『追想』
はっきり誰が師であったか分からないが、
小林古径が友人であったこと、
水野年方門人であり、奥さまとなった秀方先生に人物を学んだこと。
年方先生の門下生に鏑木清方、池田輝方、荒井寛方などいたこと。などなど記されてある。
大河のような歌川派の系譜。
私も時代に刻める佳い仕事を残したいものです。
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