樋口鳳香の作品は、
作家さんが、その前で立ち止まって
じーっと長い時間見つめていることがよくあります。
訊けば、
『どうやって描いているのか分からない』
『描き方が想像できない』
と言います。
技法は聞かれればいくらでもお答えしますが、
それでも想像ができないようです。
墨の滲みの偶然。
和紙の種類によっても大きく左右されるその結果を味方につけて作品を仕上げるには
やはり枚数を描く、=実験を繰り返すしかないので、
相当の気力と、集中力と、時間、が必要です。
かんたんには真似はできないだろうとも思っています。
水墨画は、明治維新に岡倉天心とフェノロサによって仕分けされてしまったので
大学で教えることが基本的にありません。
水墨画の技法、運筆は、大学の先生でもご存知ない方がほとんどでしょう。
樋口鳳香は水墨画の師匠について、10年を超えた今でも学び続けています。
その中で自分なりの独自の表現方法にたどり着きました。
水墨画の団体、現代水墨画美術協会=現水、に所属していますが、
水墨画のプロであっても
樋口鳳香と同じ技法で美人画を描ける作家はいないと自負しています。
それほど大したことをやっているつもりはないですが、
人様にお見せしてもいいと判断できる作品を、
毎日、どんなに小さいものでも必ず1枚仕上げてきました。
毎日、技術を磨き、自分の中の新しい表現を模索し続けています。
私にとって、現在は常に、未来の過程です。
次の個展は、11月開催を企画いただいています。
どんな未来の過程がお披露目できるか、今は自分にとっても未知の領分ですが
新しい可能性のかけらを感じていただけたらと思い、
前に進んでいます。
どうぞ今後とも墨美神と共に、樋口鳳香をよろしくお願い致します。
画像作品は、厚生労働大臣賞受賞「夢む」