王様の耳はロバの耳

乙女ゲームやBLゲーム、時々映画の感想を書いていきます。
ネタバレありです。閲覧注意。

『方舟』感想  『十戒』感想  ネタバレあり

2024-06-02 03:36:15 | 読書
こんにちは、サニーです。

1,2年ほど前に話題になったミステリー小説

「方舟」 
「十戒」(著作:夕木春央)

を読み終えました!
今日はこの2冊の感想を書きます。


ネタバレありですが、真相や犯人、殺人事件に関わるところは反転←反転(長押し)してお読みください。


この2冊の繋がりはほとんどないので片方読んでなくても楽しめますが、「方舟」→「十戒」の順で読むと「おお!」ってなるところがあります。

ちなみに、公式の解説サイトがあります。

方舟

十戒
『十戒』ネタバレ解説サイト

『十戒』ネタバレ解説サイト

『十戒』を読んだ人がもっと楽しめるネタバレ解説ページ

『十戒』ネタバレ解説サイト






【2冊まとめてざっくりネタバレなし感想】


「方舟」「十戒」は2冊とも

極限状態で起きた殺人事件を紐解くクローズドサークルミステリー
です


「方舟」
長らく放棄された地下施設に肝試し半分で行ったら地震により閉じ込められ、しかも地下水が徐々に浸水し発電装置が2週間しか持たない。脱出する方法はあるけれど誰か1人を置き去りにしないといけない状況。


「十戒」
個人所有で電波も繋がる無人島で事件が起き、犯人に「犯人を見つけてはならない」を筆頭に色々制約を課され、3日間守れば解放されるけど守らなかったら全員死亡を突きつけられ、事実上島に軟禁状態になる。


どちらも過酷

状況は「十戒」のほうがマシかなぁと思うけど、犯人に生殺与奪を握られ自由を制限され、「犯人の言うことは本当に信用できるのか、生きて帰れるのか」と疑心を捨てられずずっと不安な状態が続くのはストレスだなぁ。


「方舟」と「十戒」、状況は正反対だけど巻き込まれた人たちの言動はよく似ている。
大多数の人は危機的状況を認識できているけれどどうすればいいかわからず何もできない人が多く、主体的に動ける人物(探偵役や犯人)が状況を打破する・変えるべく行動するのにひっぱられている。
それは物語の語り手(主人公)も同様。
ただ、それぞれの主人公は正反対の結末を迎えてる。

そして、2冊とも犯人が凄い。
ネタバレなしで言うととにかく凄いしか言えない。でも凄い。











⚠この先ネタバレあり⚠














【方舟】


デスゲーム始まりそうな環境整いすぎ

大学時代のサークル仲間とたまたま見つけた怪しい地下施設を探検してたらタイミングよく地震が起きて閉じ込められた上に地下水の浸水が始まって、脱出するために必要な道具やトリックに使える道具、「お話し合い」に必要になるかもしれない拷問道具が完備されてて、非常食がちゃんと備蓄されてて…


お膳立てが整いすぎて割とマジで一番最初のソウみたいなオチを予想してた
違ったけど
あんだけ注目されまくってた拷問器具も全然使われなかったし。


この方舟が元々一体どんな目的の施設だったかは結局よくわからず、怪しい宗教団体の施設だったってことしか作中では言及されてない。
物語的にはあくまで「早く脱出しないと死ぬ地下空間」っていう舞台でしかない。


まぁでも犯人の動機はなかなかエグかった

⚠犯人・真相ネタバレ(反転)

脱出するための条件を故意に捻じ曲げ、自分ひとりだけ助かるよう暗躍してたんだもんなぁ…
本当の脱出条件は「水没した非常口を目指してスキューバダイビングする」
だけどこの方法だと脱出できるのは1人か2人。何日かかっても救助を待つゆとりがあるならまだしも、何日かたつと施設が完全に水没して溺死するからボンベや道具を巡って壮絶な奪い合い殺し合いが始まりかねない。そうなると女性である犯人には不利な状況になるから、本当の脱出条件を隠蔽し、「自分たちが入ってきた出入り口を塞ぐ大岩を、1人を置き去りにして装置を使って動かせば残りの皆は助かる」(実際は出入り口の外は土砂崩れで埋まっている)と全員に思い込ませる。
犯人は3回殺人事件を起こしたんだけど、動機は一貫して「自分が脱出するための障害を排除する」。

うーん、仕方ないっちゃ仕方ないけどなかなか鬼畜。
最後の最後で主人公だけに真相を教え、他のメンバーはもうすぐ脱出できる!って希望に満ち溢れていたのに真実を目の当たりにして絶望のどん底に叩き落されてたもんなぁ。
しかも主人公には救済の道が用意されてたんだよなぁ。
「探偵役に犯行を暴かれて置き去りにされた自分(犯人)に寄り添って一緒に残っていれば、一緒にダイビングして脱出するつもりだったんだよ」だって😇

ちなみに私、読んでる途中と読み終わった直後はこの犯人のことめちゃくちゃ嫌いだったんよね。
犯人の鬼畜外道っぷりにドン引きした以外にも、この女サークル仲間と結婚した既婚者のくせに、主人公に「夫とうまくいってないの🥺」って相談女ムーブかまして粉かけてたんだよね。というかそもそも主人公とは大学時代は付き合う一歩手前みたいな状態だったのに卒業シーズン付近で今の夫とお付き合い・結婚をしたらしい。そんな関係だから主人公と夫は中学時代からの友達だったのにぎくしゃくしてると。
サークラやないか。
身近にいたら「けっ」って思いそうだけど、作中のサークル女子達もそんな感じだったのか犯人と仲良さそうな様子は見られなかったんだよね😇

まぁ、でも、この女は主人公にも夫の手にも負えない怪物だよな。
観察力、判断力、分析力、演技力、フィジカル、機転、発想、冷静さ、どれも尋常じゃない。
しかも前々から計画してたわけじゃなくてその場その場で自分が助かるための最適解を計算してるんだよなぁ。
畏怖の念が芽生えるわ。

色々凄い犯人だけど、ちょっと突っ込みたいところもある。

物語中盤の
第二の殺人事件
わざわざ首チョンパしてかなり離れたところから超慎重にウェス持ってくる必要なくない?😇
なんか適当な袋かシーツ被せてナイフで顔ズタズタにすればよくない?そっちのが手間もかからないし返り血も防げるし犯人の目的も達成できるしいいことづくめでは?
探偵役曰く「顔面破壊は心理的抵抗がある」とか言ってたけど、首チョンパのほうがきつくない?


犯人について語ってばっかだから、主人公にも触れておこう。

主人公、
絶妙に頼りない
いや、語り手として読者に状況を伝えてくれる分には冷静な思考の持ち主なんだけど。

受け身だし積極性に欠けるんだよね。
探偵役の従兄弟の助手ポジではあるんだけど、ただただ従兄弟に従ってるだけだし。
そして切羽詰まった状況なのに好きな女のことで頭いっぱいになるし。

そもそもサークルに関係ない従兄弟連れてきた理由も、
好きな女とその夫との三角関係が気まずいからっていう。
うーん、頼りない

自分で状況を変える行動をせず誰かの考えや策略に乗っかるだけ流されるだけの果ての結末は…

そして、今作の探偵役の主人公の従兄弟。
ヘタレ主人公に頼まれて着いてきただけの人で、主人公以外全員と初対面。
冷静に状況を見ながら最善を模索し、殺人事件の犯人もズバリ的中させる…んだけど、
(反転)
残念、脱出方法の前提を捻じ曲げられていたせいで最後の最期に犯人にしてやられたりに。というか最初から最後まで完全に犯人の手のひらで踊っていた。
もうね、相手と状況が悪すぎた。可哀想。



総評
ツッコミどころはあるけど、極限状態の徐々に追い詰められる経過は生々しくリアル。
犯人すごい。













【十戒】


生殺与奪の権を他人に握らせるな!

鬼を滅する漫画の有名な台詞だけど、知らん間に10人近くがまとめてがっつり握られちゃったらどうしようもないよね。

いや、回避ポイントはあった。
島吹き飛ぶくらいの爆弾見つけたら四の五の言わずさっさと逃げよ?

確かに一晩くらいほっといたくらいで突然爆発しないやろってなる気持ちはわかるけど、普通に怖いやん。
主人公パパも、保身に走る気持ちはわかるけど主人公の言う通り問題を先送りしただけでいつかは警察に言わなきゃいけないんだし。
そんで一晩明けたら爆発はしなかったけど爆弾盾に行動制限かけられる羽目になるし。


今作のクローズドサークルは
スマホの電波ばっちり届いて3日間限定って言うなかなか開放的な環境
まぁ電波バチバチでもスマホは封印されたけどね😇
それでも前作の全員助かる道のない超ハードモードクローズドサークルと比べると一見希望はある。
がっちがちに行動制限・精神拘束されるけどね!
外部との連絡は怪しまれないように必要最低限だけとるけど会話はみんなに筒抜けとか、基本は単独行動推奨で複数人が30分以上一緒にいてはならないとか。
最大のポイントは
犯人が誰か知ってはならない
例えば皆でアリバイを確認し合うとか、証拠品を探すとか、そういった行為も禁止。
「これ、ミステリーとして成立するの?」って思ったけど、ちゃんと探偵役います。
主人公と相部屋だった人です。
探偵役は他のメンバーの目を盗んで主人公や主人公の父親と密談をする、他の人のスマホをこっそり盗み出すなど危ない橋を渡りながらロジックを組み立て、最終日に推理を披露します。

そんなことしなくても3日間大人しくしてた方がいい気がするけど、
探偵役曰く「思考停止して犯人を探らないのは危ない」
実際(反転)
2日目、3日目とも朝になると誰か1人殺されてて、残りの人間は犯人の証拠隠滅のために協力させられます。

犯人が被害者を殺した理由もわからないから(読者はもちろん読み終わる頃までにはわかるけど)次は誰が狙われるかわからないし、そもそも犯人は本当に3日後に自分たちを解放してくれるのか信用もできない、仮に助かったとしてもその後の警察の取り調べや世間の目で犯人扱いされるかもしれない、でも犯人に歯向かえば全員爆殺。外部との連絡の時も助けを求められず嘘をつかなきゃいけないから急に3日間帰れなくなったことを責められたりする…

なかなか危ない状況だし精神的にきつい…
実際情緒不安定になった人もいたし。


⚠犯人・真相ネタバレ(反転)
探偵役が示した犯人は
第3の被害者の藤原。
殺されたと見せかけて、他メンバーに部屋に閉じこもるよう指示したあと脱出の準備を整えた。
他の被害者の小山内と矢野口は爆弾魔仲間で、ずっと島に保管してあった爆弾をどうにかして回収しようとやってきたけどあっさり見つかってしまい、夜のうちにゴムボートで逃げ出そうとしたけれど小山内が崖の上で足を滑らせ事故死。藤原は矢野口を犠牲にして1人逃げ切ることを思いつき、今回の事件を起こした。
世間的に自分は死んだことにしたいから逃げたあとに残りの人間を爆殺する可能性は低いと考え、今後すぐに自分たちも逃げ出すか一晩様子を見て予定通りにくる迎えを待つか選択してもらいたいから推理を披露したとのこと。

まぁ、真犯人は探偵なんだけどね。
なんというマッチポンプ

探偵役の推理は被害者3人が爆弾魔ってところは本当だけど、小山内殺害からの推理は全くデタラメ。全員きちんと探偵役の手で殺されています。
殺害の動機は
3人は夜のうちに脱出したあと、証拠隠滅のためほかの人間ごと島を爆発させるつもりだったことを知ったから。
探偵役がそのことを知ったのはまさに3人が夜陰に隠れて脱出準備をする現場を見たとき。
他のメンバーに助けを呼びにいく時間もなく自分1人じゃ男3人を止めることは出来ないから、とりあえず起爆装置を持っていた小山内を殺害。
上述推理のように仲間割れして1人が逃走したように見せかけるため「十戒」を用意し、メンバー全員の行動制限をして殺人と偽装工作に暗躍します。
突発的な殺人を犯したあと、わずかな時間で一連の計画を思いつき完璧に実行。皆脱出したあとは島を爆発させてしっかり証拠隠滅。
ただ者じゃない。
主人公は
同室だった探偵役が深夜怪しい動きをしたことは知っていたけど、「犯人を知ってはならない」十戒を破ったら爆殺だと脅されたのと確証が持てないこともあってずっと口をつぐんでいたし、あまつさえ父親には探偵役のアリバイを証明した。
よくよく考えれば「個室だった他のメンバーとは違って同室だった2人はお互いのアリバイを証明できる」っていうのは十戒の前では無意味なんだけれど、(私もだけど)島メンバーは気づかなかったので探偵役は「犯人じゃない可能性が高い人物」として信頼度が高くなり、矢野口や藤原の警戒を下げて犯行がしやすくなったとのこと。
島から脱出したあと探偵役は主人公に真相を教え、今後も口を噤むよう笑顔で圧をかけ、主人公は涙を流しながら承諾する…

完全犯罪達成。

主人公、小説をよく読むと探偵役に対して鼻白んだり怯えたりしてるんだけど初見じゃ「大胆不敵な行動と推理に驚いたり呆れている」風にみえるんだよね。
大胆不敵もなにも犯人なんだから好き放題動けるんだけどね。
よくよく見るとまとめ役っぽい行動を取りながら皆を誘導してるんよね。
主人公は探偵役が犯人と知りながら一切邪魔をせず、自分や他メンバーの命運を探偵役に委ねた、消極的な共犯者のような立場。
よっぽどの気概ないと主人公と同じ立場なら誰でも同じだっただろうけど、主人公はしっかり罪悪感を抱えてるから涙が止まらなくなったんよね。


※ここからは「方舟」の真相にも触れます。
⚠「方舟」「十戒」両方とも見てない人は閲覧注意⚠


(反転)
今回一番ビックリしたのが
今作と前作の犯人と同一人物だったこと。
名言はされてないけど間違いない。
小説ラストのセリフ
「じゃ、さよなら」
をみた時はゾワっとした。
あの難易度高ランクのスキューバダイビングと地震で土砂崩れが起きた山からの下山達成して人里に戻れてたんだね。
やっぱりフィジカル凄い。
書類上はまだ既婚者だけど、仕事では旧姓を名乗ってるとのこと。
今回の登場人物がほぼ名字だけしかわからなかったのはこのための伏線か…!

前回も今回も行動原理は一貫して
「不測の事態に巻き込まれたときに、どうすれば自分は助かるのか」
であって、自分の命を助けるために手段を選ばずずば抜けた知力・体力・演技力を駆使して目的を達成するんよね。
凄すぎて一周回ってファンになったわ。

前回は全員の命を直接的・間接的に奪ってたけど、本人は別に快楽殺人者ではないから必要がなければ積極的に他人に害は与えないのよね。多分。
まぁ今回助かった人たちもトラウマやPTSDに悩まされるだろうし主人公に至ってはずーっと重い秘密を持つことに苦しむんだろうけど、そんなことは知ったこっちゃないんだわな。

前回の主人公は犯人を見捨てることで自分が見捨てられて命を落とし
今回の主人公は犯人に従属したことで生涯犯人の影から逃れられない
真反対の結末を辿ってるけど、どちらが良かったんだろうね。

総評
ドンデン返しは前作以上。前作読んでるとより味わい深い。
やっぱり犯人凄い。


【まとめ】

どっちも犯人についてがっつり色々書いたけど、
「方舟」も「十戒」も犯人が凄い。
これに尽きる。

色々舞台となった場所の謎は残っているけれど、そこはどうでもよくて
あくまで「特殊環境での殺人」「そのときの人々(探偵、犯人、モブ)の動き」がメイン。

次回作も絶対あると信じてる!待ってます!

『ルビンの壺が割れた』 感想

2024-03-27 00:58:27 | 読書
こんにちは、サニーです。


今日の記事は読書感想文。

『ルビンの壺が割れた』



公式あらすじを簡単にまとめると、
30年近く前に結婚の話が出ていた男女がフェイスブックを通じて久しぶりにやりとりを交わし…といったもの。

地の文がなく、終始一組の男女の往復書簡形式(フェイスブックのDM)で話が進んでいきます。

いわゆるドンデン返しもので、終盤でガラリと印象が変わります。


感想も、
序盤
中盤(というか最初と最後以外)
終盤(ドンデン返し)

の3つに分けて感想を書こうと思います。
ネタバレ有りなので未読の方はUターン推奨です。















⚠ネタバレ有り⚠























【感想】

序盤

この物語は主人公(水谷一馬)が、結婚式当日に音信不通になった女性(未帆子)をフェイスブックで見つけてDMを送るところから始まるのですが、

ぶっちゃけ主人公めちゃくちゃキモい

「歌舞伎関連のページをチェックしてたらたまたま見つけた」とか言ってるけど、
特定への執念が凄い。
名字も変わってて写真もないのに、友達欄や他の人とのコメントのやりとりをチェックした後、友達の1人が乗せていた写真から本人と確定。しかも顔加工してあるのに、写真の中の窓ガラスに顔が写っているのを発見したという…。
お手本のようなネットストーカー

そんで「私の中のあなたは数十年前に亡くなったのです」(死んでない)、「返事は期待していません」っつってるのにまたメッセージ送りつけてる😇😇
しかも未帆子の娘のことに触れながら。公開していた娘さんをモデルにした絵を勝手にプリントアウトして部屋に飾ってますとか言うし。きめぇきめぇ。

2通送って無視されて3通目は「前のアカウントを消して新しく作り直しました。特に意味はありません」って新アカウントからDM送ってるんだけど
もしかして前のアカウントブロックされた???

根負けしたのか、ガンになったと書いてあって安心(?)したのか、3通目にしてようやく未帆子から返信が来ます。


中盤

主人公と未帆子のやりとりは一見丁寧な文で和やかなんだけど、
過去の栄光に酔ったオッサンと、時に相手に花をもたせながら当たり障りなくやりすごすホステス感

主人公と未帆子は基本的にずっと大学時代の話をしてるんだけど、
2人は同じ大学の演劇部の先輩と後輩という間柄で、最初はぱっとしない印象だった未帆子が演劇の才能を開花させてから2人の距離が縮まった…というのがなれそめ。
けれど主人公は中学生の頃に両親を亡くしてから親戚の家に身を寄せ、その家の娘(優子)を許嫁としていたらしい。
この優子との関係も主人公がDMで語るんだけど、
正直信憑性薄いんだよなぁ…。
演劇部や未帆子との関係は2人の共通の思い出だから、嘘や思い込みが混ざってても概ね語られていることが事実なんだと思う。
だけど、優子については未帆子も会ったことがないから、どんな人なのか何を考えていたのかは主人公の主観や語られることのみでしかわからない。
作中で語られていることは全部主人公の都合のいいように捻じ曲げられている可能性もある。
「優子の名誉のために伏せていましたが…」的なこと言ってるけど超詳細に梅毒のことや叔父との関係について語ってるのがなんとも。しかも元婚約していた相手に。
「俺は悪くないんだよ、被害者なんだよ」スタンスだけど、実際のところは厄介になっている家の娘に遊び半分で手を出しているのがバレて責任とらされた…っていうのが真相だったりして。そのことを逆恨みしていて数十年たってから相手を貶める悪口を言っているとか。憶測だけど。

演劇部時代の栄光、優子や未帆子との関係を生々しくあけすけに語りながら、話はどんどん不穏になっていく。




終盤
※重大ネタバレあり!












劇団立ち上げの話が出たものの部員が金を持ち逃げして立ち消えたこと、優子が叔父と関係があったこと、そして
未帆子がソープ勤めをしていて演劇部の何人かとも肉体関係があったこと
こういった事実が立て続けに発覚して精神が不安定になったから、自分の人生はめちゃくちゃになったんだ、こうなったのは未帆子や優子のせいだ、などとDMで糾弾したところ、

未帆子から返ってきたのは衝撃の事実。

なんと、
主人公は幼女殺人事件の犯人としてお縄になっていて最近までずっと収監されていた
そもそも未帆子が結婚をぶっちしたのは、
主人公が行方不明になっている女児の持ち物を所持していたことを未帆子が知ったから
知り合いに相談して警察に届けたあと、身の安全のために出奔。遠くの土地でソープ勤めをしながらしばらく息を潜めていたとのこと。

未帆子の密告後(兼、結婚式後)から半年後に捕まり、主人公には無期懲役の判決が出たらしいが30年ちょっとで仮釈放。
主人公は自分の人生を壊した(と本人が思っている)女たちに復讐するためにフェイスブックで近づいた
これがわかったときゾッとしたわ…
「もう過去のことだから」と言いつつ未帆子に住所や今の名前を聞いたのも、未練タラタラだからじゃなくて御礼参りに行くため。
優子にもフェイスブックから近づいたらしく、彼女はちょっと前に急に行方不明になったということ。
きっと優子は主人公をかわすことも拒み切ることもできずに…
主人公がアカウントを変えたのも、優子に近づいた痕跡を消すためらしい(ブロックされたからではないらしい、多分)

というか、主人公曰く「強いストレスを感じると精神のタガが緩んで抑制が効かなくなる」とのことだけど、それって両親をなくしたときも当てはまるよね。その時近くにいた女の子って、優子だよな…。
絶対手ぇだしてるよな、小学生の優子に。
本当のところどうかはわからないけど。

恨み言を粘着質に言ってくる主人公に毅然と言い返したあと、最後に一言
「とっとと死にやがれ、変態野郎!」

未帆子さん、丁寧なやりとりしながらもずーっとこれ心のなかで言ってたんだろうな…
お疲れ様です。

やっと記憶が薄れてきた黒歴史の相手に数十年ぶりに連絡がきて、迂闊だったとはいえ自分の個人情報探ってきた相手とやりとりするのは相当怖かっただろうな。
正直やりとなんかしないでさっさとフェイスブック閉鎖したほうがよかった気もするけど、ほっとくのも怖かったんだろうな…
でも気をつけないと優子の二の舞いになるところだったんよな…

ネットリテラシーって大事だね

『お前なんかに会いたくない』 著 乾ルカ 感想

2024-02-01 02:11:45 | 読書
こんにちは、サニーです。

今日は小説
『お前なんかに会いたくない』
著作 乾ルカ

の感想(ネタバレ有)を書きます。


この小説の主なテーマは
・高校生のスクールカースト
・いじめ
・同窓会

簡潔に言うと
いじめられっ子が大人になってから復讐する話

です!

こういうテーマの作品って
青春時代の精算と和解の物語
もしくは
痛快!下剋上スカッと展開
的な感じかなぁと思うんですが…


この小説、Amazonレビューや他の感想ブログを見ても
結末が今ひとつの評価
なんですよね。


そのへんの私の所感や考察を中心に、感想を書いていきます。














⚠初っ端から結末のネタバレあります⚠











【感想】



結末、全くスッキリしないというか、締まらない終わり方なんですよねぇ。

いじめられっ子は望み通りの復讐を果たせず、いじめっ子筆頭格は腹を括って対峙したのに土壇場でちゃぶ台返しをされ、全員イライラモヤモヤしたまま終了…

ただ、いじめられっ子・岸本の本質からしたら「らしい」終わり方かなぁとは思う。

岸本は自分でも言ってたけど
「絶望的に空気が読めない」
「自分勝手に振る舞い周りの顰蹙を買う
要は客観性がなく、相手にどう思われるか、相手がどう動くかを全く読めないし考えられない。自分に都合のいい妄想や思い込みに従って行動するんですよね。

大人になり多少は知恵がついて取り繕えるようになったけれど、ズレた本質は変わらないからいい年こいて本気でタイムカプセルで復讐ざまぁが実現できると思っちゃったんだと思います。

と、こんなこと書いたけど気持ちはわかるんですよ。
私も陰キャだったので小馬鹿にしてきた元クラスメイトにぎゃふんと言わせたい!って思ったことはあります。「大人になってからかつてのいじめっ子を見返した」みたいな読み物も好きですし。

けど、岸本のやり方でぎゃふんとなるかって言われたら微妙。
不気味さと不快感は与えられるけど破滅させるほどの後悔と恐怖は与えられない気がする。
室田の上司みたいに嫌な思い出として残るけどそれだけ。

ただ、コロナ禍もあって、何人かには多大なストレスを与えられたし冒頭で岸本が望んだ「大人になって順調に生きているあいつらの日常を目茶苦茶にする」は1人分叶った。
岸本が投げたボールを室田がパスを回し木下がゴールを決める。見事な連携。
そしてオブサーバーの滝本がいい仕事をしたおかけで井ノ川のキャリアに泥を塗り、精神的に追い詰めて同窓会の場に引きずり出すことに成功。

なんていうか、
ラッキーマン的な勝ち方だなぁと。

ほぼ運で復讐が進んでる。

そして井ノ川が岸本の恨みつらみを受け取って堂々と対峙すると決めたのに、
岸本は最後の最後で
「は?あなた達なんか知りませんけど」
他人のふり
手紙もビリビリに破り捨て
「なかったこと」

井ノ川からしたら仕事に支障をきたすレベルでキリキリ舞いさせられた挙げ句のこれ。
そりゃあ青筋立てますわ。

岸本は多分井ノ川を筆頭に一軍グループ、ひいてはクラスメイト全員を精神的に隷属させたかったんだよね。

だから井ノ川に「気持ちは受け取るけどそれには応えない」って拒否されて決別されるのが嫌で逃げた…

うーん、自己中ここに極まれリ

この岸本に最大の理解者兼生涯のパートナーが存在するのが奇跡だな。

まぁ、岸本の本位ではないけど嫌がらせは何人かには成功してるんだよな。
井ノ川は先程の通り。
作中には書かれてないけど、「独身」「彼氏なし」を気にしてる室田は見下していた岸本が「堅い職」「既婚者」の社会人がドヤれるカード持ってることに発狂しそう。
木下は本垢で井ノ川を売ったせいでクラスメイトの前に顔出せなくなったし。
けど全員じゃない。
嵯峨はSNSに反応してたけどノーダメだし、他の一軍メンバーはノーリアクションだから何にも影響ない。

骨折り損のくたびれもうけ


まぁ、ここまで岸本批判したけど、井ノ川やクラスメイトの鼻へし折ってやりてぇってのは
ものすごーくわかる

なんでどいつもこいつも鼻につく選民意識拗らせてるんだよ。
特に井ノ川の思い上がりっぷりと他者評価の気にしいっぷりは
女王様なのに小物感が漂ってる

実際、真のクラスの中心人物は三井なんだよな。
三井が声をかければクラスの大半がコロナ禍にも関わらず集うし、リーダーシップがある。
井ノ川は三井のことを「カーストエラー」と評してるけど、井ノ川たち一軍グループはヤクザ者の方が近いかも
派手派手しい雰囲気と威圧で我が物顔してるだけだし。
華やかさがあるからそこには皆惹かれるけど人望はない。
木下にいたっては一軍メンバーの中でも若干浮いてたし。

三井の心情は書かれてなかったけど、岸本や一軍メンバーへの本音はどんなものだったのかね。


あと磯部。壮絶な生い立ちの割に話すと普通の人というか。
奉仕精神への固執さえなかったらもうちょっとクラスに馴染んでいたかも。


富岡はいい奴。


ちなみにこの物語の鍵になってる遺言墨、
エピソードが恋愛ものだったから一連の騒動を「愛の告白」に置き換えてもしっくり来た。

SNSに同窓会アカを立ち上げると、「クラスに在籍してたけど転校していった奴が遺言墨で書いたラブレターをタイムカプセルに入れた」という旨の投稿がちょこちょこ入るようになった

大半はこの話題にあまり触れなかったのに一部のクラスメイト達が「あいつ宛じゃね?」などと予想して書き込み始める

騒動はクラス内に収まらず、アナウンサーになっていたクラスで一番モテてたやつに至っては告白イベントの本命としてまとめサイトに書かれ全世界に発信される。

アナウンサーは同窓会ごとスルーするつもりだったのに無視するわけにもいかなくなり、学校に忍び込んでタイムカプセルを処分しようとしたが見つからず途方に暮れる。

仕方ないからアナウンサーは腹を括って告白主と対峙することを決意。
「あなたの気持ちは受け取った。だけどこんな事するやつは無理」と返事をすることにした。

一方告白主は教師になり、たまたまもうすぐ同窓会という時期に母校に赴任してきて、サプライズを思いつく。
ラブレターと「びっくりした?ドッキリだよ」と書いた紙を入れ替えて、当日は同窓会になんの関係もない学校職員として同席。1年後に改めてラブレターを送りつけてインパクト大にする。というもの。

当日は告白主の思惑通りに「ドッキリだよ」の手紙が読まれほくそ笑んでいたら、クラスメイトの1人に正体を気づかれた。

動揺して他人の振りをしたけど告白イベントが始まる流れになってしまい、告白主は土壇場でアナウンサーから手紙を取り上げて八つ裂き。「は?あなた達なんて知りませんけど?人違いですよ」と宣い学校からクラスメイト達を追い出す。

本当の手紙は実は「皆大好きだよ😘ずっと皆のこと思ってるね💕」というふうに特定の誰か宛ではなく皆が対象。最後の最後で勇気が出なくて「もう!私の馬鹿!」となる。ラブレターは破っちゃったしもう望みは叶わないだろうから、青春よろしく「バカヤロー」と空に向かって叫んでFin。



うーん、
うっぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ