
セントくん、この頃お母さん忙しくて、セントくんはしょちゅうホテルに行っていたから、急にいなくなってもそんなにピンと来なかった。
でも、ジワジワと来てるよ……さびしいよ。
ルッくんがいなくなったときは、セントくんが大変な下痢になって、何日もリビングでいっしょに寝たよね。
ルッくんのことを思って泣いていられなかった。
そうそう、だからね助かったし、だいたいお世話しないといけない子がいたら悲しみって大分癒やされる。
誰かお世話する子が来たら、きっとさびしさはまた少し違うだろうね。
だけどね、君たちが最後の子だとお母さんは決めているから
このさみしさには耐えないといけない。
お母さん、1月から田舎を15往復ぐらいしてるけど、
高速バスではずっと曲を聴いてる。
聴く曲がだんだん変わっていくのが、気持ちを反映しているなと思っておもしろいよ。
5月になってから、古いけど馬場俊英の「スタートライン」がなんだか気になってよく聴いてるよね。
これって、もしかしたらセントくんの伝言?
人生何回でもやり直せるし、その気になれば見えないスタートラインは今ここにもあるってね。
この曲は、今から10年ちょっと前に、お母さんの仕事がなぜか急速に悪くなって
ほんとに苦しかった時期に聴いたんだけど、だからといって今、これを聴いてもその重苦しさが蘇るわけじゃない。
それより、やっぱりセントくんの伝言のような気がする。

と、しんみりしていると……
せ:そうです。そうですよ。僕の伝言。母さん頑張れ!!
る:ちぇ、かっこつけやがって。
せ:ルッくんだって、すごいことやってくれたじゃないですか。大体僕の下痢があんなにひどかったのは作戦だと言ったでしょ?
る:ああ…まあ…ね。
せ:ほんとにあのときは散々だったんですからね。僕も母さんもあっという間に時間が過ぎました。あんな強烈な「悲しませない作戦」はルッくんでなければできません。人の迷惑も考えず。
る:あっセント怒ってる。
せ:おこです。激おこ!…でも、もういいですけどね。
る:ちょっとやり過ぎた…な。
せ:はい、です。
母さん、人生はやりたいことをやったもの勝ち、いつもそう思っていましたね。
そしてテオちゃん、クリスくん、イブちゃん、そしてルッくんと僕と一緒に24年間歩いて来たんですよね。
僕らの前に10年間山をやっていたのも、やりたいことをやってきたんですよね。
お仕事だってやりたいことを30年もやっています。
だから、またやりたいことをやってください。後悔しないこと。
それは今も母さんが一番よく分かっていることです。
スタートラインがここにあるんですよ。頑張って!!
る:…ううっ泣ける。
せ:うそ!ルッくん泣くの?
る:うそ。