泰山の山仲間達★ブログ版

周南山の会別館です。
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周南山の会アーカイブス<わが青春の文芸篇>

2012-01-31 15:15:27 | 短歌


我が青春の「文芸狂想曲」。18-19歳。
某地方大学での青春時代,ベトナム戦争反対に端を発した学生運動が盛んなりし頃,只管デカダンスとダンデズムに浸りきっていた当時の作品を書棚の奥から見つけ出して,久し振りに覗いてみた。創刊号で終刊号でもあるこの作品(つまり一回きりの発行である)に我が青春が凝縮している。多感なりしも,才能の限界を早々に悟って挫折した若き田舎侍の生き様を呵ってやって下さい。

「道化を忘れた道化師」

夢にみるもろもろのものは果敢なくに
なおその夢を今宵見るやも

この俺もはや十八の盛夏を迎えたよ
まづ古里の蝉の啼く声

青白く,ひょろひょろでふらふらおまけにどもりで背むし
いいことないづくめの男曲芸のひとつはできる

何事も人生勉強と洒落ようか
PACHINKO・DANCE・酒・煙草――それに女

人力車に出会った―その時―
その芸者の厚化粧の中に素顔さえ見えなかった

薄明に浮かび上がった百重の塔の先に
月陰が並んだ西京の面影

静けさの中に葉っぱの音がさらさらさら・・・・
気に障るんだこの心にも秋の真夜中

五重の塔を仰いでいると不図芸者が一人うつむいている
これこそ美だ―ああ時の流れも分からない

ピタピタと足音だけがやって来て(この室には俺一人だ)
立ち止まりそうでそうでなくそのまま通り過ぎてゆく

詩うこともあったんだけど再ここに来て
松風を聴きながら寝転んで煙草が美味い

冗談を冗談と解しえぬ秋なりや
夜中につと起きて町を彷徨う

皮肉にも密会の場所と果てしかな
かのザビエルの聖堂

街を歩いていると人の目が気になって仕方がない
そんなことにふと気が付いて苦笑する者なのだ

憶うことをやる友が羨ましい
何も出来ない軽業師のふがいなさよ

何かのはずみに学生とは楽な身分だなと父が云った時
眼をそらしてする作り笑いかな

ああ年の瀬だこの世にわんさと人がいる
わざと身すぼらしい野良着で歩く隠し金をもった百姓

書くことを怠って今はもどかしい
つとめて,つとめて夜更かしをするんだ

夜の窓ガラスに映る自分の顔を見て
百面相をしてみる
もどかしいってことを承知してながら

深夜―そう二時頃
見知らぬ男が来て
地獄への招待への招待状を置いていった

冬の夢の中に忍んでくるのは
怖いツメをとがらせた
悪魔の手下・手下

輪タクから降りた
若い芸者が
夜空を見上げて悲しそうな顔をするのさ
誰も居ないのに

とっぴなことを
やりたいくせに
どうして?
ピエロになりきれないのか

マネキンちゃん
あなたはどうしていつまでもそこにじっとしているの
ウインドウを破って
僕の側においでよ

鏡に存在するのぼくは
ぼくと同じように
人生しているのでしょうか
どうして人は
言い訳をするのでしょうか
言い訳は
逃避でしかない

今ぼくに出来ることといったら
ただ
うつむいて
深いため息をつくだけ

ぼくの人生
真昼に輝くことをしない
電燈なのです
夜になれば華麗になるでしょうが

案山子が
肩をそびやかしながら囁く
“おまえは一本足で立てるか”って

あなたを前にして
目をつむってみても
接吻ひとつかえってこない
氷のはった川面の土手の夢想

食堂のおばさんたちに
冗談なんぞいうことも
もうそろそろ
飽きてもいい頃だ

このしょぼふる雨の中に
浮かんでいるのは
ぼくの陰ばかりじゃない

この万年筆は
確かにここにあります―だけど―
このぼくに
気づいてくれる人は?

この寒いのに
公園で唇を重ねる人もいます
金もないのに―大学へ来て―
遊びまわっている人もいます

山のあなたの空遠く
幸福がすんでいるというのですが
ぼくにはまだ
求めに行く勇気さえありません

バンカラが
懐かしんですね
―昔は
よっぽどよかったんですね

道化師(ピエロ)が道化師でなくなるときに
もう一度
舞台を与えても
おどけるしか術を知らないじゃないの

とんだりはねたりしても
どうしようもないってことは
誰だって恐らく
うすうす感付いているのじゃないの

あなたと踊る
暗闇に踊る
たがいの心を読まれまいと
激しく踊る

「捨てられた絵日記」

かの野球場のそばの
細長い池を眺めながら
たがいの愛を確かめあった芸者

一夜かぎりの
愛の信頼を
胸に抱きつつ
去ってしまわなければならない
宿命を背にした
若き人妻

うすぐらい室内灯(ルームランプ)が
邪魔になるほど
闇を欲したあなたが
別れのベーゼを
私の唇に与えて
去って行った道

遠い遠い異国の空の下で
いちはてるとも知らない
恐怖におびえながら
ささやかな幸福を夢み
流れ弾を胸に受けて
死者として歩き始めた兵隊

「愛の主題」

街の人が美しいとき
陽が沈み
車の列も長くなりつつ

癖のように煙草をほする
彼の指の黄色くなるのが
ひどく気になる

彼の部屋の私の仕事は
灰皿に積まれた殻を
捨てに行くこと

たちのぼる煙の跡を
目で追いて
彼の横顔をたのもしく観る

旅姿の彼の写真を弄ぶ
愛の仕草に
飽きた頃には

薄いのに髭を貯めたがる
その顔は愛しからずや
くちづけをする

背信という
醜い言葉を識ってから
つとめて友を親しく憶う

金はなくて
一人下宿のわびずまい
新しき道を悟りしわれは

だんだんと
降りくる雨はねちねちと
犯しはじむるこのこころをば

ああこれが
最後の煙草と思えば愛し
根もとまで吸う

金はなくて
することもなければこうして
つまらぬ詩もかきつけてみる

今日もまた
仕送りがなければ万年床は
風もとおらぬ6月の夜

ひさびさにギターなどひけば
その音も
空しき腹によくこだまする


「夜が来たら朝なのさ」

とにかく
成様にしかならないのさ

ええじゃないか
どう転ぼうと
「俺の知ったことじゃない」
いくら足掻いてみても
道を変えることは出来っこないんだ

ええじゃないか

その橋を渡れよ
落ちたときはそのときさ
なにも泣くことはないんだ

この世のことは定まっているのさ

夜が来たら朝なのさ
お天道様は―いつも―
空に輝いているのさ
暗闇を怖がることなんかない
そのうちに
一条の光明も発見かるんだ

「俺の知ったことじゃない」
それでええじゃないか

とにかく成様にしかならないのさ