都は、もう嫌になってしまっていた。無駄に大きくなった身体横たえ、
うつらうつらしながら、終わりの来るのを待っていた。
都の老舗カフェでは、眠れなくてイライラしているねこがくじら相手に
やつあたりしている。
「いったい、どれが、夢なんだろう。僕が、いつ眠ったと言うんだい」
くじらはなにも言わず、ただ曖昧にうなずいている。
ねこは気持ちを落ち着かせるために、ピアノの上ですねるように丸くな
っている。
「ひつじくんなにか、弾いてお呉れ」
ひつじは、2分半思案してから、あの曲を27回繰り返して弾いた。
そう、あなたが、ここに相応しいと思う曲を。
最後に、こう、弾き語った。
「赤かったね、君の嫌いなトマトより赤かった。
それに、嘘をついた血よりみどりだったさ。
君のせいではないよ。
きみのせいではないんだよ。
伝わるべきものは、結局、僕らの意思に依るしかないんだもの」
ねこは、眠らない。
くじらが、ビールを勧める。ありがとう、と言って首を振る。
ねこには、苦くて呑めないし、呑んだところでくじらの気持ちを汲むこ
とはできないから。悲しいことだけれども。
ねこは、ナア、と鳴いた。
このなきごえが、今のきもちに一番相応しかった。確かに。ミルクは足
りていなかった。
(続)
うつらうつらしながら、終わりの来るのを待っていた。
都の老舗カフェでは、眠れなくてイライラしているねこがくじら相手に
やつあたりしている。
「いったい、どれが、夢なんだろう。僕が、いつ眠ったと言うんだい」
くじらはなにも言わず、ただ曖昧にうなずいている。
ねこは気持ちを落ち着かせるために、ピアノの上ですねるように丸くな
っている。
「ひつじくんなにか、弾いてお呉れ」
ひつじは、2分半思案してから、あの曲を27回繰り返して弾いた。
そう、あなたが、ここに相応しいと思う曲を。
最後に、こう、弾き語った。
「赤かったね、君の嫌いなトマトより赤かった。
それに、嘘をついた血よりみどりだったさ。
君のせいではないよ。
きみのせいではないんだよ。
伝わるべきものは、結局、僕らの意思に依るしかないんだもの」
ねこは、眠らない。
くじらが、ビールを勧める。ありがとう、と言って首を振る。
ねこには、苦くて呑めないし、呑んだところでくじらの気持ちを汲むこ
とはできないから。悲しいことだけれども。
ねこは、ナア、と鳴いた。
このなきごえが、今のきもちに一番相応しかった。確かに。ミルクは足
りていなかった。
(続)