「蟹工船」日本丸から、21世紀の小林多喜二への手紙。

小林多喜二を通じて、現代の反貧困と反戦の表象を考えるブログ。命日の2月20日前後には、秋田、小樽、中野、大阪などで集う。

小林多喜二が生まれた1903年生まれで、山口県出身の女性作家3人の展覧会

2010-11-14 05:33:00 | 多喜二と同時代を生きた人々

山口県立山口図書館( 〒753-0083 山口市後河原150-1 TEL: 083-924-2111 )で、小林多喜二が生まれた1903年生まれで、山口県出身の女性作家3人の展覧会が開催されている。

この三人は、それぞれが苦難の道を歩みながらも、童謡詩人として、プロレタリア作家として、女人芸術作家として、後世に読みつがれるべき作品を残した。

なかでも中本たか子は、注目すべき作家だ。

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企画展「金子みすゞ・林芙美子・中本たか子 ~同年に生まれた山口の女性文学者たち~」

明治36(1903)年に、偶然にも、山口ゆかりの文学者として後に活躍する3人の女性が誕生しました。日本の文学史に大きな足跡を残すことになる金子みすゞ、林芙美子、中本たか子です。

金子みすゞは、長門市仙崎で生まれ、「若き童謡詩人の中の巨星」と称賛されるほどの詩人でしたが、若くして亡くなり、歴史に埋もれていきました。しかし半世紀を経て、矢崎節夫氏らによって、そのみずみずしい感性に満ちた作品に光が当てられ、再び脚光を浴びています。

林芙美子は、下関市田中町(一説には北九州市門司区)で生まれ、職を転々としながら文筆活動をしていましたが、『放浪記』で一躍流行作家となりました。その波乱に満ちた一生は、現在も舞台や小説のモデルに取り上げられ、多くの人々に感銘を与えています。

中本たか子は、下関市角島で生まれ、小学校教員を経て上京、社会活動に参加するようになります。プロレタリア作家として頭角を現しますが、2度の投獄に見舞われるなど、苦難の人生を歩みます。晩年は、自身の青春時代や平和活動についての著作を発表しながら、87歳で亡くなるまで、精力的に活動しました。

今回の展示では、それぞれの人生を生き抜いた彼女たちの足跡をたどります。

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  • 期間:平成22年7月31日(土曜日)~12月26日(日曜日)
  • 場所:山口県立山口図書館 2階 ふるさと山口文学ギャラリー
  • 主催:やまぐち文学回廊構想推進協議会
  • 共催:山口県立山口図書館

展示資料目録

金子みすゞ(1903-1930)

『琅かん集 上・下』
金子 みすゞ 編,JULA出版局,2005.1,Y911.5 N5
みすゞが、当時の雑誌や詩集などから気に入った作品を手帳に書き写していたものをもとに出版された童謡集。106人の作者による199編が収録されている。
『金子みすゞ全集 1 美しい町』
金子 みすゞ 編,JULA出版局,1984.2,Y909 L4
『金子みすゞ全集 2 空のかあさま』
金子 みすゞ 編,JULA出版局,1984.2,Y909 L4
『金子みすゞ全集 3 さみしい王女』
金子 みすゞ 編,JULA出版局,1984.2,Y909 L4
残された3冊の手帳をもとに出版された童謡集。23歳頃に『美しい町』と『空のかあさま』は完成していた。
『南京玉』
金子 みすゞ 著,JULA出版局,2003.4,Y911.5 N3
子育て中に書き残した娘ふさえの言葉の記録。
『繭と墓』
金子 みすゞ 著,大空社,2003.12,Y911.5 N3
みすゞが投稿していた雑誌『童話』の当時の投稿仲間によって編まれた、『童話』掲載のみすゞの作品選集。復刻版。原本の出版は昭和45(1970)年。
『童謡詩人金子みすゞの生涯』
矢崎 節夫 著,JULA出版局,1993.2,Y911.5 M3
歴史に埋もれていた「金子みすゞ」を甦らせるまでの記録。

林芙美子(1903-1951)

『蒼馬を見たり』
林 芙美子 著,日本図書センター,2002.11,Y911.5 N2
処女出版の詩集。復刻版。原本の出版は昭和4(1929)年。
『放浪記』
林 芙美子 著,改造社,1931.9,Y H48
代表作。正・続合わせて60万部の大ベストセラーとなる。20歳からつけ始めた日記「歌日記」がもとになっている。雑誌『女人芸術』に連載後、改造社から出版。のちに新潮社から完全版が発行された。
『風琴と魚の町』
林 芙美子 著,新潮社,1949.8,H48
大人向けの童話。はじめての短編集。
『一人の生涯』
林 芙美子 著,創元社,1940.1,Y H48
芙美子の自伝的作品。雑誌『婦人之友』連載。
『隨筆』
林 芙美子 著,秩父書房,1941.1,H48
『うず潮』
林 芙美子 著,角川書店,1962.6,Y H48
昭和22年8月から11月にかけて毎日新聞に連載された初めての新聞連載小説。
『人生の河』
林 芙美子 著,毎日新聞社,1948.1,Y H48
『晩菊』
林 芙美子 著,河出書房,1951,H48
『浮雲』とともに林文学の頂点をなす作品。第3回女流文学者賞受賞。
『浮雲』
林 芙美子 著,六興出版社,1951.5,H48
『漣波』
林 芙美子 著,中央公論社,1951.7,H48
死去により未完となった作品。
『めし 附・春浅譜』
林 芙美子 著,朝日新聞社,1951.10,Y H48
「めし」は朝日新聞に97回まで連載、絶筆となる。「春浅譜」は「放浪記」の次に発表された作品。

中本たか子(1903-1991)

『朝の無礼(現代暴露文学選集)』
中本 たか子 著,天人社,1930.6,Y N36
プロレタリア文学作家としての初期の作品集。
『闘ひ(新鋭文学叢書)』
中本 たか子 著,改造社,1930.7,Y N36
自身の東洋モスリン工場での非合法活動の体験をもとにした作品。
『耐火煉瓦』
中本 たか子 著,竹村書房,1938,Y N36
川崎のレンガ工場で臨時女工として働いた体験を小説化した作品。
『白衣作業』
中本 たか子 著,六藝社,1938.12,Y N36
3年間の獄中生活をもとに刑務所内の労働を描いた作品。第6回の芥川賞候補となる。
『南部鉄瓶工』
中本 たか子 著,新潮社,1938,Y N36
弱小の家内工業の親方たちが集まって、それまで取り仕切っていた資本家に対抗、組合を結成し成功するまでを描いた作品。
『新潮』第35年第2号
新潮社,1938.2,Y N36
「南部鉄瓶工」初掲載誌。
『若き愛の日』
中本 たか子 著,教材社,1939.9,Y N36
『第一歩』
中本 たか子 著,三島源治郎,1941.7,Y N36
『紫式部』
中本 たか子 著,教材社,1942.7,N36
『新らしき情熱』
中本 たか子 著,金鈴社,1943.11,Y N36
『野田一家のパン籠』
中本 たか子 著,東方社,1955.1,Y N36
『滑走路』
中本 たか子 著,宝文館,1958.9,Y N36
砂川基地拡張反対事件をテーマにした長編小説。続編の『不死鳥』とともに戦後の代表作とされる。ソ連や中国でも翻訳されている。
『不死鳥』
中本 たか子 著,彌生書房,1960.1,Y N36
『わが生は苦悩に灼かれて』
中本 たか子 著,白石書店,1973,Y915 K6
社会運動組織での活動から獄中までの青春の回想録。
『広島へ…そしてヒロシマへ』
中本 たか子 著,白石書店,1986.7,Y915 L6
平和運動の回想録。
『とべ・千羽鶴』
中本 たか子 著,青磁社,1988.8,Y N36
死去2年前に出版された原爆文学。短編小説集。

同時代を生きた山口県ゆかりの作家

『安宅家の人々』
吉屋 信子 [著],毎日新聞社,1952.3,Y94
【吉屋 信子(1896~1973)】少女小説『花物語』や『徳川の夫人たち』などの時代小説で多く の読者を持つ人気作家。両親とも萩の出身で、『安宅家の人々』にも萩の描写が出てくる。
『おはん』
宇野 千代 著,中央公論社,1957.6,Y U77
【宇野 千代(1897~1996)】岩国市出身の作家。昭和32(1957)年、名作『おはん』で野間文芸賞、翌年女流文学賞受賞。各界著名人との交流があり、その生き方も注目された。晩年には『生きていく私』が大ベストセラーとなる。岩国を愛し、「故郷こそ、私自身のすべてなのである」と語っている。
『途上』
嘉村 礒多 [著],江川書房,1932
【嘉村 礒多(1897~1933)】山口市出身の作家。『業苦』や『崖の下』など、自己の内面世界 を描いた私小説を著し、「私小説の極北」と称された。
『吉田松陰』
河上 徹太郎 著,文芸春秋,1968.12 Y289 Y86 J8
【河上 徹太郎(1902~1980)】文芸評論家・音楽評論家。岩国藩の武士の名家に生まれる。昭和を代表する文芸評論家。ピアノや狩猟など多彩な趣を持ち、それらについても多数の文章を残している。中原中也と親交があり、『わが中原中也』などの著作がある。代表作に『私の詩と真実』、『日本のアウトサイダー』。1968年『吉田松陰』により野間文芸賞を受賞。
『幼き者の旗・他』
氏原 大作 著,条例出版,1978,Y U57
【氏原 大作(1905~1956)】山口市阿東出身。昭和13年、主婦の友社の懸賞小説で『幼き者の旗』が一等に入選し、一躍有名になった。戦後は故郷を舞台に、児童文学や家庭小説、放送劇など多くの作品を残した。
『在りし日の歌』
中原 中也 著,創元社,1938
【中原 中也(1907~1937)】山口市出身の詩人。『在りし日の歌』は没後に刊行された詩集。生前に刊行された唯一の詩集に『山羊の歌』がある。ランボーほかフランス詩の翻訳も手がけた。近代詩人として文学史上に名を刻み、幅広い年代層の支持を得ている。
『山塔』
斯波 四郎 著,文芸春秋新社,1959.9,Y SH15
【斯波 四郎(1910~1989)】山口市阿東出身の作家。新聞記者等を経て、戦後再び小説を書き 始め、多くの名作を生み出した。『山塔』で山口県初の芥川賞作家となる。他に『檸檬・ブラックの死』など。

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