多喜二の歩んだ道/作品に一目ぼれした/「蟹工船」のイタリア語版を出したファリエロ・サリスさん
小林多喜二は、学生時代、日本の文学史でその存在を知りました。西洋で一般的に知られている日本文学とは異なる味わいでした。
社会の構造を見抜いて世界を覆うベールをはがす―そんな作家の一人だと、一目ぼれをしたのです。生涯を知る中で、虐殺されたという事実に衝撃を受けました。
「蟹工船」には、「歴史記録文書」としての価値があると思います。暗い時代の残酷な現実をあからさまに伝えようとしています。見ないふりをして通り過ごすことはできない、ぜひイタリア人に読んでほしい、と思いました。
イタリア語版を出したのは、2006年。出版社は中身の厳しさにためらっていましたが、原文通りでこそ意味がある、と主張しました。その結果、翻訳料はわずかの契約になりましたが、全く後悔していません。
「党生活者」も好きですし、多喜二の作品をもっと翻訳できたらと願っています。
(98年から日本在住、語学学校講師)
(2013年02月17日,「赤旗」)
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