出雲弁講座も記念すべき10回目となりました。第10回目なので、それにふさわしい晴れやかな題材にしようかと思ったのですが、前回からの続きが残っているので、それをやっていきたいと思います。
前回の冒頭でお伝えしたのは『いけーしこ』『いけんすこ』『いけずご』でした。そして、いけずごは解説しましたので、残り二つ合わせて行ってみましょう。
この二つの単語はそれぞれ二つのブロックでわけることができます。”いけー”と”しこ”、”いけん”と”すこ”です。これらはそれぞれが対をなしています。
”いけー”は「いける」そして”いけん”は「いけない」という意味になります。この「いける」「いけない」は、「行ける」「行けない」ではなく、「可能」「不可能」や「順調」「順調でない」のニュアンスで考えてもらった方が良いと思います。真反対の言葉ですが、語尾だけが微妙に違うので、これだけでも出雲弁ネイティブスピーカーで無い人からしたら聞きとるのは難しいかもしれません。
”しこ”と”すこ”は両方とも、今後どうなるかの推察的な意見であることを表します。「~~になるだろう」というような意味ですね。ただしこの推察をしたのが、自分発信か第三者発信かで使う言葉が変わります。詳しく解説していきましょう。しこの場合は「~~になるだろうと(自分が)思う」のに対し、すこの場合は「~~になるだろうと(他の人が言っていたので)思う」となります。
したがって、A『〇〇さんとこの田んぼ、色が変わっちょーないが、アレは大丈夫だーか?』(〇〇さんとこの田んぼが、良くない色をしているが、アレは大丈夫なのだろうか?)に対して、
B「どーもあれは、いけーしこだわ」(どうやらあれは、いけるみたいだ(と、自分は考える))
C「いんや、どーもあれは、いけんすこだねかや」(いやいや、どうやらあれは、いけないみたいだよ(そう言っている人がいたよ))
という会話になります。微妙なニュアンスの違いですが、自分の意見なのか第三者の意見をここで用いたのかを表す重要な言葉となります。
ちなみに、お互いが逆のペアになることもあります。
いけーしこ
いけんしこ
いけーすこ
いけんすこ
とまぁこんな感じに複雑になることもあります。しかも以前の記事でお伝えしたように、出雲弁で”し”は、ほぼほぼ”す”に聞こえます。より一層聞き取りづらいですね(笑)
ただ前後の会話であったりTPO等の言葉以外の状況も鑑みて会話はしますので、100%聞き分けながら話している というわけではありません。しかしながら、書いていてコレは難しいな と珍しく思いました。