時のつれづれ(北多摩の爺さん)

下り坂を歩き始めたら
上り坂では見えなかったものが見えてきた。
焦らず、慌てず、少し我儘に人生は後半戦が面白い。

脱ハンコの先にあるもの

2020年10月11日 | 時のつれづれ・神無月

多摩爺の「時のつれづれ(神無月の9)」
脱ハンコの先にあるもの

脱ハンコ・・・ この問題は、数年前からあったような気がするが、
事の発端は、コロナ禍おけるテレワークの推進にあたって、
ハンコを押すためだけに、出社を余儀なくされている社員がいたことが話題になり、
急に注目を浴びることになった。

また、コロナ禍において、もはや常識となったのが、
宅配業界における受領印をもらわない置き配も、ある意味で・・・ 一つの脱ハンコだろう。
盗難事件もあるにはあったが、当初心配していた紛失等のトラブルは聞いたことがなく、
いまじゃそれが、当たり前のど真ん中になってるんだから・・・ まさに、コロンブスの卵だった。

私が勤めていた会社は、情報系だったことから、既に17~8年ぐらい前には、
社内の稟議書や、出勤簿、残業代や旅費の精算などのシステム化が進み、
社内で私印を押すことはなくなっていて、
残っていたのは、会社と会社が結ぶ契約書に押印する公印のみだったので、
大変申し訳ないが、そんなに問題になることなんだという程度の認識で、
恥ずかしながら・・・ 井の中の蛙だった。

とはいえ・・・ 民間の脱ハンコは、社内の稟議や精算と、社外との契約を切り分ければ、
進んでいるように思うが、
申請から始まり、受付、確認、処理、稟議、
決裁、保存、監査などなど、
証憑が人手を介して進む、お役所の仕事の大半は、紙文化が基調だから、
どうしても、ハンコは欠かせないらしい。

そこに持って来て、抜本的な見直しについて、総理の命を受けた行政改革担当大臣が、
9割以上の行政手続きでハンコは廃止できると、ぶち上げたことに続き、
法務大臣が、婚姻届や離婚届の押印まで廃止を検討すると云ったもんだから、
与党のオジサンたちが騒ぎ出したが、
当の行政改革担当大臣は、意に介すことなく・・・ まっしぐらだから、妙に頼もしい。

諸外国を見渡せば・・・ ハンコは必要なく、本人確認はサインで足りている。
普通の生活において、また、職場において、ハンコが必要となるのは・・・ なんだ?

確か・・・ 小学校を卒業する時に、
私の住んでた町だけかもしれないが、印鑑を記念にいただいた記憶があるが、
高校を卒業して就職した会社で、出勤簿に毎日押印した他には、
当時ちょっと気になってた、労働金庫のオネエチャンの甘い言葉に誘われて通帳を作っただけで、
最初のボーナスを預けたのに・・・ お茶を1回付き合ってくれただけで、
それっきりだから・・・ ちょっと情けない。

その後、その印鑑は会社の机の引き出しに、ずっと入れっぱなしにしていたから、
婚姻届けに押したハンコは、おそらく実家にあったものだと思う。
あとは・・・ 転勤のたびに、その印鑑を使ってたが、銀行の口座を作り変えたぐらい、
思い起こせば、出勤簿と休暇の申請以外に使ったのは、片手の数ぐらいで必要性は限定的だった。

20年前に、人生で一番大きな買い物(マンション)をしたときは、
生まれて初めて、実印なるものを作ったが、それすら、いまじゃ引き出しの中で眠っている。

会社では、役職に就くにつれ、稟議書にハンコを押す機会は増えたが、
押印と同時に日付が必要だったことから、ゴム製の回転日付印を使っていたが、
それも直ぐにサインに変わり、17~8年前からは電子決裁だし、電子出勤簿だから、
引き出しの中のハンコが、活躍する場はなくなっていた。

ところが、ところが・・・ 還暦を過ぎて、年金暮らしの準備に入ると、
公的機関を含む、様々な機関へ何かと提出物が増え、
その1枚1枚にハンコが必要になってくるから面白い。
改めて思うに・・・ 公的機関の仕事には、ハンコの役割が大きいことに気づかされる。

与党の幹事長は、ハンコ文化を守ろうとする議員連盟と会談して、
「ちゃんとした議論になるよう、しっかり反抗(ハンコ)しろ。」なんて、
駄洒落ともとれるようなコメントを発したが、脱ハンコは、そんな目先のことだけではないだろう。

この問題の本質は、いわゆるデジタル化の1丁目1番地で、
マイナンバーを基軸として、行政システムを全国的に統一することであって、
脱ハンコは、行政にとってはシステム化の最大の壁になる、
脱紙(ペーパーレス)へ取り組む入り口に過ぎず、
総理が進めようとする、デジタル化の片棒を担ぐのが、脱ハンコだと言っても過言ではなかろう。

婚姻届や離婚届にハンコが不要になるのも、一つの時代の流れかもしれないが、
その先にある、住民票システムと戸籍システムが統合されれば、
郵送などによるタイムロスがなくなるばかりか、
引っ越しする際にも、現住所で届け出を出せば、新住所で届け出する必要もなくなるだろうし、
場合によっては・・・ 郵便局への届け出が、略される可能性だってあるかもしれない。

それを推進するためには、ネット申請の促進が必須で、結果としてペーパーレスが進み、
併せて脱ハンコが進むというのが・・・ 総理が描くストーリーじゃなかろうか?

実印制度だって、マイナンバーの活用次第では、不要となる可能性もあって、
いずれマイナンバーカードで本人確認ができれば、
サインだけで契約できる時代が、いずれはやってくるだろう。

脱ハンコは、この国のデジタル化の1丁目だと捉えれば・・・ 総理の考えてることが分かり易い。
脱紙となるペーパーレスが2丁目で、統一のキーとなるマイナンバーの本格運用が3丁目となり、
最期が・・・ 各行政が独自で管理している、行政システムの統合や連携になるだろう。

1丁目と2丁目は行政サイドの意識の問題、3丁目は国民サイドの意識の問題、
最後はお金の問題だから、難しいのは3丁目以降だが、動き出したことは歓迎せねばならないし、
そういった生活に、馴染まねばならない日が・・・ やがて、やって来るのだろう。

目に見えて、ワクワクするようなことじゃないが、
まだ見ぬ曾孫の時代には「ハンコって、なんなの?」みたいに・・・ 
なるんじゃなかろうか?

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