今話題になっているTPP参加問題は産業界(1次産業の農林水産業以外)と農業(水産業、林業を含め)の対立の構図となっている。産業界は、“農業のために日本の産業の発展の機会を失ってもいいのか”と非難し、農業界は“農業を犠牲にするのか”と非難の応酬である。関係閣僚までが同様な発言をしている。これで国の将来は見えてくるのだろうか。まして農業の未来はないのではないか。
本来、農村が健全に維持され、食料生産がしっかりしているからこそ、都市は食べ物を心配することなく安心して生活でき、産業活動が行われ、都市が発展できる。逆に、都市が成り立ち、商工業が発展することで消費が生まれ、科学技術が発展することで、その恩恵を受け農村や農業も豊かになる。このような相互依存関係(共生関係)があるはずだ。
しかし、産業界や都市住民は、“効率の悪い日本農業は縮小して、安い海外の農産物を買えばいい”、“農家を補助金漬けにして甘やかしている”とか“農家は農薬をかけない安全なものを食べているが、消費者には農薬漬けの農産物を食べさせている”などと非難し、農業界は“農産物の見てくれを気にし農家の苦労をわかってくれない”“私たちが苦労して作っても、海外の安い農産物を買ってしまい、私たちのものを買ってくれない”等の非難の応酬をしあっている。
相互依存関係にあることを再認識し、新しい理念と仕組みをつくることが必要な時期に来ているといわれながら、いまだに、日本の都市と農村、産業と農業は対立する構図として国民意識に根強く植え付けられている。
TPP参加問題を機会に国民的議論を行い、新しい関係を早急に構築してほしい。
そのためには、第1は、都市住民(消費者)は、“私たちが安心安全なおいしい農産物を安い価格で毎日食べられるのも農家のお蔭だ”と感謝し、身近で生産された農産物を買い支えるようになる。生産者は、“都市住民が応援してくれているのだから、安心安全な農産物を生産し提供しなければならない”と理解し生産に励む“。といった相互依存の理念を国民が共有するようになること。
第2は、産業の発展で生まれた富や技術力で、2・3次産業に比べ、気候や土地等の制約で効率化の遅れる農業をしっかりと支援すること。だと思う。