PIZZICATO FIVE / きみみたいにきれいな女の子
2020年後半の世界も晩秋事変の局面に入りそうな気配である。そうした混乱の様相の中で気分転換にでもPIZZCATO FIVEの『きみみたいにきれいな女の子』を聴くというのは日常の生活で途切れなく起こる事象ももはやリアリティとは程遠く、いわば伝説のユートピアの域にどっぷりと浸かりこんでいるような自家中毒症状の極みでもある。1998年の名盤『プレイボーイ プレイガール』にアルバム盤の同曲があって、私はどちらも好きだけど、どちらかというとシングル盤の『きみみたいにきれいな女の子』の方が好きで上の動画がまさにそれ。アコースティックギターが奏でるポップで小気味良いリズムと、そしてやはり野宮真貴の唯一無二の声の艶っぽさ。たとえば曲後半に流れる『ドゥルラッ・ター、ドゥルラッ・ター、ドゥルラッ、ドゥルラッ・ター、ドゥルラッ・ター…』を聴いてみてはどうだろうか?あまりにも穏やかで、優しい。かつてのソフトロック、フュージョン、ダンスの時代と言われた渋谷系だと括るにはおさまりのつかない華麗でメロディアスな響き。いや待て、こうした曲調全体に、リアルからの逃避的なるものを醸し出した雰囲気もやはり渋谷系になるのだろうか。『スウィート・ソウル・レビュー』には痺れるノリがあり、『東京は夜の7時』には煌びやかな響きがある。でもしんみりと浸ることができる『きみみたいにきれいな女の子』が結局は美しい。