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徹底解説、マイナンバー制度は「便利」になるのか ②

   

〇 マイナ保険証一本化で電子カルテ情報を持ち歩く時代へ、課題はベンダーのリソース逼迫。

マイナンバーカードと健康保険証を一体化させた「マイナ保険証」。政府は相次いでマイナ保険証への一本化に向けた施策を打ち出してきた。2023年3月7日、2024年秋の健康保険証廃止に向けた関連法案を閣議決定した。さらに2023年4月1日からは医療機関に対するマイナ保険証への対応が原則義務化された。マイナ保険証活用で、患者にとって何が「便利」になるのだろうか。

期待がかかるのが、マイナポータルを活用して、電子カルテに記録された診療情報を患者が「持ち歩ける」ようになることである。これまで医療機関で医師による利用に限られていた。

現在マイナポータル経由で閲覧できる医療情報は、薬剤情報や特定健診情報などに限られている。厚生労働省が取り組む全国での電子カルテ情報の共有の仕組みが実現すると、病名やアレルギー情報などの電子カルテ情報も閲覧できるようになる。

電子カルテ情報を医療機関や患者がいつでも閲覧・共有。

2023年3月29日、厚生労働省の健康・医療・介護情報利活用検討会のワーキンググループは取りまとめを公表し、電子カルテ情報を医療機関や患者がどこでも閲覧・共有するためのシステムの概要を明らかにした。2023年度から開発に着手する。

閲覧と共有の対象となる電子カルテ情報は傷病名、アレルギー情報、感染症情報、薬剤禁忌情報、救急時に有用な検査情報と生活習慣病関連の検査情報、処方情報からなる「6情報」と、診療情報提供書、退院時サマリーの2文書からなる「文書情報」である。医療機関が患者を他の医療機関に紹介する際に医療機関同士で情報共有するほか、マイナポータル経由で患者が自身の情報を閲覧できるようになる。

まず、医師らが医療機関にある電子カルテから6情報と文書情報のそれぞれを、今後構築する「電子カルテ情報交換サービス(仮称)」に登録する。6情報については「オンライン資格確認等システム」と自動連携する。オンライン資格確認等システムとは、社会保険診療報酬支払基金(支払基金)が運用する、マイナ保険証の仕組みを支える基幹システムである。

患者を紹介する際には、紹介先と紹介元の医療機関同士で電子カルテ情報交換サービス(仮称)を介して、患者の文書情報をやり取りする。その際に、マイナ保険証を使い、患者は文書情報共有について確認し同意をする。また、紹介以外のケースでも診療の必要に応じて、患者の確認と同意のうえで、医療機関で患者の6情報を取得したり、患者自身がマイナポータル経由で6情報を取得したりできるようになる。

電子カルテ情報を医療機関や患者の間で共有するための仕組み
画1、電子カルテ情報を医療機関や患者の間で共有するための仕組み。

電子カルテ情報交換サービス(仮称)の新規開発とオンライン資格確認等システムの改修は、支払基金が2023年度に着手し2025年ごろまでに進める予定。「具体的なサービス開始時期などは2023年春ごろに政府の医療DX推進本部が策定する工程表で示す」(厚労省担当者)としている。

電子カルテベンダーの対応が遅れる可能性。

電子カルテ情報の共有を巡っては、これまでも「地域医療情報連携ネットワーク」として医療機関間での共有を進めてきた。ただ電子カルテベンダーが異なると仕様が異なり、データの共有が難しいという課題があった。また、地域ごとに分かれるネットワーク内の医療機関間での共有に限られ、全国の医療機関で共有できなかった。

そこで、全国の医療機関で電子カルテ情報を共有するために、インフラとして前述のオンライン資格確認等システムを活用することとなった。

オンライン資格確認等システムは、マイナ保険証を使って患者の保険資格を確認するためのインフラである。個人単位被保険者番号を用いて患者個人単位で情報を管理しているため、保険診療であれば患者の情報をここにひもづけて管理することができる。

マイナンバーカードを保険証として利用するための仕組み
画2、マイナンバーカードを保険証として利用するための仕組み。

全国での電子カルテ情報共有の実現までの大きな課題は、電子カルテベンダーの対応が遅れる可能性があることである。医療機関が電子カルテ情報交換サービス(仮称)を介して文書情報や電子カルテ情報をやり取りするためには、医療機関の既存の電子カルテの改修などが必要となる。

厚生労働省の検討会では、電子カルテ情報のデータ共有をするために、医療機関同士でデータ交換を行うための規格「HL7 FHIR」での仕様を定めたり、標準的なデータ項目の仕様などを策定したりしてきた。その上で厚労省はベンダーに標準準拠の電子カルテシステムの開発を促し、補助金を出して医療機関などでの導入を後押しする。

「HL7 FHIRの仕様はすでに公表しており、一部ベンダーでは開発を進めている」(厚労省担当者)とするが、一方で足元はベンダーのリソースが逼迫している。

その理由が、オンライン資格確認等システムを使ったマイナ保険証対応に、医療機関などが追われていることである。

医療機関でのマイナ保険証対応は2023年4月から義務となっているものの、ベンダーのリソース逼迫のためシステム導入が遅れ間に合わないケースが出てきた。そのため、厚労省はシステム整備が間に合わなかった施設を対象に、同年9月末まで経過措置を設ける事態となった。実際、2023年3月26日時点で運用開始した施設は全国の医療機関や薬局のうち60.0%である。

ベンダーはまず医療機関のマイナ保険証対応を進めた上で、さらに2023年1月から開始したもののシステム導入が遅れている電子処方箋への対応も進める必要がある。厚労省は2025年3月末までにおおむね全ての医療機関と薬局で電子処方箋の導入を目指している。その上で、今後進む電子カルテ情報の共有に向けた改修にも対応する必要があり、スケジュールやリソース管理が課題となりそうだ。


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