〇 正統進化した第13世代のインテル「Core」、性能は意外なほど向上。
強力なAMD Ryzen 7000シリーズの登場に対し、インテルは高性能で好評を博した第12世代Core(Alder Lake)をより強化した第13世代Core(Raptor Lake)の発売を開始した(図1)。
Θ 高性能な第12世代Coreを正統進化させた第13世代Core(Raptor Lake)。
図1、インテルは第12世代Coreを強化した第13世代Core(開発コード名:Raptor Lake)をリリースした。主な進化点は図の通り。Eコアの増加、L2キャッシュの増加などで性能を強化、電力効率も向上させている。
主なラインアップは図2の通り。現状は、オーバークロック(OC)に対応したKモデルのみとなるが、2023年初頭にはOC非対応モデルや下位モデルも登場する予定だ。
図2、第13世代Coreは現状、Core i9-13900K、Core i7-13700K、Core i5-13600Kに加え、それぞれ型番末尾に「F」が付くグラフィックス機能非搭載モデルの合計6モデルがラインアップされている。上位モデルほどコア数が多く、最大ターボブーストクロックも高くなる。
前世代との主な違いを図3にまとめた。性能重視のP(Performance)コアと高効率のE(Efficient)コアを搭載したハイブリッド・アーキテクチャーが採用されているのは前世代と同じだが、Pコアは改良され、Eコアの数は倍増、両コアとも前世代より最大ターボブーストクロックが向上している。性能に関する仕様としては、L2(2次)キャッシュ、L3(3次)キャッシュが増加している点や対応するDDR5メモリーのクロックが向上している点も注目ポイントだ。
Θ Eコアの数やL2キャッシュ量が増加、動作周波数も向上。
図3、表は第13世代のCore i9-13900Kと前世代のCore i9-12900Kのスペックを比較したもの。第13世代ではEコアの数が倍増。最大ターボブーストクロックもPコア、Eコアともに引き上げられている。そのほか、L2キャッシュ、L3キャッシュも増加。DDR5メモリーの対応クロックもDDR5-5600にアップした。
なお、第12世代CoreからPコアとEコアを効率良く使用できるよう支援する「スレッド・ディレクター」という機能が搭載されている。インテルによれば図4の通り、第13世代Coreではこのスレッド・ディレクターが改良されており、Windows 11(22H2以降)との組み合わせで、より効率良くPコアとEコアが使えるようになっているという。
Θ スレッド・ディレクターの改良でハイブリッド・コアをより有効活用可能に。
図4、インテルのCoreシリーズは、第12世代から性能重視のP(Performance)コアと高効率のE(Efficient)コアの2種類を搭載するハイブリッド・アーキテクチャーを採用。Windows 11がPコアとEコアに適切にスレッド処理を振り分けられるようにする「スレッド・ディレクター」という機能を搭載している。第13世代ではこのスレッド・ディレクター機能が改良されており、Pコア、Eコアともにより効率的に利用できるようになっている。
第13世代Coreはワットパフォーマンスが向上している点も大きな特徴だ(図5)。インテルは、前世代のCore i9-12900Kの最大ターボパワー(241W)動作時の性能を基準とした場合、第13世代のCore i9-13900Kでは65Wで同等の性能、同じ241Wでは37%増の性能になるとしている。
Θ ワットパフォーマンスが向上。
図5、第13世代Coreは、ワットパフォーマンスも向上している。インテルの説明によれば、第12世代のCore i9-12900Kの241W(PL2:ターボブースト時の最大電力量)動作時を基準とした場合、Core i9-13900Kは65Wで同等の性能、115Wで21%増、241Wで37%増、253Wで41%増の性能になるという。
前世代と同じLGA1700マザーボードは使い回しが可能。
第13世代Coreは第12世代Coreと同じLGA1700パッケージで、マザーボードも、UEFI(ファームウエア)をアップデートする必要はあるが、第12世代と同じものが利用可能(図6)。第12世代Coreを使用している人はCPUを交換するだけで第13世代Coreを使える。
Θ パッケージや対応CPUソケットは第12世代と変わらない。
図6、第13世代Coreのパッケージは第12世代Coreと同じLGA1700パッケージで対応CPUソケットも変わらない。そのため、UEFIを第13世代Core対応のものにアップデートする必要はあるが、第12世代Core用マザーボードでも使用できる。
新規に購入する人は、第13世代Core用として登場したZ790チップセット搭載マザーボードに注目だ(図7)。前世代よりPCIe 4.0のサポートレーン数が増えるなど機能がアップしていることに加え、動作クロックが向上した第13世代CoreのOCを見据えて電源部がより強化されている点が魅力となる。
Θ 電源部などが強化されたZ790チップセットマザーボードが登場。
図7、第13世代Core用チップセットとして新たにPCIe 4.0レーン数などが増加した「Z790」が登場し、搭載マザーボードも各社から発売が開始されている。より高性能となったCPUに合わせて電源回路などが強化されている点が特徴となる。
前世代から意外なほど性能が向上している。
ここからは第13世代Coreと第12世代Coreの性能を各種ベンチマークテストで比較してみる。
まずはCPU単体の演算性能から見てみよう(図8)。マルチコア性能は、「i9-13900K」と「i9-12900K」を比較すると約48%の差があるように、大きく向上している。シングルコア性能の伸びも、上記2種のCPUの差が約12%と、1世代の違いとしては十分に大きい。
図8、グラフはCPUの演算性能を計測したもの。第13世代はマルチコア性能、シングルコア性能ともに大きく向上している。Core i7、Core i5の性能とも前世代の上位モデルを上回っている。
実アプリの処理でもその性能差は明確に出ている。図9は「Word」と「Excel」の処理性能を比較したものだが、第13世代Coreと第12世代Coreの違いは明白だ。動画エンコードなど、マルチコア性能が大きく影響する作業ではその差はより顕著となる(図10)。第12世代Coreはゲーミング性能が高いというのも売りであったが、第13世代はそのゲーミング性能も明らかに向上している(図11)。
図9、Microsoft Officeを動作させて処理性能を計測するPCMark 10 Applicationsのテスト結果からWordとExcelのスコアを抜粋した。いずれのスコアも第13世代Coreのほうが大きく上回っている。
図10、グラフはiPhoneで撮影した4K動画(1分30秒、MOV形式)をYouTube向けの4K動画(M4V形式)にエンコードする時間を計測したもの。動画エンコード性能でも第13世代Coreが圧倒的に優位であることがわかる。
図11、DirectX 12世代のゲーム処理性能を計測する3DMarkの「Time Spy」のテスト結果。ゲームにおいても第13世代Coreのほうが高い性能を示している。
第13世代Coreは、アーキテクチャーなどに劇的な変化はなかったものの、性能は驚くほど向上している。第12世代Coreから乗り換えても、その恩恵を十分に受けられるだろう。