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どうなるスマホ決済の競争軸、「ポイント還元」から「サービスの質」にシフトするか。

〇 他社クレジットカードの利用停止を発表して大きな批判を浴びたスマホ決済サービス「PayPay」。その隙を突いて楽天ペイメントの「楽天ペイ」が、知名度を向上させるべく大規模なキャンペーンを展開している。依然競争が激しいスマホ決済だが、その競争軸は変化しつつある。2023年のスマホ決済はどうなっていくのだろうか。

キャンペーンで攻めに出た「楽天ペイ」。

高還元率のキャンペーン施策などで大きな注目を集めてきたスマホ決済。その中で頭一つ抜きんでているのがソフトバンク系のPayPayだ。だが前述のように、「PayPayカード」以外の利用を停止するといった措置を2023年5月に発表したために「PayPay改悪」と言われ、大きな批判を浴びた。

そうした声を受けて2022年6月22日にこの措置の延期が発表されているのだが、PayPayの一連の動きを見据えてか攻めに出たのが楽天ペイを運営する楽天ペイメントである。同社はこの夏、「おトクなペイは楽天ペイ スーパー還元」という大規模キャンペーンを展開している。狙いは楽天ペイと、楽天ペイアプリ内の「楽天ポイントカード」の利用促進。大規模キャンペーンには複数のキャンペーンが含まれており、内容や期間などはそれぞれ異なる。

例えば楽天ポイントカードを提示して買い物をすると、楽天ポイントの付与率が2~3倍に高まる。それに加えて楽天ペイで決済をすると、2人に1人の確率でポイントを獲得できるといったキャンペーンも含まれる。

楽天ペイメントは「おトクなペイは楽天ペイ スーパー還元」という大規模キャンペーンを展開。2023年6月から複数のキャンペーンを展開し、「楽天ポイントカード」などの利用を促進する。写真は2023年7月12日の楽天ペイ事業説明会より
画1、楽天ペイメントは「おトクなペイは楽天ペイ スーパー還元」という大規模キャンペーンを展開。2023年6月から複数のキャンペーンを展開し、「楽天ポイントカード」などの利用を促進する。写真は2023年7月12日の楽天ペイ事業説明会より。

楽天ペイはこれまで、主要なスマホ決済サービスの中ではあまりキャンペーンを展開してこなかった。にもかかわらずこのタイミングで大規模キャンペーンを展開するのは、PayPayに対抗するためだと考えられる。

楽天ペイには、いわゆる「楽天経済圏」という確固たる顧客基盤が存在する。そのため多くのスマホ決済サービスが知名度向上や利用促進のために大規模なポイント還元キャンペーンを展開する中、楽天ペイだけはそのようなことをしなくても順調に利用者を獲得できた。

だがその後、PayPayの台頭などでスマホ決済の市場が急拡大し、楽天ペイも楽天経済圏だけにとどまっていては利用者を増やすのが難しくなりつつある。しかも大規模キャンペーンを展開してこなかったこともあって、楽天ペイはPayPayなどと比べ知名度が劣っている。そこでPayPayが評判を落としたこのタイミングで勝負に出たようだ。

楽天ペイはかつての大規模キャンペーン合戦に参加することなく生き残れた。だがその分、PayPayなど他のサービスと比べると知名度で劣る。それが今回の大規模キャンペーンを展開する契機となったようだ。写真は2023年7月12日の楽天ペイ事業説明会より
画2、楽天ペイはかつての大規模キャンペーン合戦に参加することなく生き残れた。だがその分、PayPayなど他のサービスと比べると知名度で劣る。それが今回の大規模キャンペーンを展開する契機となったようだ。写真は2023年7月12日の楽天ペイ事業説明会より。

投資回収の動きが加速、「改悪」は今後一層増える。

とはいうものの、今回の楽天ペイのキャンペーン内容を利用者目線で見た場合、かつての大規模キャンペーン合戦ほど還元率は高くなく、お得感はあまりない。ビジネス的に見れば、あまり無理をしていないといえる。

既にスマホ決済は多くの人に定着しているし、淘汰の末各社ともに一定の顧客基盤を獲得している。このため利用者を増やしたいのはやまやまだが、無理をしてまで増やす必要はないというのが正直なところだろう。それよりむしろ各社が推し進めたいのは、投資の回収ではないだろうか。

とりわけPayPayはここ最近、投資から回収へと大きくかじを切っている印象を受ける。冒頭に挙げた他社クレジットカードの利用終了が一例だ。手数料を削減し、売り上げ及び利益を高めることに重点を置くようになった。

その成果は、親会社のZホールディングスやソフトバンクが2023年8月に相次いで発表した2023年度の第1四半期決算から見えてくる。

PayPayは利用者数や売上高が伸びているだけでなく、EBITDA(税引き前利益に支払利息、減価償却費を加えた利益)が四半期ベースで初めて黒字化を実現。ソフトバンクの宮川潤一社長兼CEO(最高経営責任者)は「まだまだ成長できる段階だが、いつまでも赤字とはいかない。ちょうどいいバランスで成長してきたと思う」と、従来の攻め一辺倒から姿勢を大きく変えていることをうかがわせた。

ここ最近PayPayは黒字化のために積極的に投資を回収している。EBITDAは2023年度の第1四半期で、初めて黒字化を実現した。写真は2023年8月4日のソフトバンク決算説明会より
画3、ここ最近PayPayは黒字化のために積極的に投資を回収している。EBITDAは2023年度の第1四半期で、初めて黒字化を実現した。写真は2023年8月4日のソフトバンク決算説明会より。

主要なスマホ決済サービスはいずれも携帯電話会社の傘下にあり、各社ともに成長領域の1つと位置付けている。そのため今後も成長に向けた投資は続けられるだろうが、拡大一辺倒ではなく利益創出や事業への貢献も明確に求められるようになってきた。それだけに、今後も利用者から見れば「改悪」と捉えられる施策は一層増えるだろう。

PayPayの「オフライン支払いモード」に見る競争軸の変化。

成長を続けるために各社に今後求められるのが、ポイント還元に頼らない施策だ。具体的には、サービス面での明確なメリットや魅力を打ち出す必要がある。その一例として挙げられるのが2023年7月20日に発表された、オフラインでも決済できるPayPayの「オフライン支払いモード」だ。

これはスマホがインターネットに接続されていない状態であっても、PayPayで一定額の決済が可能になるサービスである。通信がオフラインの状態になるとオフライン支払いモードに移行し、スマホに表示したバーコードを店舗側が読み取る「ストアスキャン方式」であれば決済できるという。

PayPayは新たに「オフライン支払いモード」を導入した。これによりインターネットに接続できない状態でもストアスキャン方式であれば一定額の支払いが可能になった
画4、PayPayは新たに「オフライン支払いモード」を導入した。これによりインターネットに接続できない状態でもストアスキャン方式であれば一定額の支払いが可能になった。

もちろんオフラインでの利用なので制限がいくつかある。例えばスマホでQRコードを読み込む「ユーザースキャン方式」には対応していない。中小の店舗ではユーザースキャン方式を導入していることが多いので、そうした店舗ではオフラインでは決済できない。決済できる金額や回数にも制限がある。決済回数は1日2回まで、1回の決済で支払える金額は最大5000円だ。

それ故あくまでも非常時の決済手段といえる。だが最近では自然災害や通信障害などでスマホでの通信が長時間利用できないケースが頻発している。また新型コロナウイルス感染症の5類移行で増えている大規模イベントなどでは、人が多いために通信しにくくなっているケースも発生している。それだけにインターネットに接続していなくても一定の決済ができる仕組みが登場した意義は大きく、PayPayの優位性を高めたことは間違いない。

スマホ決済の競争の軸は明らかに変わってきている。利益を出しながら成長していくには、従来のポイント還元キャンペーンよりもサービスの魅力を高めることが重要になってくる。PayPayのオフライン支払いモードはその一例といえる。ここまで明確に差異化できるサービスを次々に投入するのは難しいだろうが、スマホ決済を巡る競争は今後、サービスの質の追求へとシフトすると予想される。


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