〇 応用 上手に質問すると回答の精度が上がる。
「期待した回答を得られなかった」という一度か二度の経験から、「AIは役に立たない」と失望するのは早計だ。期待通りの答えが得られない原因の多くは“質問の仕方”にある。上手に質問することで、ドンピシャの回答が得られることも多い。
逆にいうと、回答の精度は質問の方法に大きく左右される。人間(部下や外注先など)に仕事を依頼するときと同じだ。実践編に入る前に、上手な質問方法を押さえておこう。
多機能なExcel故 質問の工夫で回答を限定する。
一番大事なポイントは「明確で具体的な質問」をすることだ。当然ながら、曖昧で具体性に欠ける質問より、明確で具体的な質問のほうが意図に沿った回答を得やすい。例えば「データを目立たせたい」などという曖昧模糊な質問はNG(図1右)。Excelにはデータを目立たせる機能がたくさんあるので、期待と違う機能を提案されてしまう可能性がある。一方、図1左のように、「E列に『在庫わずか』と表示したい」と質問すれば、セルに文字列を表示する手法に限定できる。
図1、明確で具体的な質問をすることで、こちらの求める操作方法や数式を正確に答えてくれる(左)。例えば「D列」「E列」といったセル範囲や「50」といった数字など、具体的な条件や達成したい結果を明確に伝える。右のように曖昧で具体性のない質問をすると、こちらのイメージと異なる回答が生成されてしまう可能性がある。
この「質問を工夫して回答を限定する」という手法は、ChatGPT活用の肝といってもいい。極端な話、図2のように「見出しを付けて情報を整理する」という手もある。命令やデータの例などさまざまな情報が混在した文章で質問するよりも(図3)、回答の精度が高まる。AIも人間と同じで、整理された情報を受け取るほうが理解しやすい。特に具体的なデータの例は、質問とは別に見出し付きで分離しておくのがお勧めだ。データはExcelシートからコピペしよう(図4)。
Θ 見出しを付けて情報を整理する。
図2、質問の情報量が多くなる場合、見出しを付けて整理すると意図が伝わりやすくなる。ここでは「##見出し##」形式としたが、見出しだと区別がつくならどんな書式でもかまわないようだ。改行は「Shift」+「Enter」キー。
図3、情報が整理されておらず、図2の質問に比べると「出力形式」や「データの例」といった情報が不足している。このような質問ではうまく意図が伝わらない可能性がある。
Θ セル範囲をコピペするとスペース区切りになる。
図4、Excelからセル範囲をコピーして、質問(プロンプト)の欄に貼り付けることも可能。表データはスペース区切りに変換される。
「もっと詳しく」と繰り返す 「どんな情報が必要?」と聞く。
「諦めずに何度も質問・命令を繰り返す」ことも重要だ(図5)。最初の回答が期待ハズレでも、「◯◯についてもっと詳しく説明してください」「回答を表に整理してください」などと対話を続けることで、イメージ通りの回答に近づいていく。
Θ 何度も質問と依頼を繰り返す。
図5、最初の回答が期待外れのこともあるが、そこで「やっぱりAI使えない」と諦めてしまうのは早計。会話の流れの中で何度も質問と依頼を繰り返すことで、精度を高められる。精度を高めるための有効なフレーズの例を列挙した。
「どんな質問をしたらよいかChatGPTに聞く」という裏技もある(図6、図7)。「〇〇したい」と単純に聞くのではなく、「そのために必要な情報があれば質問してください」と一歩引くのだ。質問の仕方をヒアリングしてもらうことで、聞くべきポイントを明確化できる。この手法は「深津式プロンプト・システム」と呼ばれ、noteのCXOである深津貴之氏がセミナーで紹介し、一躍注目を浴びることとなった。
Θ 逆にヒアリングしてもらう手もある。
図6 逆に質問(ヒアリング)してもらうことで、ポイントを明確化できる(上)。わからない質問に対しては提案を求めることも可能(下)。
図7、以上のやり取りを踏まえて「条件付き書式」や「アイコンセット」などを提案してくれた。