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事例から読み解く 中堅・中小企業によるクラウド活用のリアルなメリット。

○ 中堅・中小企業におけるクラウド利用の3つのメリット。

「クラウドファースト」あるいは「クラウドマスト」が叫ばれる時代となったが、現在もオンプレミス環境を利用し続けている中堅・中小企業は少なくない。その理由は、コストやセキュリティーに対する不安、クラウド移行をリードできる人材の不足などにあるという。しかし、そうした懸念は杞憂にすぎない。クラウドについて正しく理解することで解消できる課題がほとんどであり、むしろクラウドを利用するメリットは、中堅・中小企業こそ大きい。

それでは具体的にどんなメリットがあるのか。まずは「コストの最適化」だ。クラウドは利用したい機能を、利用したい数や容量で契約できため、無駄なコストを省くことができる。中堅・中小企業は、IT予算が限られるケースが多く、使わない機能も含まれたパッケージ製品を利用していた場合などは、クラウド移行することで大きくコストを下げられる可能性も高い。

次に「運用管理の負荷低減」も重要なメリットだ。中堅・中小企業は、「兼任情シス」「一人情シス」と呼ばれる体制でITシステムの運用にあたっているケースが圧倒的に多く、担当者はオンプレ環境の“お守り”に四苦八苦している。その点クラウドでは、サーバーの運用・管理をクラウド事業者に委任できる上、スケールアップやスケールダウンを手続き1つで簡単に行える。バージョン更新や障害対応なども自社で行う必要がなくなるため、運用管理の負荷を大きく下げられるわけだ。

さらに「BCP(事業継続計画)」の向上にも役立つ。近年、感染症のパンデミックや頻発する激甚災害に対して、いかに事業や業務を継続するかが問われている。とはいえ、中堅・中小企業がそのための多額な投資を行うことは難しい。その点、システムをクラウドに移行しておけば、オフィスが使用できない状況に陥ってもデータを守り、そのデータを利用してリモートワークに切り替えることも可能だ。

こうしたメリットに着目し、実際にクラウド移行に踏み切った中堅中小企業3社の事例にフォーカスし、得られた成果を紹介したい。

コスト・運用負荷の削減、BCP強化に成功した企業とは。

事例の1つ目として取り上げるのは、東京ダイヤモンド工具製作所だ。社名が示す通り、ダイヤモンド工具の専業メーカーとしてモノづくりの現場を支える企業だ。

同社では、オンプレミス環境で運用していた各種システムをアマゾン ウェブ サービス(AWS)のクラウドに移行した。背景にあったのは、「運用負荷の軽減」「可用性の向上」「安定稼働」「調達のリードタイムの短縮」といった課題だが、特に大きな要因となったのは、「事業継続への危機意識の高まり」だった。

東日本大震災によって仙台工場が被災した同社は、バックアップ用のハードディスクを社員の自宅に持ち帰ることで、なんとかデータの紛失を防いだものの、それまでの対策の甘さを痛感。BCPの強化を決意し、2015年よりAWSの利用を始めたのである。

これ以降、同社はグループウエア、テレビ会議システム、IT 資産管理システム、外部ベンダーが利用する開発・テスト環境、ユーザー認証基盤(Active Directory)、Windows標準のアップデートツール(WSUS)、ウイルスソフトやネットワーク検疫ソフトの管理サーバーを次々にクラウドに移行するほか、セルフサービス開発ツールについては新規でAWS上に導入した。こうして2021年12月には、AWS上で稼働するインスタンスは10以上に拡大し、さらにオンプレミス環境で稼働している基幹システムのバックアップをAWS上に取得する体制が整った。

結果として同社は、サーバー構築・運用負荷および調達金額をそれぞれ50%削減するとともに、サーバーの調達やセッティングに要していたリードタイムが従来の1カ月から約10分まで短縮され、これに付帯する作業の90%以上が削減されるという劇的な成果がもたらされたのである。

こうしたシステムリソースの柔軟な拡張・縮退の実現により、同社は情報システム担当者の業務をIT戦略の推進などにシフトすることが可能となった。環境負荷の低減につながる工具の開発やサステナビリティへの貢献など、自社ビジネスのさらなる付加価値向上に向けて全力を挙げていく考えだ。

IT専任担当者がいない中、わずか半年でクラウド移行を完了。

2社目の事例として取り上げるのは、空・油圧機器、軸受、精密機械、各種産業機械や部品などの専門商社である大同精機だ。

同社これまでオンプレミス環境でスクラッチ開発した販売管理システムを運用してきた。しかしIT専任担当者がいない中で、「システム管理の属人化」と「高い運用負荷」、「データベース容量の肥大化に伴うレスポンス低下」、「アップデートやセキュリティー対応の不備によるリスク増大の懸念」など、多くの課題を抱えていたという。

そこで同社が踏み切ったのが、「奉行シリーズ」を使ったクラウド移行である。具体的には「商蔵奉行 V ERP10 Advanced Ed. 仕入れ管理」をAWSに展開し、リモートアクセスできる仕組みを導入した。これにより従業員に対して、端末の性能に依存しない快適なアプリケーションの利用環境を提供する一方、IP アドレスによる接続制限を行うことでキュリティも担保。加えて、各自のディスクイメージをAWS側で日々バックアップするなどBCP強化も実現した。

加えて注目したいのは、このクラウド移行を、わずか半年足らずで成し遂げたこと。以前の販売管理システムは、完成までに4年の歳月を費やしたことを考えると、今回のクラウド活用は圧倒的なスピード感であることが分かるだろう。AWS上の新システムは、その後も現在に至るまで安定稼働を続けているという。

クラウド移行により同社は、インフラ管理工数の80%削減、物理サーバーでのシステムトラブルによる業務停止リスクの大幅軽減、属人的な保守メンテナンスの排除による事業継続性の向上など、数多くのメリットを享受している。

さらに大きいのは、システムの保守業務をIT専門家への委託に切り替えることで、本来の業務に注力できる体制を整備できたこと。今後は海外との取引業務を強化すべく、翻訳AIであるAmazon Translateの活用も視野にいれているという。

クラウド上でリモートワークの基礎を築く。

最後に3社目の事例として、アツミ電子計算センターの取り組みを紹介しておきたい。

高知県でLPガスの供給などの事業を手がける土佐ガスグループの情報システム会社として設立された経緯をもつ同社だが、近年はサーバーの老朽化が進み、ハードウエア障害への対応が迫られる状況となっていた。

親会社の土佐ガスはガス漏れなどの緊急対応に備えて社員が各事務所に常駐しており、24時間365日のシステム稼働が必須であるだけに、これは放置できない重大な問題だ。それだけではない。高知県は南海トラフ地震が起きた場合、甚大な被害が及ぶことが想定されているだけに、BCPやDR(災害復旧対策)の強化が喫緊の課題となっている。

そこで同社はサーバーを自社で持たないクラウドの検討を開始し、AWSへの移行を決定したのである。まずはファイルサーバー兼ログサーバーの移行から着手。その後、営業支援システムのアプリケーションサーバーとDBサーバー、ワークフロー、介護支援システムなどを順次移行していった。なお、Oracle Databaseを基盤とする基幹システムのサーバーは、AWS Database Migration Serviceを活用してAmazon RDS for Oracleに移行する方法をとった。

この結果、新たなサービスリリース時のハードウエア調達のリードタイムは従来の1~2カ月から最短で数分へと大幅に短縮されるとともに、運用担当者はサーバーの保守作業から解放された。

さらにクラウドならではのメリットを生かした施策として、仮想デスクトップサービスの「Amazon WorkSpaces」を導入。現場作業が多い担当者が、タブレット端末から日報を入力できるようにするなど、リモートワークの基礎を築いた。

このようにクラウドへの移行後も新たなチャレンジを続けていることが同社の特徴だ。例えばAIやIoTを活用したガスの配送業務の効率化を目指すという。

ここまで取り上げてきた3つの事例から見て取れるように、いずれの企業もクラウド移行を通じてコスト削減や運用負荷軽減、業務継続性の強化など、様々な成果を上げているが、本当に注目してほしいのは“その先”である。クラウド移行によって得られた社内のリソースを最大限に生かすことで、不確実性の高い時代を乗り超える競争力や新たな価値を生み出そうとしているのである。


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