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アンテナ内蔵のWi-Fiルーター。

〇 設置の向きで電波強度は変わるのか。

Wi-Fiの電波は、Wi-FiルーターやPCなどのアンテナで送受信する。そのためWi-Fiルーターのアンテナの使い方をひと工夫すれば、電波状態を改善できる。ただしWi-Fiルーターのアンテナは、製品によって実装方法が異なる。外から見える大型のアンテナを搭載している場合は向きを変えて調整できるが、アンテナが内蔵されている場合は本体を設置する向きを変えればよいのだろうか?

多くのWi-Fiルーターはアンテナを内蔵しているが、写真の「WXR-6000AX12S」(バッファロー)のようにアンテナが外に出ていて向きを調節できる機種もある
画1、多くのWi-Fiルーターはアンテナを内蔵しているが、写真の「WXR-6000AX12S」(バッファロー)のようにアンテナが外に出ていて向きを調節できる機種もある。

向きを変えられるアンテナを搭載しているなら調節しよう。

ハイエンドタイプのWi-Fiルーターの一部機種では、外から見える大型のアンテナを搭載している。こうした製品はアンテナの向きや角度を自由に動かし、特定の場所での電波強度を調節できる機能を持つ。

例えばバッファローの「WXR-6000AX12S」は、「アンテナ設定ガイド」という説明書が用意されており、アンテナの特性や利用状況に応じた向きの調節方法の例などが記載されている。そこで、その説明書に記載されている「標準設定」「応用設定1 同一フロアに加え、上下フロアでも通信するアンテナ配置にしたい場合」「応用設定2 同一フロアでの通信に特化したアンテナ配置にしたい場合」の3つの向きにアンテナを調整し、見通しが良く15メートル離れた場所からアイ・オー・データ機器のスマホ用アプリ「Wi-Fiミレル」を使って電波強度を調べた。

標準設定のアンテナの向きは、4本のアンテナのうち左右の2本を90度寝かせ、45度開いた状態に設置する。また、中央の2本のアンテナも45度開いた状態にする。応用設定1では、標準設定から左右2本のアンテナを回転させ、アンテナの平面が上向きになるように調節する。応用設定2では、左右2本のアンテナを垂直に立て、中央2本のアンテナを寝かせて45度開く。

アンテナの向きで電波の方向をある程度は変えられる。アンテナの向きを変えられる機種であれば、利用状況に応じてアンテナの向きを調節した方がいいだろう
画2、アンテナの向きで電波の方向をある程度は変えられる。アンテナの向きを変えられる機種であれば、利用状況に応じてアンテナの向きを調節した方がいいだろう。

Wi-Fiミレルは100を最大値とした独自の数値で電波強度を表す。このアプリで調べたところ、アンテナの向きが標準設定だと電波強度は35を示していたのに対し、応用設定1では電波強度が33に低下した。これは、上下階に向けてアンテナの向きを調整した結果、同一階の電波が弱くなったと推測できる。

一方でアンテナの向きを上記の応用設定2にすると、電波強度は40まで上昇した。このテストから、アンテナの向きを調整することで電波の強弱が変化することが分かった。もしアンテナの向きを調節できるWi-Fiルーターを使っている場合、利用状況に応じてアンテナの向きを調整した方がいいだろう。ただし、電波の強弱は変化したが、速度を計測したところほとんど差はなかった。

アンテナ内蔵タイプは設置の向きを気にしなくてよい。

多くのWi-Fiルーターは、本体に無指向性のアンテナを内蔵している。無指向性のアンテナは、アンテナを軸にして周囲360度に電波を発する。そして、アンテナが縦向きであれば水平方向に、横向きであれば垂直方向に電波が広がりやすいという特性がある。ただしアンテナを内蔵するWi-Fiルーターの場合、その特性を考慮してアンテナを配置している製品が多い。そのため、Wi-Fiのルーターが縦置きでも横置きでも同等の性能を発揮できるという。

実際にバッファローのWi-Fiルーター「WSR-3200AX4Sシリーズ」を設置し、Wi-Fiルーターから20メートル離れた場所で、Wi-Fiミレルを使い電波強度を調べてみたが、Wi-Fiルーターを縦向きに置いたときと横向きに置いたときで電波強度に大きな違いはなかった。アンテナを内蔵するWi-Fiルーターの場合、本体を設置する向きはあまり気にする必要はないだろう。

アンテナを本体内部に内蔵するWi-Fiルーター「WSR-3200AX4Sシリーズ」の場合、縦置きや横置きによる変化はほとんどなかった
画3、アンテナを本体内部に内蔵するWi-Fiルーター「WSR-3200AX4Sシリーズ」の場合、縦置きや横置きによる変化はほとんどなかった。

アルミホイルでアンテナ部分を囲む意味はない。

Wi-Fiの電波は、金属で反射する特性を持つ。その特性を生かして、アルミホイルや金属のフードでWi-Fiルーターのアンテナの周囲を囲み、特定の方向へ向けることで電波が強くなるという説をインターネット上で見かけることがある。これは本当だろうか?

前述したテスト環境で実際に試したところ、電波を向けた特定の方向に関してはアプリの電波強度表示が40から41に上昇した。わずかに上昇しているものの、誤差と言える範囲だろう。

そしてアルミホイルは電波を遮断するため、特定の方向以外では電波強度が大幅に減少していた。Wi-Fiルーターを囲ったアルミホイルの1メートル後ろで測定したところ、通常はWi-Fiミレルの数値で80はある電波強度が60付近まで落ち込んでいた。アルミホイルや金属のフードなどで囲む行為は、メリットがあまりないと言えるだろう。

100均ショップで売っていたキッチン用のアルミホイルでWi-Fiルーターを囲った。電波の拡散を抑えるのにはよいのだが、電波強度はほとんど上がらなかった
画4、100均ショップで売っていたキッチン用のアルミホイルでWi-Fiルーターを囲った。電波の拡散を抑えるのにはよいのだが、電波強度はほとんど上がらなかった

それからアルミホイルでWi-Fiルーターのアンテナを包むと(「囲む」ではない点に注意してほしい)、電波強度は大幅に弱まる。アルミホイルに包むのは極端な例だが、Wi-Fiルーターの周囲を金属ラックや金属テーブルで覆うと同じように電波強度が弱くなる状況になるため、Wi-Fiルーターの設置場所に注意したい。

試しに、Wi-Fiルーターではなくスマホをアルミホイルで囲い、Wi-Fiルーターを設置している方向のみ開放した状態で強度を測定したところ、測定結果は40から44になり、電波強度が1割ほど高くなった。囲うという工夫をするのであれば、Wi-Fiルーター側ではなく子機側で実施した方がよさそうだ。ただ子機はかなり使いにくくなるため、現実的な使い方ではない。

アルミホイルをWi-Fiルーターのアンテナに巻き付けると、電波を拡散できず子機が受け取れる電波が弱くなる。これは極端な例だが、金属ラックや金属テーブルにWi-Fiルーターを設置した場合にも似たような状況になり得る
画5、アルミホイルをWi-Fiルーターのアンテナに巻き付けると、電波を拡散できず子機が受け取れる電波が弱くなる。これは極端な例だが、金属ラックや金属テーブルにWi-Fiルーターを設置した場合にも似たような状況になり得る。

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