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森沢明夫著『かたつむりがやってくる たまちゃんのおつかい便』名言いっぱい

森沢明夫著『かたつむりがやってくる たまちゃんのおつかい便』あらすじ・感想。
ゆるそうなタイトルのわりに名言がたくさん出てきて泣ける!
まとめるとこんな感じ
・たまちゃん、大学中退して起業を計画
・たまちゃんとフィリピン人の継母
・たまちゃんのおつかい便スタート
・たまちゃんと静子ばあちゃん


『かたつむりがやってくる たまちゃんのおつかい便』

著者:森沢明夫
発行:株式会社実業之日本社



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『かたつむりがやってくる』あらすじ・ネタバレ感想


☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…

『かたつむりがやってくる』登場人物

●葉山珠美(はやま・たまみ)
 20歳。大学を中退し地元に戻る
 祖母の為に移動販売を始める

●シャーリーン
 フィリピン人、39歳
 たまちゃんの義母

●葉山正太郎(はやま・しょうたろう)
 たまちゃんの父親
 [居酒屋たなぼた]店主

●常田荘介(つねだ・そうすけ)
 常田モータースの跡継ぎ
 たまちゃんの幼馴染み

●松山真紀(まつやま・まき)
 たまちゃんの引きこもり中の同級生
 あだ名はマッキー
 都会で働いていたがある事で帰郷

●静子ばあちゃん
 たまちゃんの母方の祖母
 クローバーの巾着袋を作ってくれた
 いつも幸せを分けてくれる素敵な人

●千代子バア
 静子ばあちゃんと仲良し

●古館正三(ふるたち・しょうぞう)
 昔はヤクザ者だった
 隣町で移動販売をしている
 たまちゃんが弟子入りする

●理沙(りさ)
 22歳のヤンママでマッキーの姉
 [ドライブイン海山屋]経営

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『かたつむりがやってくる』のあらすじ

葉山珠美通称たまちゃん(20歳)は、地元に帰って起業しようと決意し、親に相談せずに大学を中退する。
起業に必要な勉強をし、アルバイトでお金を貯め、父親の正太郎に報告しようとした矢先、正太郎が背骨に腫瘍ができて手術することになる。
中退したことを言えぬまま、3年前に正太郎と結婚したフィリピン人の義母・シャーリーンと実家で暮すがたまちゃんの心にはしょっちゅうさざ波がたつ。


たまちゃんの亡くなった母方の祖母・静子ばあちゃんは少々不便な場所に住んでおり、所謂買い物弱者に分類される。
たまちゃんは大好きな静子ばあちゃんの為に移動販売を始めることをずっと計画していたのだ。
正太郎は自分が経営する居酒屋を[たなぼた]なんて名付けるほどあっけらかんとした男で、たまちゃんの起業も許してくれた。


たまちゃんは幼馴染みの荘介やマッキーの協力を得て移動販売を始める準備を着々と進めていく。
隣町で移動販売をしている元ヤクザの古舘正三に弟子入りしてノウハウも学び、販売の為の場所も確保。
張り切るたまちゃんだが、一方でシャーリーンに対し違和感が積もっていく。


そして迎えた4月1日。
たまちゃんは、壮介が安く仕入れてキュートでレトロでシックに仕上げてくれたスズキのキャリイに乗って【おつかい便】をスタートさせた。

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『かたつむりがやってくる』ネタバレ感想

移動販売と言うと『とくし丸』が有名だ。
実は都会であっても不便で人口が減少している地域はあり、買い物難民化は田舎の山間部に限った問題ではない。


コニー・フランシスの♪ヴァケイション♪を流しながら、地元のじいちゃん・ばあちゃん達の足になろうと起業したたまちゃん。
志はもちろん立派だが人がいないと多くの売上は見込めない。
たまちゃんの師匠・正三さんもそこを心配し、たまちゃんの父・正太郎の前でもネガティブモードだった。

186ページの2人の会話。
「正太郎おめぇ、娘が失敗しても……」
「ちげーよ、古館さん。そもそも人生に『失敗』なんてねぇべさ?」
「え?」
「人生にあんのは『成功』と『学び』だけだって、死んだ俺の嫁さんが言ってたもんな。それによ、やりてぇことやんねぇ人生なんてつまんねぇべ?」
「……」
「つまんねぇ生き方すんのは、わが家では禁止ってことになってんだよ。昔っからな」


たまちゃんの父親・正太郎は、若い頃はかなりやんちゃな人物だったようだが、物語の中でいつもとても良いことを言う。
23ページで語る[居酒屋たなぼた]の由来も面白い。

棚からぼたもちってのはよ、ようするに運がいいってことだべ?運がいいってのは、神様に愛されてるってことだ。俺たちが毎晩、酒を喰らって、げらげら笑い合って、みんなと愉快にやってればよ、神様たちも楽しいのが好きだから自然と集まってくるわけさ。んで、結局、神様が集まるところにこそ、運が開けてくるってわけよ

私という人間を力一杯絞っても絞り出せない発想に目から鱗が落ちた(笑´∀`)
でも、言われてみたらその通りと納得してしまう幸せな発想だ。
笑う門には福来たると言うしね。
このくだりで私の頭には明石家さんまさんの笑顔が浮かんできた。
「生きてるだけで丸儲け」を自分の娘の名前にする発想と愛情深さ。
正太郎はさんまさんみたいな人なんだろうなと思った。


たまちゃんが地域の為に儲かりそうにない移動販売を始めようと奮闘するのも、彼女が周囲の人間からたくさんの愛情をもらってきたからだと思う。
周りの大人がたまちゃんに良いことをたくさん教えてくれる。
たまちゃんは大学生活に希望を抱いていたものの、友達と戯れながら無為に過ごすことが楽しめず地に足をつけて生きている満足感も得られなかった。
そんな時、彼女の背中を押したのは亡くなった母親が言っていた“命”と“時間”の話だった。

140~141ページ
命ってね、時間のことなんだよ-。
小学六年生の頃に、母はわたしにそう教えてくれた。
つまり、この世に「おぎゃあ」と生まれ落ちた瞬間から、わたしたちはすでに「余命」を生きていて、あの世に逝く瞬間まで「命」という名の「持ち時間」をすり減らし続けているというのだ。
命=自分の持ち時間


たまちゃんにとって大学生活は、自分を生きていない勿体ない時間だった。
起業なんて大それた事だし、怖かったけれど、1分1秒確実に減っていく自分の持ち時間を考えたら「怖い」より「勿体ない」が勝ったってわけだ。



たまちゃんが少し沈んでいる時、静子ばあちゃんはおじいちゃんがお母さんに話していたことを教えてくれた。

147ページ
人に期待する前に、まずは自分に期待すること。で、その期待に応えられるよう、自分なりに頑張ってみること。人にするのは期待じゃなくて、感謝だけでいいんだよ-って

私は常日頃、人に期待なんぞするもんじゃないと思っているが、こんな優しい発想でそう考えてはいなかった。
勝手に他人や政府に期待して、誰かが何かを考えたりしてくれるのをボケッと待っている時間があるなら自分でやった方が早い。
他人に期待するのは怠け者だからだ!
このぼんくらめ(`Д´)ノシ
と、思っていたので、たまちゃんのおじいちゃんのような優しさがない自分を恥じ読みながら赤面した。


周りの人間の優しさに包まれ健やかに育ったたまちゃんだが、どうしてもどうしてもフィリピン人の義母・シャーリーンの存在が引っかかる。
シャーリーンが早朝から日本語の勉強をしていることも、日本の料理人並に料理を作ることを学んでいることも知っているし、努力を認めてもいる。
だけど、たまちゃんにとって死んだお母さんが一番なのだ。
正太郎が再婚した時、たまちゃんは18歳で十分物わかりの良い大人だった。
親の再婚でグレたりもしない。
それでも、正太郎とシャーリーンを目にすると心がざわつくのだ。
お父さんがお母さんを忘れてしまっているようで嫌なのだ。


そして、たまちゃんの心の拠所だった静子ばあちゃんが……。
慌てて静子ばあちゃんの家へ向かう途中、たまちゃんは車ごと崖から転落。


登場人物がみんな心の中に翳を宿している。
けれどもそれを他人の前で決して見せない。
そんな甘えんぼさんじゃないんだよ。
その代わりみんなとってもいい人で、幸せになれる「良かった探し」がとても上手で、協力し合って生きているのだ。
自分の人生を楽しむ為にみんなが知恵と工夫をこらしている。
誰かがどうにかしてくるのを待ってちゃいかんよね。


このお話にはモデルがある。
三重県紀北町の東真央(ひがし・まお)さんがされている移動販売『まおちゃんのおつかい便』だ。
地域の為に起業、立派だと思う。



☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…

ご訪問ありがとうございました(人´∀`*)

コメント一覧

tataraworks-lynx50
@29qlove ラムネちゃんとキーちゃんのママん様、コメントありがとうございます。
そうなんですよ、この小説、とにかく名言だらけなんです。
実はそれほど面白さを期待せずに何気なく手に取った本でしたが、登場人物それぞれに「なるほど!」と思わされます。
しかも結構泣けます。
おっしゃる通り、有意義に楽しく過ごすのが一番ですよね。
私は〇かXかで何でも選択してあまり悩む時間を作りません。
若ければ悩む時間を持てますが、歳をとったら先が短いので悩んでぐずぐず時間をつぶすなどという無駄づかいはできませんもの。
なるべく楽しく過ごしたいものですよね。
あと、本の台詞の通り、他人様には期待せず感謝だけしようと思います。
なかなか難しいですけど(^人^)
29qlove
本当にそう!名言の数々。
いい言葉ばかりで驚きました。(⊙ꇴ⊙)
私も普段から人間をはじめとする全ての生き物は致死率100%なのに、どうして一生懸命致死率を下げようとしてるのか???と考えてしまう事がありますが…致死率を下げようとしてもそれは無駄。死亡率は100%から下がりません。死は平等に必ずやって来ます。それを恐れ、一生懸命気を付けて過ごすのもその人の考え方ですが、私はそんな事を恐れている時間があれば、有意義に過ごすほうが何倍もいい、と思うのです。
なんだかとっても親近感な名言でした。(^^)

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