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雑感録

これがぽ~ちゃんだ その1『McCARTNEY』

 
McCARTNEY(1970 Paul McCartney)

別にいらんけど、邦題は『ポール・マッカートニー』。
リアルタイムで知っていればもっと聴き込んだでたかもしれない、逆に1回聴いて2度と聴かなかったかもしれない、ポール初のソロアルバム。
ビートルズの最後に“発売”されたアルバム『LET IT BE』(最後に“レコーディング”されたのは『ABBEY ROAD』)のおよそ1カ月前に発売され、プレス資料にポールの“脱退宣言”が載っていたとされる、超いわく付きのアルバムだが、当時小学2年生になったばかりの私は、ノーテンキに「せんきゅ~ひゃくうななじゅ~ねんの、こ~んに~ち~は~」(わからない人は浦沢直樹のマンガ『20世紀少年』を参照のこと)なんかを聴いていたのだ。
ほとんどが当時としては異例の“宅録”でワンマンレコーディング。
なので曲はシンプルで音はスカスカ、「ポール初のソロ」と期待した人たちはさぞガッカリだったんじゃないかと思う。
オイラは、ポールの初期のアルバムは順番的に『BAND ON THE RUN』や『VENUS AND MARS』なんかよりも後に聴いたので、初めて聴いたときはビックリした。
しかし、ビートルズ崩壊後の落ち込みと、その慰めをリンダとの家庭に求めたポールの心境を考えると、理解できないことはないでもない。
と、以前は思っていたし、そう書いた。
しかし、本当にそうなのか?

ビートルズが崩壊することなんか、ポールにはとっくに分かっていたはずだ。
必死にグループを引っぱろうとするポールに対し、「も~、そんなうるさいこと言ってたら辞めちゃうよ~」とか言ってるジョンやジョージの方が、“解散”に対する真剣味はよっぽど薄かったに違いない。
だからポールは自分でケリをつけようと思った。
だからポールは『ABBEY ROAD』にその時点でもっているすべてをつぎ込んだ。
そして、すべてを吐き出したポールは空っぽになった。
せっかちなポールは脱退を表明するためにさっさとソロアルバムを出したいのだが、何も浮かんでこない。
世間、というより他のメンバーをびっくりさせたいので、あんまりおおっぴらにやる訳にもいかない。
しゃ~ない、とにかくやっつけでも作ろう。
多少やっつけで『ABBEY ROAD』との落差があった方が、ビートルズとは違うんだということをみんな分かってくれるかもしれない。
これが勝手に考えたビートルズ解散&『McCARTNEY』誕生秘話である(勝手に考えておいて秘話もくそもありゃしない)。
フィル・スペクターがポールの曲をこねくりまわして台無しにしたのは、結果的にポールに脱退を宣言するいい口実を与えただけだったのである。

あるいは、ひょっとしたら、ジョンやジョージだけならともかくリンゴまでソロアルバムを出すってんで、慌てて副業的なソロアルバムを作っただけのつもりだったのに、つい弾みで解散まで行っちゃったのかもしれない。
とにもかくにも、ポールへの愛なくしては聴けない、いや、ポールへの愛のない人は別に聴かないでもいい1枚であろう。

01 the Lovely Linda
メロディメーカーとしてのポールは今さら力説するまでもないが、実はポールの醍醐味はロックと小品。とはいえ、さすがにこの曲は小品というほですらない、オープニングのお遊び。自分のヨメさんを歌にするなんて気恥ずかしい限りだが、ビートルズファンはなぜかリンダに寛容なんだよなあ(ポール派は優しさで、非ポール派は半ば呆れて)。まあ、あっという間に終わるし(46秒!)他愛もない内容なので、許そう。曲の最後には自分でも恥ずかしくなって(?)笑ってるし、ジョンの『Dear Yoko』よりはマシだろう(ビートルズファンはヨーコに冷たいんだよ)。

02 That Would Be Something
こちらもまたシンプルな曲だが、後にMTVのアンプラグドでも取り上げてるところを見ると、本人は結構気に入ってるんだろうな。曲調的にはビートルズではあまり見られなかったタイプで、ドラムはタム(?)とシンバルのみ。なんとも不思議な曲だ。

03 Valentine Day
ソロになって、ギターもドラムもやりたい放題だと浮かれちゃったのか、インストロメンタル(と呼んだ方がいいもの)がこの曲を含めて5曲もある。個人的には基本的にボーカル指向というか、“歌”が好きなので、インストロメンタルはどうも…。タイトルみても曲がパッと浮かんでこんし。

04 Every night
これもアンプラグドなど何度か取り上げてるが、個人的にはカンボジア難民救済コンサート(だったよな?)のときの、ちょっとスローでコーラスのついたやつがお気に入り。曲はいいのだが、オリジナルは一本調子でコーラス部分もユニゾン(ダブルトラック?)と、シンプルすぎやろ。ひょっとして全体的にシンプルすぎるのは、徹底的に作り込んだビートルズのラストアルバム『ABBEY ROAD』からの反動だろうか?(その旨は冒頭にもつけ加えたが)
このビデオがちょっと近いかな?
http://www.youtube.com/watch?v=NdAplzZatXs

05 Hot As Sun/Glasses
『Hot As Sun』はインストロメンタルながらタイトル通りのゴキゲンな曲。ただし、邦題の『燃ゆる太陽の如く』なんて訳の分からんしかめっ面の文語調で言われたら、ゴキゲンもフキゲンもあったものはないのだが。続く『Glasses』はよくわからんオマケ。『THE BEATLES』(ホワイトアルバム)の『Cry Baby Cry』に続く「Can You Take Me Back~」(クレジットなし)みたいなもんか?

06 Junk
たぶん、何か(後述)でインストロメンタルの『Singalong Junk』の方を先に聴いてたんだと思う。アルバムを聴いて「あ、歌があったんだ」と思った記憶がある。「モーターカー、ハンドルバー、二人乗りの自転車…」、「パラシュート、アーミーブーツ、二人用の寝袋…」と、淡々と情景を並べる歌詞がなんとも切なく、く~、たまらん。最後のリンダのコーラス、というよりその部分の曲としてのハーモニーがぞくぞくするほど美しい。

07 Man We Was Lonely
どうでもいいことだが、初めて聴いたころは、なんで「マンウィーワズローンリー」と女のリンダがいっしょに歌ってんだか不思議だった(今でもだけど)。あと、サビの終わりの方の「アイアンホー(ホー)、ホオー(ホオー)、ホー」のところ、掛け合いのリンダの声もそうだけど、曲としても締まらんなあ。

08 Oo You
ちょっとヘヴィなロック。ヘヴィなギターを思いっきり弾きたかったんだろう、イントロでギターのワンフレーズのあとに「マ、ギター」とつぶやくのがちょっとかっこいい。でも本当のポールのロックはこんなもんじゃあない。

09 Momma Miss America
またまたインストロメンタル。ピアノをフィーチャーした前半部分とギターメインの後半部分で構成されているが、前の『Oo You』から始まる三部構成の1曲という印象を受けるのはオイラだけだろうか。

10 Teddy Boy
訥々とした物語風の展開が、ビートルズの『Rocky Racoon』を彷彿とさせる。ご存知ゲットバック・セッションでも歌われていたが、スマートな仕上がりの今回より、ジョンがうんざりするほどダラダラ間延びしたゲットバックのときの方が良かったような気がするなあ。

11 Singalong Junk
記憶が定かでないのだが、かつてNHKの少年ドラマシリーズでテーマ曲に使われてたと思う。まだポールのソロに詳しくない頃だったけど、ポールの曲を使うなんて、なんとセンスのいいドラマなんだろうと感心したような気がする。それにしても、なんと切なく、なんと儚く、なんと美しい曲なことよ。歌付きもいいが、この曲についてはインストロメンタルも素晴らしい。特にEギターの音、オブリガード的なメロディ、何度聞いてもしびれるわ。

12 Maybe I'm Amazed
ポールお得意の絶叫型バラード。ポールのアルバムはだいたいスケールの大きなバラードで締めるというパターンが多く、オイラもよくマネしたもんだが、その原型か。最後のコーラスで、『Jet』のようなミュート・ギターが効果的に聴かれるが、当時の流行だったんだろうか。
それにしても『恋することのもどかしさ』の邦題は何かいな。歌詞全体のもどかし感はわからんでもないけど、タイトル違うやろ。いらん邦題はつけなさんな。ああ、もどかしい。

13 Kreen-Akrore
ポールのアルバムはだいたいスケールの大きなバラードで締めて、その後にちょっとしたオマケがつくというパターンが多く、オイラもよくマネしたもんだが、その原型か。ビートルズでは最後の『the End』までリンゴにドラムソロを叩かせなかったポールだが(別にポールが叩かせなかったということではないが)、自分がソロになったら1枚目からドラムソロをやりやがった。それも、ちょっと長いんじゃないかい?

つづく
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