ハンガウトです。もう15年以上前の体験なのですが、多くに共通すると思うので、披露させて戴きます。
自閉症のAくん、特別支援学校に通う中学1年生、話し言葉はありません。就学前にご両親が離婚し、週のうち4日は施設で、3日はお父さんと自宅で過ごすという生活をしています。パニックが頻繁で、お父さんは何とか暴れる彼を抑えられるそうですが、体格が大きいため、学校でも施設でも手こずっているとのこと。
ちなみに、お父さんもスラリと背が高いので、それを受け継いだのか、当時身長が180センチくらいありました。とはいえまだ大人の体型ではないので、お父さんよりも肉付きがよく、とにかくデッカイ子という印象です。
初めて心のケアの相談に訪れた日、Aくんは緊張しているようでしたが、身体のつき合いに誘うと、とりあえず応じてくれました。
パニックというのは、ガマンが足りないために起こすと思われがちですが、実は本人にしてみると、それまで解って欲しい想いが伝えきれずガマンを重ねてきた結果、もうどうにもならなくなって爆発するのです。このブログ記事「心のケアとの出会い」にも、我が子がそうだったと書かれていますね。幼児期なら、その想いを体で受け止めてやって、言いたい放題言わせてやる(=言葉で言えないので、体で表現させる)と、暴れる代わりに泣くという形でそのつらさを出すようになり、やがて落ち着きます。ところが、年齢があがると、ガマンのフタも泣くことへのフタも両方が強固になっているので、たとえ言い分を解って貰えたとしても、幼児のようには泣けません。また大きな子が暴れると周囲への被害も大きく、その結果、「また、やらかした」と、本人の自己否定感はますま強くなってしまいます。そこで、年長になればなるほど、いっぺんに表現させず、なるべく小出しにするように心がけます。
そこで、Aくんとも慎重に体のやりとりをしていきました。お父さんは「小さい頃に母親との接触が無くなったので、愛情不足だと思います」と話されますが、話を聴いていると、お父さんの子育ての腕はなかなかのもの。そんな話を聞きながらなんとか体のやりとりに応じていたAくんでしたが、そろそろ終わりにしようかという頃、とうとう爆発しました。お父さんと2人がかりとはいえ、大人はたちまち息があがってしまいます。こちらの体力がいつまで持つかなと不安を感じながら、私も初対面で事情がよく解らないまま、とにかく「淋しい想いを一杯したのでしょうに、よくお父さんと2人でがんばってきたね」と、それだけ伝えるのが精一杯。ところが予想に反して、Aくんはしばらくすると、おいおい泣き出したのです。気がつくと、お父さんも目を潤ませていました。
以来、「ときどき、おっ来るかなという時があるんですが、こちらが強く止めると泣くようになりました。泣いてくれれば、こんなにラクなことはありませんね。外だとちょっとみっともないですが、暴れるよりマシ。学校でも泣いたらしいです」とのこと。
周りの大人もさることながら、何よりもAくん自身がラクになったのでしょう。半年後には、めったにパニックを起こさなくなりました。Aくんはたまたま泣きやすくなりましたが、ふつうは年長になると泣けません。けれども、私の経験でいうと、できるだけ年齢に相応しいやり方で気持ちを出せるように、日頃から身近なおとながつきあって表現方法を覚えてもらうと、パニックはほとんど起こさなくなります。
過ぎてみれば、こんな時期なら、まだラクチンだったけど…
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