五には量を明かす。
四分中、大鉢は三斗を受く。小は斗半を受く。中品、知るべし。
霊芝元照『仏制比丘六物図』「鉢多羅第四物」
以上のように、「頭鉢」に相当する食器は、「大鉢」となっているのである。しかも、「四分中」と提起している通り、典拠は『四分律』に求められる。
仏言わく、「若しくは鍵瓷、小鉢、次鉢を以て受くることを聴す。鍵瓷は、小鉢に入れる。小鉢は、次鉢に入れる。次鉢は、大鉢に入れる」。
『四分律』巻39「皮革揵度之余」
以上の通り、『四分律』を見てみると、4つの大きさの異なった器を用いていたことが推定される。ただし、その内、鍵瓷は、便宜的に用いられた堅焼きの器であるらしく、かなり小さなものであった。そのため、「鉢」という名称が使われていない。よって、これを除いても、「小鉢・次鉢・大鉢」という3種類が存在しており、ここと、『六物図』の表記が対応することは明らかである。
以上のように、「律」に因む表記は「大鉢」をもって、最大の器としていることが分かったが、これが、禅宗になると表記が変わる。
即ち左手を仰いで鉢を取りて単上に安んじ、左辺に両手の頭指を以て鐼子を拼取し、小に従って次第に之を展ぶ。声を作すことを得ざれ。坐位の稍や窄まるが如し。只だ三鉢を展ぶるのみ。
『禅苑清規』巻1「赴粥飯」項
ここに「三鉢」とある通り、3つの大きさの異なった器を用いていることが分かる。また、名称が「鉢」と「鐼子」という2種類を用いていることが分かる。だが、ここだけでは、名称がまだ分からないことになる。そこで、以下の一節も見ておきたい。
頭鉢にて水を受け、次第に洗う。仍ち頭鉢の内に於いて鐼子を洗うことを得ざれ。
同上
ここから、先に挙げた「鉢」と「鐼子」について、「頭鉢」と「鐼子(2種類)」という区別が生じたことが分かるだろう。そして、いわゆる「大鉢」に相当するであろう食器を「頭鉢」と表記したのは、この『禅苑清規』が最も古いかと思われるのである。なお、この「頭鉢」の名称について、特段の説明は存在していない。
そのため、「頭」とは「第一」という意味を持つ言葉であるから、「頭鉢」とは「第一鉢」という理解をするのが妥当だと思われるのである。
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