つらつら日暮らし

今日は七夕の節句(令和6年度版)

今日は五節句の一、七夕の節句である。日本では、いわゆる織り姫と彦星の話で、中々見えない天の川に思いを馳せまするが、この節句に於いて、禅宗寺院では、毎回行事が行われてた。ただし、5月5日や9月9日などには、その活動を行っていた形跡がある道元禅師なのですが、何故か7月7日には何もやっていない。そもそも、「五節句」は江戸時代に整備されたともいう。

ところで、禅宗寺院と「七夕」の関係について、以下の一節をご覧いただきたい。

衆僧の斎粥は、常に勝心を運らし、四来を管待して、軽易すべからず。冬斎・年斎・解夏斎・結夏斎・炙茄会・端午・七夕・重九・開炉・閉炉・臘八・二月半のごとき、この如上の斎会に、もし監院力あらば自ら営弁すべし。もし力およばざる所は、即ち人を請して勾当す。
    『永平寺知事清規』


これは、当時の中国の禅宗道場で用いられていた『禅苑清規』から行事を輸入され、1年の節目の日には、監院という修行道場の経営を司る役目の僧が、自ら腕を振るって修行僧のための昼食を準備し、施さなくてはならないとされている。したがって、おそらく何らかの行持は行われていたはずだが、道元禅師の語録に残ってがいない。鎌倉時代当時の七夕はどんなことやってたのか。また、上記にはこのように書いたが、どうも単純な事態ではなかったようである。

清規に云う所の端午・七夕等の斎、仏祖の家風なりと雖も、猶お世俗の礼節を恐るる也。深山幽谷、柴戸の茅堂、誰か弁備に堪えん者や。但だ専ら供衆・安衆を営み、而も衆の過咎を見るべからず、乃ち監院の心術なるものなり。

    『永平寺知事清規』「監院」項


問題は、このような端午や七夕などの節句については、世俗の礼節であるから、余計なことなどをせずに、監院は修行者に対して、より良く修行できる環境を整えるべきだという。それが、監院の仕事とされる。しかし、同じ「監院」項に、次のような一文もある。

今、日本国は遠島の深邃なり。仏生国を去ること遥かに十一万余里を隔つ。仏滅の度より後、将に二千二百年。聖を去ること時遠し、実に悲しむべきと雖も、僧を見、法を聴くは最も慶(さいわい)なり。自己の精勤に随喜し、祖宗の恩徳に報謝す、法演の高行、もしくは演説、法遠の心術、是れ遠慮ならんや。
    同上


道元禅師は、日本とは、仏が生まれた国、時代からはるかに隔たってしまっているとされるが、しかし、仏法僧の三宝の内、僧と法とを見聞する幸いを得ることがあって、より自らの修行に励み、これまでの仏祖方への恩に報いるように励むべきだという。

それは、ただ健康を祈ったり、現世利益を祈るのではなく、仏道に於いては現世の生死を超える修行を行うことが肝心だと言える。また特に、道元禅師は監院という役寮が、「賢を尊び衆を容るべし。上に和し、下に睦まじく、同事の大衆を安存して、当に歓心を得せしむべし」という修行を行うように諭されている。ただ、叢林の管理を上の立場で行うのみならず、自ら自身を無にして修行僧が和合するように努力しなければならない。僧侶とは訳語として「和合衆」などともいうが、心を1つにして修行することが肝心である。自分だけが可愛い、或いはお互い比べて、どっちが上だ下だ等と論じることは全く無意味なことで、破和合衆となる。

俗人なほ家をもち城を守るに同心ならでは終に亡ぶと云り。況出家人は、一師にして水乳の和合せるがごとし。また六和敬の法あり。各々寮々を構へて身心を隔て、心々に学道の用心する事なかれ。一船に乗て海を渡るがごとし。心を同ふし、威儀を同ふし、互に非をあげ是をとりて、同く学道すべきなり。是仏在世より行じ来れる儀式なり。
    『正法眼蔵随聞記』巻5-9


道元禅師は、出家者には「六和敬の法」があると述べている。これは、僧侶同士が心を同じくして修行することをいう。しかし、状況として、各々寮舎を大きく構えてしまう場合があって、それでは、身心を隔ててしまうと批判しています。また、和合するといっても、馴れ合いとは違う。「互に非をあげ是をとりて」とあるように、是非をハッキリさせなくてはならない。我々は、自分で犯す罪には中々気付かない。それを、他人から、正しく戒律に従って指摘される必要がある。そうすれば、心を同じくすることが出来る。我を張るから、我と我がぶつかって、結局「和合」は馴れ合いに堕落する。そうではなく、我を張らずに、道理に従うことで、我々は和合する。よって、今年の「七夕竹飾りの短冊」には、「本気で仲良く」が良いかな。

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