2〔27〕 お金が箱の中に投げ入れられ、そのお金がチャリンと音を立てるや否や、魂が飛び立つ〔とともに煉獄を去る〕と教える人たちは、〔神の教えではなく〕人間的な教えを宣べ伝えている。
深井氏下掲同著・21頁
見てみると、この次の「3〔28〕」も、やはりお金と救いに関する話になっているのだが、当方、この連載を始める前から、上記の一節に関わる内容があったことは知っていた。要するに、魂の救済を、金銭の喜捨に直結させる考えを述べた人たちを、ルターが批判していたというのを、以前に見たことがあったのである。
もちろん、宗教を組織として運営するのであれば、金銭的収入を得た方が良いには決まっている。とはいえ、このような言い方は余りに露骨すぎる。それに、この次の条文でルターが述べるように、ルターからすれば、救済については現実に於ける教会組織が決めるのではなく、あくまでも神が決めることであって、その点の違和を「人間的な教え」という風に表現していることも理解出来よう。
ただし難しいのは、こういう風に述べると、金銭的な喜捨が一切無くても良いのか?という疑問が出てくるが、そういうわけでもあるまい。何故ならば、もしそうであるならば、ルター派のプロテスタント教会が、全世界に展開した理由が出てこない。布教伝道には、信仰を持つ人の熱心な活動と、それに呼応する信者達の喜捨が不可欠だからである。
よって、問題は喜捨の有無ではなくて、その理由や意図ということになるだろう。
【参考文献】
・マルティン・ルター著/深井智朗氏訳『宗教改革三大文書 付「九五箇条の提題」』講談社学術文庫・2017年
・L.チヴィスカ氏編『カトリック教会法典 羅和対訳』有斐閣・1962年
・菅原裕二氏著『教会法で知るカトリック・ライフ Q&A40』ドン・ボスコ新書・2014年
・ルイージ・サバレーゼ氏著/田中昇氏訳『解説・教会法―信仰を豊かに生きるために』フリープレス・2018年
・田中昇氏訳編『教会法から見直すカトリック生活』教友社・2019年
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