入堂の法、合掌を面前に擎げて入る。〈中略〉前門より入は、上下間の者は、並びに南頬より入る。先づ左足を挙げて入り、次に右足を入れて行く。
『赴粥飯法』
いや、ちょっと待てよ。ここでは、合掌して前門を通るのだが、その後、問訊するとは書かれていない。なお、『行持軌範』になると以下のようになる。
諸寮より入堂する者は、前門の南頬より先づ左足を挙げて入り、聖僧に揖し(叉手低頭)(以下略)
『昭和改訂曹洞宗行持軌範』「第一暁天坐禅」項
ここで、「叉手低頭」となっている。じゃぁ、拙僧が記憶していたのはこの方法か。ところが、後の『行持軌範』を見ていくと、「昭和訂補」「昭和修訂(現行)」本では「叉手低頭」が「合掌低頭」になっているのである。だとすると、「昭和改訂」本が「叉手低頭」となった理由が気になる。
明治期の『洞上行持軌範』は以下の通りであった。
諸寮より入堂する衆は前門の南頬に倚り先づ左足を入る斜めに聖僧に問訊して(以下略)
『明治校訂洞上行持軌範』巻上「後夜坐禅」項
まぁ、問訊は普通、合掌低頭だろうから、その通りだと思うのだが、合わせて明治末期に刊行された来馬琢道老師『禅門宝鑑』(鴻盟社・明治43年)も見ると、上記内容とほぼ同じであった。だとすると、「昭和改訂」本の「叉手低頭」の典拠が分からない。江戸時代の清規だろうか?とはいえ、発見出来ず。
なので、結論としては、今は入堂してから聖僧さまへ合掌低頭し、坐位に就くこととなる。そちらが正しいということになるのだろう。拙僧も、今後は気を付けておきたい。
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