つらつら日暮らし

2月の和名「如月」について

2月は、どこか釈尊涅槃会について考える月となっており、そのため『仏垂般涅槃略説教誡経(『遺教経』)』などを読むことが多い拙ブログではあるが、今日はまだ、それにも早いので、2月の和名である「如月」について考えてみたい。しかし、そうなると毎回お世話になる、三田村鳶魚先生の本に頼るしかないかなぁ。

◎二月 和名衣更着といふ、〔奥義抄〕此月余寒はげしくて、さらにきぬをきれば、きぬさらぎといふを略せり。
    三田村鳶魚編『江戸年中行事』中公文庫、35頁


先日も某テレビ番組で、「如月」の由来を明らかにしていたが、おそらくもっとも良く知られているのが、この「衣更着」だと思われる。なお、「如月」表記は中国由来とされる。その読みに、「きさらぎ」を充てたわけである。ところで、この見解について、強く反対した事例がある。

○二月を伎佐良芸月と言は久佐伎波里月なり、草木の芽を張出すは二月なり、其久佐伎のみ営の約めは伎なれば伎とのみもいふべく、又は草は畧くともすべし、佐良と波里は韻通へり【後世衣更着の意といふは不意に思ひていへる浅ら心の説なり】
    賀茂真淵『語意考』


ということで、以上が国学者の賀茂真淵(1697~1769)の説である。もう、割注の通りで、「衣更着」説については、「浅ら心の説」と、考えが甘いと指摘している。そこで、本人の説としては、「伎佐良芸月(これで「きさらぎつき」と読ませている)」というのは、実は「久佐伎波里月(これで「くさきはりつき」と読ませている)」だという。要するに、国学者なので、万葉仮名でもって表現される事態を想定した見解なのだが、これを素直に取ると、「衣更着」とは正反対のような印象がある。

つまり、賀茂真淵は「草木の芽が張り出すのが二月」だから、「くさきはりつき」だとし、これが「きさらぎ」になったとしているのである。「衣更着」だと余寒の関係で厚着するイメージだが、「くさきはりつき」だとむしろ、寒さの中に僅かな暖かさがある印象となる。よって、正反対なのである。

それは分かったが、賀茂真淵の説について、そもそも読み方が違うのでは?と思えるが、それについては、「草木」を意味する「久佐伎」について、実際の内容を約めて表現すれば「伎」だけであり、「草」は省いても良いという。結局、1月に芽吹くのは樹木ということか。

それでも、「きはりつき」になってしまい、まだ音として遠い。そう思ったら、賀茂真淵は「佐良(さら)と波里(はり)は韻通」だという・・・???そうなのか?これは何、万葉仮名か何かの法則なのだろうか?当方には全く理解出来なかった。いや、これは、やはり国学の見解も色々と勉強しないと、だな。

で、結果として、「伎佐良月(きさらつき)」が残ることになるのだが、あれ?「芸」の字どこ行った?「芸」は「園芸」の言葉の通り、「植える」の意味があり、或いは中国では高度な教養としての「六芸」などが整備され「わざ」の意味になったと言うが、その辺がどう関わるのかが全く分からない。それに、草木が芽吹く感じって、「弥いよ生える」の意味を持つ「弥生」に相応しい感じもするが、それはどうなんだろう。

そう思うと、賀茂真淵は説明し切れていないのではないか?そう思っていたら、別に以下のようにも書いていた。

○二月を伎佐良芸といふは、木草発月てふ事なり、伎佐は、伎久佐の久を略き、良芸と波利は韻通へり【芸の濁と利と通ふは、良利留礼呂は本半濁の音なればなり】こは弥生にむかへし名なり〈是を衣更着といふは、歌のいひなしにこそあれ、此月は本名とおもふは、本言と歌とは別なるもあるをおもはぬなり〉
    賀茂真淵『万葉考別記』巻3


文句が言いたいわけではないが、「衣更着」を批判したいばかりに無理矢理に「韻通」とかを使って説明している感じがしてきた。だいたい、「弥生にむかへし」とか書いているので、3月に向かって2月の間に草木が芽吹くという説明をしているのだと思うが、その弥生から遡って、「木草発月(これで「きくさはりつき」と読ませている)」があって、その意味を持ったまま「きさらぎ」になったと説明しているのだが、何だろう?「伎佐良芸」の表現がある『万葉集』の和歌でもあるのかな?

・・・発見できなかったので、今日の記事はここまでにしとくかな。

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