つらつら日暮らし

禅林の知事の人数は?

こういう文章がある。

知事、古規には只だ監院・維那・典座・直歳・庫頭の五員を列する而已。
    『勅修百丈清規』巻4「両序進退」項


これを見ると、知事については、古規には5つの役職が列せられていたとある。それで気になるのが、ここでいう「古規」についてである。それで、『勅規』には直接関係ないが、道元禅師は『永平清規』の中で、知事の数について言及され、例えば、「いわゆる知事とは、都寺・監寺・副司・維那・典座・直歳の有るなり」(『典座教訓』)とされる一方で、「古時は監寺のみ。近日、都寺と称するは即ち監寺なり。副寺と称するも亦た監寺なり。近代、寺院繁務なり、仍って両三の監寺を請するなり」(『知事清規』)とされたのである。

よって、道元禅師の場合、「四知事」が古く、そこに寺院の運営が忙しいので2人加わって、「六知事」という数になったと認識されていたものと思う。しかし、そうなると、『勅規』と微妙に合わない。それで、『勅規』が参照した「古規」は何か?と思って、ちょっとだけ調べてみた。すると、面白いことが分かった。

まず、参照された「古規」だが、まず、『禅苑清規』を指すといって良いのだろうと思う。だが、これは道元禅師も参照されていて、おそらく、普通に見れば、「四知事」であったはずだ。何故ならば、『禅苑清規』の第3巻は、知事や頭首に関する事柄が記載されるけれども、項目は「監院・維那・典座・直歳」とあって、ここに「下知事」が続く。「下知事」というのは、知事を辞する儀礼のことだと思われるため、結局「四知事」だ。

で、結局、「庫頭」を入れた五員は何か?と思っていたら、次の一節があった。

衆僧を表儀するが故に首座有り。衆僧を荷負するが故に監院有り。衆僧を調和するが故に維那有り。衆僧を供養するが故に典座有り。衆僧の作務を為すが故に直歳有り。衆僧の出納を為すが故に庫頭有り。衆僧の典翰墨を主る為の故に書状有り。衆僧の聖教を守護する為の故に蔵主有り。
    『禅苑清規』巻8「亀鏡文」


並びからいえば、ここが参照されたのだと思う。でも、ここから、「五員」になるのだろうか?ただの数え間違いじゃないのか?ただ、内容的には、「庫頭」は、今の我々が言うところの「副司」に当たると思われるため、純粋に間違いともいえないのかな?とは思う。個人的には、「○頭」というような役職名は、知事というよりも「頭首」や、「小頭首」というような役職に思えてしまうのではあるが・・・

ということで、出典が分かって良かった。それに、現状、何故か「六知事・六頭首」というのが定番のようになってしまっているが、それは根拠の無い話だということについては、確認されていて然るべきだと思う。それは多分、法要に於ける本堂・大間内の畳の数から要請された数だと思われるのだ。

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