お彼岸詣り
虫の音ほそぼそ
森の道
千草の中でないてます
萩や桔梗や女郎花
どの花降りましょ
お母さま
今日はお彼岸
寺詣り
向ふのお寺の
門の上
赤いお旗がゆれてます
森の細道
うれしいな
花を肩にして詣りましょ
西川林之助『お話と童謡』(文潮社出版部、昭和3年[1928])
著者の西川林之助氏だけれども、主として戦前に活躍をした民謡作家であった。合わせて、童話や童謡なども制作していた人であり、本書を見ると、仏教を題材にしたお話なども見られる。まぁ、仏教が子供向けの話になる、というのは、或る意味古典的な事柄で、それ自体は珍しいことでは無い。
この童謡についても、内容は秋の季節を虫の音と色とりどりの花で思わせつつ、お彼岸でお寺詣りをする時に、どの花を折って持って行こうか、という素朴な内容である。禅の公案だと、花を悟りに見立てて、「どの花でも良い」とかいう難しい話になるのだが、これは童謡、そこまで深読みする必要もあるまい。
是非、これに倣って、皆さまもお寺詣りを欠かさず行っていただきたい。
ところで、拙僧が気になったのが、「向ふのお寺の 門の上 赤いお旗がゆれてます」という下りである。お寺にある「赤いお旗」とは一体何を指しているのだろうか?現代的な視点では、例の五色(元々は六色であったし、三色の場合もある)の「仏旗」を掲揚する場合が多いように思う。しかし、色々と見ていくと、日本で現在の仏旗が採用されたのは戦後の1954年らしい(永平寺で行われた、日本仏教徒会議でのこと)。
そうなると、西川氏の童謡が作られた時代、日本の仏教寺院では仏旗を採用していなかったと思われるし、赤いお旗では、元々仏旗に該当しない。さて、これは何だ?戦前の日本だと、お寺に日本国旗(日の丸)が掲揚されることは一般的で、拙寺は先住が公務員をしていた関係で、普通に掲揚していたけれども、それも「赤いお旗」に該当しない。
まさかの「赤旗」も、戦前の日本では無理だろう。
で考えが一周した時、思い出したのが、いわゆる「幡」。拙寺にはこれを飾る習慣が無いから忘れていたけど、当該寺院で祀る仏・菩薩等の名前を書いて、門の周辺や参道に建てるアレである。一例として、秋葉三尺坊の参道。
多分、この西川氏が描いたお寺も、この類いの幡があったのだろう。それで納得をした。
#仏教
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