日本語で「毒づく」!
モンテローザの山頂に続く「ルンゼ」に到着した。十数パーティーいたが、ここまで到着したのは私たちと、フランス人ガイドのパーティーと、ポーランドのTV隊だけだった。小屋からここまで、六時間半かかった。モンテローザ登山の上りのタイムリミットは六時間。タイムリミットを超えた。フランス人ガイドパーティーは、下山にかかった。私も「クリス」に言った。『登りのタイムリミットを超えたので、契約通り登頂はやめて下山する。』。彼も納得した。ポーランドのTV隊は山頂までのロケが仕事であり、山頂からはヘリで下山するので、登山を続行していった。
またまた事件が起こった。最初は下山指示に素直に従っていた「クリス」であったが、段々と様子がおかしくなった。不平・不満が言葉や態度に現れ始めた。どうやら、ポーランドTV隊の美人リポーターに「首ったけ」になったらしい。同行出来なかった無念が、下山が進むに連れより強くなるらしい。『このニューヨーク野郎、盛りが付いた。』と、私は頭の中で毒づいた。でも、淡々と安全地帯までクリスをガイドした。装備を外しザックにしまった。クリスの態度の悪さに切れた。彼に向かい、日本語で毒づいた。『お前は、最低の客だよ。雪の状態がよくても、お前みたいなヘロヘロ野郎にこの山は上れない。』『でも、最初に私が提案した通り、明日登山を決行すれば、雪が安定していて登れる可能性があった。お前がどうしても今日登ると言うから、特別サービスで今日登山を決行した。なのにその態度は無いだろう。』
クリスは萎れた。反省したみたいだ。因みにクリスは日本語を全く知らない。小屋でビールを飲み、ツェルマットに下った。