激しい雨が降っていますね。こんな秋の日には、怖ろしい事件が起きそうな予感がします。
もう三十年も前になりますか、パリで日本人留学生がオランダ人の女子大生を殺害のうえ肉を食らう、という「羊たちの沈黙」のような事件がありました。犯人の佐川一政はフランスの裁判で心神喪失が認められ、無罪となって日本に帰ってきました。
そして書き上げたのが、「霧の中」です。事件のことを、グロテスクなまでに、細々と描写しています。
なぜこんな文章が書ける人が心神喪失なんだ、と中学生ながら不思議に思った記憶があります。そのうえ、カニバリズムの大家を自称して、様々な評論活動を行っています。判決は確定していますから、無罪である以上、法律的に何の問題もないのですが、遺族の感情を考えると、いやな気持ちになります。
いやな気持ちになりたいときには、お勧めの一冊です。
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霧の中 |
佐川 一政 | |
彩流社 |