我、その時を待ちわびたり。
時満つれば、その時が来たらむは必至なればなり。
我が一日千秋の思いで待ちたるは、現世の終末に他ならず。
義務たる教育を受けし折、日輪はやがて牙をむき、我らの住みたる世界を飲み込み、生きとし生けるものは滅するが必定なりと教わりし。
そを知りたる日の幸いは、言の葉にならず。
ただ我、夢見の心地して、如何にして日を過ごしたか定かならず。
しかれども、我が存命のうちにその時が来たらむべくもなきことを知りたり。
日輪の時は悠久にして、我らの時はあまりにも短かければ、日輪の怒り爆発すを待つは、釈迦の説く劫にも等しき時が経るを待ちたる他なし。
我が嘆き筆舌に尽くし難し。
嘆き、にわかに怒りに変じ、我が怒髪は天を突く。
ならば取るべき道は唯一つ。
願いを成さんに、我が力と謀をもって、生きとし生けるものに引導を渡すべからず。
これ、我が宿願にして、テロルに深く共鳴したる所以なり。
我、而していわゆるテロリストと呼ばれたり。
しかれども我に思想信条のあるべきか。
ただ破壊の王たるを願うのみ。
砂漠の国に出向きて破壊を為し、駅舎空港、人の集まりたる場所に出向きて火薬を揮う。
これほどの快あるべからず。
我陶然として殺戮を繰り返せば、ついには世にお尋ね者と知られ、首に懸賞かけられたり。
それもまた、愉快ならずや。
破壊殺戮の限りを尽くし、日を送れば、我が加虐の快、限りなし。
知らず、いつの日か宿願を忘れ、ただ快のみを求めたり。
これ我が精神の堕落と言わずして何をか言わむ。
ついに我、捕縛の憂き目にあいたり。
我、御用の役人に対するに、魔王のごとき傲岸不遜の態度を貫きたり。
しょせんこの世は仮の宿。
いつ何どき斬首の河原に引きづられようと、我の嘆くところに非ず。
破壊殺戮に飽いた頃なれば、次いで我が殺戮せしめらるもまた一興。
しかれども役人、我を崇拝するあまたのテロリストの復讐を怖れたか、斬首の罪一等を減じ、終身禁固を命ず。
我大いに不満なり。
斬首せしめよと迫りたるが、叶わず。
ついに我、我がもっとも忌み嫌う退屈に落ち込みたり。
我、破壊の魔王たらむと志した所以のものは、退屈を嫌い、巨大スペクタクルを求めたるがためなり。
その志が我をして退屈の淵に沈めたるか。
我、独り監獄で、退屈のあまり狂い死にたるを渇望す。
狂い死にこそ、我に似合いの最期なればなり。