江戸から大正時代くらいまで、薮入りと呼ばれる日が年に2回あったそうですね。
1月16日と7月16日。
この日は奉公人が休みをもらい、実家に帰ることが許されたそうです。
奉公先からきれいな着物を借り、小遣いを貰って実家に堂々と帰れるうれしい日だったようです。
実家が遠くて帰れない奉公人は、芝居を観に行ったりして薮入りを楽しんだようです。
大正時代にはこの日は活動写真が大混雑したとか。
やぶ入りの かくしかねたる 白髪哉
小林一茶の句です。
なんだか苦労がにじみ出ているようで、切ないばかりです。
薮入の 田舎の月の 明るさよ
高浜虚子の句です。
なんとも解放感があって良いですが、それも一日かぎりのことと思うと、現代を生きる私たちにはやっぱり切ない。
薮入や 母にいはねば ならぬこと
これも同じ俳人の手によるものですが、こちらはなんだか意味深ですねぇ。
母親に言わなければいけないこととは何でしょう。
良いことか、悪いことか。
句の印象は悪いことを暗示させます。
そんな年の薮入りは目出度さも中ぐらいといったところでしょうか。
それにしても休みが年に2回とは切ないですねぇ。
しかも1日だけ。
遠方では帰れないし、半端に近くても往復の時間だけで大方過ぎてしまったことでしょう。
昔の労働環境は過酷だったのですねぇ。
それが今では週休2日が当たり前。
公立学校が完全週休2日になってからでも、10年以上がたちます。
そしてわが国は世界でもびっくりされるくらい祝日が多いお国柄。
それは何もわが国民が休みたがりというよりも、年休の取得率が低いため、みんなで休めば怖くない、とばかりに祝日を増やしていったというのが実情のようです。
私は毎年年休の取得率は100%です。
12月になって年休が何日も残っていると、あわてて休みます。
少々仕事に支障をきたしても知ったことではありません。
私から見ると、年休を余らすなんて、給与の一部を返還するようなものだと感じます。
今一番休みが多いのは海の家の経営者だと聞いたことがあります。
夏のほんの一か月足らずの間に一千万円くらいを稼ぎ、あとの11カ月は遊んで暮らすんだとか。
本当ですかねぇ。
本当だったら、海の家の経営者の家にお婿に行けば良かったと、今さらながら悔やまれます。
古人の苦労を思うと、私たちは食うに困らないし、休みは多いし、極楽のような世界を生きているんでしょうか。
あんまりそんな気持ちはしませんが。
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