弟はあの夏の日以来
15年以上ずっと精神病院の閉鎖病棟に入院したままだ
初めのうちは
「兄ちゃん...家に帰りたいよ...帰ろうよ...」
と面会の度に言っていた
弟の声を聞くと、涙がこぼれてしまうボクがいた
入院半年後ぐらいに
看護師さんを殴ったと連絡を受けた
その後
薬が強くなったのか
劇的に大人しくなった
最近は、口が動かなくなってきている
弟の声が小さすぎて聞こえないくらいだ
幻覚幻聴のため落ち着きが無いのは相変わらずで
面会室に3分もいることが出来ずに出て行ってしまう
お前の声が聞きたい
母親は他界した
父親は高齢だ
兄は面会に行こうとしない
ボクは数カ月に1度、会いに行っている
今でもかわいい弟だ
弟は妄想に支配されたまま
精神病院で生涯を閉じるのだろうか...
彼を看取るまで
ボクは生き続けなければならない
うつ病になったボクの
「死にたい」
という気持ちを抑止しているのは
弟がいてくれるから...かも知れない