楽園の薔薇
13.ライガールの薔薇
<3>
楽園での移動は、ほぼ馬車を使う。
そのため、ライガールに向かう道は段差などが多く、ひどいときは舌をかむ人がいるとか。
そんな道でも、イスフィールはなぜか眠くなり始めていた。
レイアースに調査をお願いしてから、バタバタと忙しい出発。
もう外は暗い。
さすがに疲れたのかもしれない。
「薔薇…」
ふと、何を思ったのかフレイルが呟いた。
そして、興味深そうな視線をイスフィールにぶつけてくる。
イスフィールは『薔薇』という単語と縁がある(?)から、わずかにうろたえていた。
眠気?そんなものはとっくに覚めた。
「ねぇ、イザベラ。」
「ぅわっと…はい?」
段差で車体が少し上下に動く。
フレイルは気にせずに続けた。
「君の名前つけた人って、兄上さん?」
「…えぇ、まぁ。」
イザベラという名は、レイアースが半ばヤケになった感じで付けた名だ。
別にその音は嫌いじゃなかったから、いいっていたのだけど。
フレイル目線から考えると、「兄上さん」がつけたのかもしれない。
「それが、何か?」
「…ん、いや、別にね。兄上さんは、薔薇姫さんと知り合いなのかい?」
「…!?」
意外な質問に、イスフィールは馬車の席から転げ落ちるところだった。
何故、何故そんな質問を!?
「な、何を言うんですか。兄がそんな方と知り合いなわけないじゃないですか!」
面白いぐらいうろたえるイスフィールを見て、フレイルはどこか満足そうに笑う。
「いや、違うんだよ。イザベラという音はライガールで薔薇を意味するんだ。なんか関係あるのかなーと思ってね。」
意外なフレイルの言葉に、イスフィールは目をみはった。
(まさか、レイアース…。私にどこまでも責任感を持たせるつもり…?)
イスフィールは思わず『レイアース人でなし仮説』をたてた。
あり得ないと打ち消せばいいのだが、あり得ると考えてしまう自分がいたりして。
(…レイアースに後で謝らないとなぁ…)
聞かれているわけでもないのに謝ろうとする彼女は、すぐに眠りについてしまった。
覚めたと思っていた眠気は、また戻ってきていた。
「レイアース?どうした?」
むずがゆくなった鼻をこするレイアースを見て、セイレーンが不思議そうに問うた。
結局イスフィールを追いかけてきた2人である。
「…さては、噂してるな?イスフィールのやつ。」
迷惑そうな顔をしつつ、それが嬉しそうに見えてしまう。
そもそも、噂しているのはイスフィールじゃないかもしれないのに。
うちに留守番しているマリーナ達かもしれないのに。
セイレーンは悩ましげに頭を抱えた。
双子だからって、想い人まで一緒にならなくてもいいのに。
written by ふーちん
13.ライガールの薔薇
<3>
楽園での移動は、ほぼ馬車を使う。
そのため、ライガールに向かう道は段差などが多く、ひどいときは舌をかむ人がいるとか。
そんな道でも、イスフィールはなぜか眠くなり始めていた。
レイアースに調査をお願いしてから、バタバタと忙しい出発。
もう外は暗い。
さすがに疲れたのかもしれない。
「薔薇…」
ふと、何を思ったのかフレイルが呟いた。
そして、興味深そうな視線をイスフィールにぶつけてくる。
イスフィールは『薔薇』という単語と縁がある(?)から、わずかにうろたえていた。
眠気?そんなものはとっくに覚めた。
「ねぇ、イザベラ。」
「ぅわっと…はい?」
段差で車体が少し上下に動く。
フレイルは気にせずに続けた。
「君の名前つけた人って、兄上さん?」
「…えぇ、まぁ。」
イザベラという名は、レイアースが半ばヤケになった感じで付けた名だ。
別にその音は嫌いじゃなかったから、いいっていたのだけど。
フレイル目線から考えると、「兄上さん」がつけたのかもしれない。
「それが、何か?」
「…ん、いや、別にね。兄上さんは、薔薇姫さんと知り合いなのかい?」
「…!?」
意外な質問に、イスフィールは馬車の席から転げ落ちるところだった。
何故、何故そんな質問を!?
「な、何を言うんですか。兄がそんな方と知り合いなわけないじゃないですか!」
面白いぐらいうろたえるイスフィールを見て、フレイルはどこか満足そうに笑う。
「いや、違うんだよ。イザベラという音はライガールで薔薇を意味するんだ。なんか関係あるのかなーと思ってね。」
意外なフレイルの言葉に、イスフィールは目をみはった。
(まさか、レイアース…。私にどこまでも責任感を持たせるつもり…?)
イスフィールは思わず『レイアース人でなし仮説』をたてた。
あり得ないと打ち消せばいいのだが、あり得ると考えてしまう自分がいたりして。
(…レイアースに後で謝らないとなぁ…)
聞かれているわけでもないのに謝ろうとする彼女は、すぐに眠りについてしまった。
覚めたと思っていた眠気は、また戻ってきていた。
「レイアース?どうした?」
むずがゆくなった鼻をこするレイアースを見て、セイレーンが不思議そうに問うた。
結局イスフィールを追いかけてきた2人である。
「…さては、噂してるな?イスフィールのやつ。」
迷惑そうな顔をしつつ、それが嬉しそうに見えてしまう。
そもそも、噂しているのはイスフィールじゃないかもしれないのに。
うちに留守番しているマリーナ達かもしれないのに。
セイレーンは悩ましげに頭を抱えた。
双子だからって、想い人まで一緒にならなくてもいいのに。
written by ふーちん