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冬の駅から#10

2021年05月03日 | 焼き芋みたいなショートエッセイ
   焼き芋みたいな
   エッセイ・シリーズ  (47)

   冬の駅から #10

    その後、僕とデンスケは同じ高校に進学し早速バスケット部に入部した。
   二人は強豪中学出身という期待もあったのか、早くから度々試合に出場した。
   バスケ部は強くも弱くもなく、毎年地区大会などでは3回戦まで勝ち進めば
   上出来という風だった。

 ある日、部活の帰り道でデンスケが
「ウチらだけのさ、フォーメーション作ってみない?」と僕に言った。
「どんな?」
「なんかさ、画期的なやつ」
「カッキテキなやつかぁ」
「バレーボールのAクイックとかBクイックとかあるっしょ。
 あんなふうなやつをさ、いくつか決めておくとかさ」
「なーるへそ」

さっそく僕らは、あれこれと様々な攻めのフォーメーションを考案しては、
先輩達に提案し練習に取り入れてもらったりした。
僕もデンスケもチームの中では背が高い方じゃなかったから
ゴール下の180cm越えの大きな選手達をいかに効果的に使うか、
トップと45度の僕らが如何にスピーディに切り込んで行けるか、
セオリー破りの攻めのパターンを考えるのは実に楽しかった。

その頃は、先輩達に遠慮しながらも、僕らがチームを引っ張って行くんだという
熱があったのだと思う。中学時代、優勝を争う事の楽しさや面白さを知った僕らは、
高校でもそのレベルまで行きたかったのだ。
そんな思いもあって、練習時に
ちょくちょく
意見を言うので、
一部の先輩達からは生意気な1年だと言われた事もあったが、
それでも少しずつ
気心が知れて形が見えてくると、チームは次第に活気づいて行ったし、
先輩達とも冗談を言い合える仲になっていた。
「おい、新しいフォーメーション出来たかあ?」
「あ、今考え中です」
「そっか。次は空中でパスし合うってのはどうだ?」
「あ、それはムリっしょ」
「出来るだろ」
「ムリっしょ」
「出来るって」
「ムリっしょ!」
「そだな。ぷはは」

チームには愉快なキャラクターの人というのが必ず一人、二人いるもので、
僕はそんな冗談の言える先輩とはどんどん仲良くなって行ったし、
色々と相談相手にもなってくれていた。


               


やがて秋の大会が始まると、それまでの練習成果が目に見えて現れた。

特にデンスケと僕の1年生コンビは、周りの先輩達にガードされながら、
失敗も多かったが伸び伸びとプレーさせてもらえた。
試合中、敵に挟まれると僕はまずデンスケの姿を探した。
デンスケはいつも、いて欲しい場所にいて、僕からのパスを待ち構えている。
僕は相手の膝下の隙間を狙って、時には後ろ向きのフェイントで、
ほぼ感だが安心してパスを出した。ボールは大抵狙い通りにデンスケの手に収まった。
あ、うんの呼吸だ。逆にデンスケが挟まれると、僕がすかさず
裏側からフォローに入り
シュートを決めた。


普段から動きの流れを呑み込んでいる二人は、本当に息の合ったコンビだった。
相手チームの監督が業を煮やしたようにタイムを掛け、
「あの二人を止めろよ!」と選手達に怒鳴っていた時は、デンスケと二人で
むははと顔を見合わせたものだ。

試合の後半に入ると、徹底的にマークされ始めた僕らが逆にオトリになり、
先輩達のシュートアシストに徹した一度良いリズムが出来ると、
チームは勢いの流れに乗る。不思議だが本当にそうだ。
先輩達も見違えるように果敢に攻め込んでシュートを決めては、
「おい1年、どうだ!」と言わんばかりの誇らしげな笑顔を僕らに見せた。
そうしたチームの雰囲気が僕はたまらなく好きだった。       



                 ー続ー                     


          星空Cafe、それじゃまた。
            皆さん、お元気で!

  

              







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