人生がぎゅっと詰まった一日

　　　　焼き芋みたいな
　　　　エッセイ・シリーズ  (39)

　　　「人生がぎゅっと詰まった日 」


人生がぎゅっと詰まったような一日って、あるんだな。
今日がそんな日だったから。

先日ガンで亡くなった香代さんの家に、お焼香をしに行った。
もう２０年来の家族ぐるみの付き合いだった。
昔から朗らかで明るくて世話好きな女性だった。
我が家の子供達も小さい頃からよく可愛がってくれていた。

飾られてあった遺影は満面の笑みの香代さんで、
見ていると和やかな気持ちにさえなる、香代さんらしい素敵な写真だった。
一人残されたご主人。食事はどうされているのか訊ねたら、
「うん、とりあえず今は、ワタミの宅配頼んでるよ」と笑った。
いつも温厚な人柄だから、反って少し心配になった。

お焼香を済ませての帰り際、
ご主人が僕の所に半透明のガムテープを持って来た。
「これと同じやつ、また頼んで良いかな？」
それは以前、良いガムテープがないかなと訊かれて、
僕がホームセンターで買って届けたやつだった。
「また買って届けますよ」と答えると、嬉しそうに「うん。頼むよ」と。
僕らが帰るのが名残惜しそうだった。
こんな事くらいで何か励みになるなら、いつでも・・。

帰る途中、「フェレット という小動物を姉が飼い始めたらしいから見に行こうよ」
と妻が言った。生後三カ月のその小動物は、まさに生命力旺盛にリビング中をせわし
なく嗅ぎ回っていた。一人暮らしの義姉に小さな話し相手が出来ていた。

穏やかな冬の日差しと、少し風が強かったかな。
義姉の家を出ると、小学校のグラウンド脇に桜の木があった。
ついさっき開花したらしい、桜のつぼみの小さな花を妻がみつけた。





 　　　　　　　　　　星空Cafe、それじゃまた。
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