焼き芋みたいな
エッセイ・シリーズ⑥
『羽田空港』
「な!聖子ちゃんに会ったか?」
「会ってないよ」
「誰か芸能人見たか?」
「見てないって」
「えっ!でも結構歩いてるんだろ?」
東京では芸能人が街中を普通に歩いてる・・
そんな事が田舎では憧れ半分で語られていた時代。
帰省すると大抵の友人から、誰か芸能人を見たか必ず訊かれた。
あの頃、何だか平和で、純心で素朴で、夢があって良かったなあ。笑
その日、東京の空は珍しいほどの快晴だった。
僕はバイト先の社長から借りた400ccのバイクを駆って、
環状七号線を西へ下った。
30分程も走るといきなり東京湾に出る。
それを右折した先に羽田空港が見えて来る。
東京の大学に通い始めた頃の僕は、
時々そうやって羽田空港までふらりとバイクを走らせた。
空港のロビー、
目の前で繰り返される飛行機の離着陸の様子を眺めながら、
「あれは今から何処へ向かうんだろ。千歳かな。
これは何処から飛んで来たんだろ。千歳かな。
あっ、今滑走し始めたJAL機、あれは千歳へ行くかもな。
あれに乗れば一時間ちょっとで北海道かぁ。今頃札幌はどんな感じだろか。
今からちょこっと帰って皆と会いたいなあ。けどそんな飛行機代も無いしなぁ・・。
高校時代の親しい友人のほとんどは札幌の大学に進んだから、
時々皆で集まっているらしい。俺も札幌にすれば良かったなあ。
東京は都会だけど何だかあちこち汚いし、
芸能人が街を歩いてるなんて嘘じゃないか!見たことないぞ。笑
向学心に燃えて来たのに、大学の授業はしょっちゅう休講だし、
構内の掲示板で初めて休講を知らされても、そのあと空いた時間どう潰すんだよ。
俺は学びたいんだっ!ったくな。(むはは)
そんな事を思いながら、時々僕は、
持て余した時間を空港でぼんやりと過ごしてたっけ。(何のこっちゃ)
星空Cafe、それじゃまた。
皆さん、お元気で!
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