陸、陽菜、君たちは、憲法制定権力っていう言葉を聞いたことがあるかい。何か難しそうだけど、とっても格好いい言葉なんだ。簡単に言えば、憲法を決める力ということだけど、そう言い換えても簡単ではないかも知れないね。
憲法って何だろう。憲法を読んだことがあるかな。憲法に従って、国会議員が選ばれ、法律を定める。その法律を政府が実行する。もし、国会の法律の決め方や、政府の実行の仕方が間違っていたら憲法に従って、裁判所が間違いだと指摘する…。
一度憲法を読んでごらん。結局、憲法っていうのは、その国に住む人について国(国会、政府、裁判所)が何かをしようとしたときに、国が守らなければならないルールなんだ。憲法は、私たちが守るのではなく、国が守るものなんだ。
憲法制定権力とは、憲法、すなわち国に守らせるルールを決める力のことだ。この力は私たち市民が持っていなければならない。なぜなら、国がその力を持ったら、自分にとって都合のいいルールを決めることになるからだ。これは分かるでしょう。もし、夏休みの時間の過ごし方を君たちで自由に決めていいよって言ったら、君たちは、一日中遊び時間にするだろう。それがよくないことは分かるよね。よくないことだと分かっていても、自分で自分のことを決めようとしたら、どうしても甘くなってしまうんだよね。憲法制定権力も同じこと、私たちはその力を絶対に手放してはいけない。
ところで、陸、陽菜は、いま、憲法を変えようという動きがあるのを知っているかな。安倍首相が自分の任期中に憲法を変えたいと張り切っている。その内容については、今度ゆっくり話すとして、憲法を変える力も当然、憲法制定権力の一つとして、私たちに与えられている。憲法96条には次のように書いてある。
【この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする】
つまり、国民の過半数が賛成して初めて憲法を変えることができるんだ。
ところが、国(国会、政府)は、この憲法を変える私たちの力を弱めようとしている。
過半数っていうのがポイントなんだ。陸、陽菜、ここでいう「国民の過半数」ってどういうイメージだろう。何歳から憲法を変えることについて投票することができるかという点では意見がいろいろあるけれど、仮に20歳以上だとすると、日本では1億人くらいの人に投票する権利があることとなる。まぁ、全員が投票するわけではないから、過半数は、5000万人以上っていうイメージではないだろう。でも、たとえば、3人だけ投票してそのうちの2人が賛成したから過半数だっていうことで憲法を変えるのもおかしな話だよね。
たとえば、君のクラスの学級委員が好きな給食をたくさん食べようとして、「給食をお代わりする順番を決める人は学級委員とする」というルールを決めようとしたとするね。このルールを決めるのはちょっと大変そうだったが、偶然、ある昼休みに学校にスマップが来ることとなった。学級委員はその日の朝のHRで、「今日の昼休みに臨時の学級会を開いて給食のお代わりする人を決めます。食べ方がゆっくりの人もいるし、早く食べると胃にも悪いから、ルールをつくっておいた方がいいでしょう」と説明した。でも、ほとんどの生徒はスマップのことで頭がいっぱいで、学級委員の説明がどういう意味かをよく理解することが出来ませんでした。「平等にしたり、体に悪いことをなくすのなら、いいことだな。昼休みは学級会には出ないでスマップを見に行こう」、みんなはこう考えたんだ。
昼休み、みんなはスマップを見に運動場へ出かけた。クラスには、学級委員とその友達が3人と陸、陽菜、君たちが残ったんだ。「では、この案に賛成の人は手を挙げて下さい」。陸はこう質問するんだ。「ちょっと待って。学級委員はどういうルールでお代わりの順番を決めるんですか」。陽菜は「学級委員だけが決めることが出来るのはおかしいんじゃないですか」と続いた。でも、それに対し、学級委員の友達はいう。「学級委員が信じられないのか。みんなのために配るんだ。順番を決めるのも大変なんだ。それを自分でしてくれるっていうんだから任せよう」…。この議論は長くは続かない。というのも…「では、昼休みも終わるので、多数決します。この案に賛成の人は手を挙げて下さい」…こうして、3人が賛成したことで、次の日から、学級委員と友人は、美味しい給食のときはお代わりを自分たちで好きなようにできるようなったとさ。そして、陸、陽菜、君たちは逆らったといって、お代わりを絶対にもらえないんだ。
極端な話かもしれないけど、こういうことが起きないようにしておく方がよいよね。だから、外国では、たくさんの国で、最低投票率などが決められているんだ。国会の事務局の調査では、最低投票を何らかの形で決めている国は、パラグアイ、韓国、スロバキア、ポーランド、ロシア、ウルグアイ、コロンビア、ウガンダ、デンマーク、ペルー、キューバ(以下は、「過半数」を有権者の2分の1以上とする)、セルビア、ベラルーシ、ラトビアの14カ国だ。これに対し、最低投票を決めていない国は、アイルランド、イタリア、オーストリア、スペイン、スイス、フランスだけだ(トルコ、フィリピンは不明)。しかも、これらのうち、直接民主制という特殊な体制をとっているスイスを除くと、選挙のときの投票率は日本(52%)よりも高い。アイルランド67%、イタリア87%、オーストリア76%、スペイン81%、フランス60%という具合だ(ここ←参照)。
また、イギリスでも、40%ルールと言って、有権者の4割が賛成しないといけないということになっている。だから、6割の人が投票してその6割が賛成しても、賛成した人は有権者の36%に過ぎないから、これでは足りないということになるわけだ。
外国の話はここまでとして、さっき話した学級委員のことに戻そう。あれは極端な話で、学級委員がそんな無茶はしないって思うでしょう。でも、だれが学級委員になるか、学級委員になったとたんそれまでと違うことをし始めるか、なんてことは誰にも分からないでしょう。だから、誰が学級委員になってもいいような決まりが必要なんだ。君たちは、アドルフ・ヒトラーという名前を聞いたことがあるでしょう。アンネの日記はもう読んだかな。ドイツの人がアドルフ・ヒトラーに政治を委ねたとき、まさか、アンネのような悲劇が生まれるとは思ってもいなかったはずだ。
憲法制定権力の大切さは分かったと思う。ところが、自民党、公明党、民主党は、この憲法制定権力が私たちにあることを軽くみて、最低投票の制度を決めないことで一致した。そういうルールを今の国会で決めようとしている。それでいいだろうか(ここ←参照)。
議員は口を揃えてこういう。「例え、最低投票の制度を決めなくても、発議(提案)するには議員の3分の2の賛成が必要です。3分の2も賛成するってありえないくらい大変なことです。しかも、その3分の2の議員に投票してくれた人の数はたくさんいる。だから、最低投票なんて不要です」と。
それだけ自信があるなら、逆に、最低投票の制度を決めてもいいんじゃないだろうか。陸、陽菜、そう思わないかい。
しかも、もっと、ひどいことは、自民党の改憲案(http://www.jimin.jp/jimin/shin_kenpou/shiryou/pdf/051122_a.pdf)は、発議を議員の過半数で足りるようにしようとしていることだ。つまり、議員の3分の2が賛成するから大丈夫というのは「騙し」なんだ。しかも、この騙しがばれないように、自民党はHPから新憲法草案をはずしている(2007年2月4日現在)。こういうのをなんて言うんだろう、そう「卑怯」「ずる賢い」っていうんだね。難しい言葉では「姑息」「卑劣」「狡猾」ともいうんだ。
陸、陽菜、憲法制定権力って声を出してみよう。何だか頼もしいよね。この力を失わないように、みんなにも、この話をつたえてほしい。
★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
※このブログのトップページへはここ←をクリックして下さい。過去記事はENTRY ARCHIVE・過去の記事,分野別で読むにはCATEGORY・カテゴリからそれぞれ選択して下さい。
また,このブログの趣旨の紹介及びTB&コメントの際のお願いはこちら(←クリック)まで。転載、引用大歓迎です。なお、安倍辞任までの間、字数が許す限り、タイトルに安倍辞任要求を盛り込むようにしています(ここ←参照下さい)。
憲法って何だろう。憲法を読んだことがあるかな。憲法に従って、国会議員が選ばれ、法律を定める。その法律を政府が実行する。もし、国会の法律の決め方や、政府の実行の仕方が間違っていたら憲法に従って、裁判所が間違いだと指摘する…。
一度憲法を読んでごらん。結局、憲法っていうのは、その国に住む人について国(国会、政府、裁判所)が何かをしようとしたときに、国が守らなければならないルールなんだ。憲法は、私たちが守るのではなく、国が守るものなんだ。
憲法制定権力とは、憲法、すなわち国に守らせるルールを決める力のことだ。この力は私たち市民が持っていなければならない。なぜなら、国がその力を持ったら、自分にとって都合のいいルールを決めることになるからだ。これは分かるでしょう。もし、夏休みの時間の過ごし方を君たちで自由に決めていいよって言ったら、君たちは、一日中遊び時間にするだろう。それがよくないことは分かるよね。よくないことだと分かっていても、自分で自分のことを決めようとしたら、どうしても甘くなってしまうんだよね。憲法制定権力も同じこと、私たちはその力を絶対に手放してはいけない。
ところで、陸、陽菜は、いま、憲法を変えようという動きがあるのを知っているかな。安倍首相が自分の任期中に憲法を変えたいと張り切っている。その内容については、今度ゆっくり話すとして、憲法を変える力も当然、憲法制定権力の一つとして、私たちに与えられている。憲法96条には次のように書いてある。
【この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする】
つまり、国民の過半数が賛成して初めて憲法を変えることができるんだ。
ところが、国(国会、政府)は、この憲法を変える私たちの力を弱めようとしている。
過半数っていうのがポイントなんだ。陸、陽菜、ここでいう「国民の過半数」ってどういうイメージだろう。何歳から憲法を変えることについて投票することができるかという点では意見がいろいろあるけれど、仮に20歳以上だとすると、日本では1億人くらいの人に投票する権利があることとなる。まぁ、全員が投票するわけではないから、過半数は、5000万人以上っていうイメージではないだろう。でも、たとえば、3人だけ投票してそのうちの2人が賛成したから過半数だっていうことで憲法を変えるのもおかしな話だよね。
たとえば、君のクラスの学級委員が好きな給食をたくさん食べようとして、「給食をお代わりする順番を決める人は学級委員とする」というルールを決めようとしたとするね。このルールを決めるのはちょっと大変そうだったが、偶然、ある昼休みに学校にスマップが来ることとなった。学級委員はその日の朝のHRで、「今日の昼休みに臨時の学級会を開いて給食のお代わりする人を決めます。食べ方がゆっくりの人もいるし、早く食べると胃にも悪いから、ルールをつくっておいた方がいいでしょう」と説明した。でも、ほとんどの生徒はスマップのことで頭がいっぱいで、学級委員の説明がどういう意味かをよく理解することが出来ませんでした。「平等にしたり、体に悪いことをなくすのなら、いいことだな。昼休みは学級会には出ないでスマップを見に行こう」、みんなはこう考えたんだ。
昼休み、みんなはスマップを見に運動場へ出かけた。クラスには、学級委員とその友達が3人と陸、陽菜、君たちが残ったんだ。「では、この案に賛成の人は手を挙げて下さい」。陸はこう質問するんだ。「ちょっと待って。学級委員はどういうルールでお代わりの順番を決めるんですか」。陽菜は「学級委員だけが決めることが出来るのはおかしいんじゃないですか」と続いた。でも、それに対し、学級委員の友達はいう。「学級委員が信じられないのか。みんなのために配るんだ。順番を決めるのも大変なんだ。それを自分でしてくれるっていうんだから任せよう」…。この議論は長くは続かない。というのも…「では、昼休みも終わるので、多数決します。この案に賛成の人は手を挙げて下さい」…こうして、3人が賛成したことで、次の日から、学級委員と友人は、美味しい給食のときはお代わりを自分たちで好きなようにできるようなったとさ。そして、陸、陽菜、君たちは逆らったといって、お代わりを絶対にもらえないんだ。
極端な話かもしれないけど、こういうことが起きないようにしておく方がよいよね。だから、外国では、たくさんの国で、最低投票率などが決められているんだ。国会の事務局の調査では、最低投票を何らかの形で決めている国は、パラグアイ、韓国、スロバキア、ポーランド、ロシア、ウルグアイ、コロンビア、ウガンダ、デンマーク、ペルー、キューバ(以下は、「過半数」を有権者の2分の1以上とする)、セルビア、ベラルーシ、ラトビアの14カ国だ。これに対し、最低投票を決めていない国は、アイルランド、イタリア、オーストリア、スペイン、スイス、フランスだけだ(トルコ、フィリピンは不明)。しかも、これらのうち、直接民主制という特殊な体制をとっているスイスを除くと、選挙のときの投票率は日本(52%)よりも高い。アイルランド67%、イタリア87%、オーストリア76%、スペイン81%、フランス60%という具合だ(ここ←参照)。
また、イギリスでも、40%ルールと言って、有権者の4割が賛成しないといけないということになっている。だから、6割の人が投票してその6割が賛成しても、賛成した人は有権者の36%に過ぎないから、これでは足りないということになるわけだ。
外国の話はここまでとして、さっき話した学級委員のことに戻そう。あれは極端な話で、学級委員がそんな無茶はしないって思うでしょう。でも、だれが学級委員になるか、学級委員になったとたんそれまでと違うことをし始めるか、なんてことは誰にも分からないでしょう。だから、誰が学級委員になってもいいような決まりが必要なんだ。君たちは、アドルフ・ヒトラーという名前を聞いたことがあるでしょう。アンネの日記はもう読んだかな。ドイツの人がアドルフ・ヒトラーに政治を委ねたとき、まさか、アンネのような悲劇が生まれるとは思ってもいなかったはずだ。
憲法制定権力の大切さは分かったと思う。ところが、自民党、公明党、民主党は、この憲法制定権力が私たちにあることを軽くみて、最低投票の制度を決めないことで一致した。そういうルールを今の国会で決めようとしている。それでいいだろうか(ここ←参照)。
議員は口を揃えてこういう。「例え、最低投票の制度を決めなくても、発議(提案)するには議員の3分の2の賛成が必要です。3分の2も賛成するってありえないくらい大変なことです。しかも、その3分の2の議員に投票してくれた人の数はたくさんいる。だから、最低投票なんて不要です」と。
それだけ自信があるなら、逆に、最低投票の制度を決めてもいいんじゃないだろうか。陸、陽菜、そう思わないかい。
しかも、もっと、ひどいことは、自民党の改憲案(http://www.jimin.jp/jimin/shin_kenpou/shiryou/pdf/051122_a.pdf)は、発議を議員の過半数で足りるようにしようとしていることだ。つまり、議員の3分の2が賛成するから大丈夫というのは「騙し」なんだ。しかも、この騙しがばれないように、自民党はHPから新憲法草案をはずしている(2007年2月4日現在)。こういうのをなんて言うんだろう、そう「卑怯」「ずる賢い」っていうんだね。難しい言葉では「姑息」「卑劣」「狡猾」ともいうんだ。
陸、陽菜、憲法制定権力って声を出してみよう。何だか頼もしいよね。この力を失わないように、みんなにも、この話をつたえてほしい。
★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
※このブログのトップページへはここ←をクリックして下さい。過去記事はENTRY ARCHIVE・過去の記事,分野別で読むにはCATEGORY・カテゴリからそれぞれ選択して下さい。
また,このブログの趣旨の紹介及びTB&コメントの際のお願いはこちら(←クリック)まで。転載、引用大歓迎です。なお、安倍辞任までの間、字数が許す限り、タイトルに安倍辞任要求を盛り込むようにしています(ここ←参照下さい)。