緒方重威(しげたけ)元公安調査庁長官ら3人が、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部(東京都千代田区)の土地・建物の移転登記事件で、土地などをだまし取ったとして、東京地検特捜部に逮捕された。特捜部では、緒方元長官らが売買契約前に朝鮮総連側から報酬などとして受け取った4億8400万円についても、詐欺容疑で立件する方向で動いており、続報が次々と報じられている。
しかし、冷静に考えてほしい。写真で引用した夕刊フジにも同じような見解が掲載されているが、総連は、本部の土地・建物の差押えを合法的に免れるため、いったん、公正な価格で土地・建物を第三者に売却し、その代金をRCCに支払ったうえ、債務が処理できたら、土地・建物を買い戻そうというプランを立てていた。したがって、土地・建物の名義を変えたのは、総連も同意したうえでのことであり、もし買い手が金を用意できなければ、名義を総連に戻すことも予定されていたはずであり、現にそうされている。
そうだとすると、少なくとも、土地建物についての詐欺罪は、本来ならば起訴に堪えないのではないか?検察はそのことを十分承知で、あえて、逮捕したのではないだろうか…。三井環事件のときと同じように…。
もちろん、元長官らが報酬などとして受け取った4億8400万円については、それが預かったものなのか、報酬として受け取ったのか、返す予定があったのか、なかったのか、いまだ、不明であり、詐欺罪が成り立ちうるかもしれない。
しかし、だからといって、無罪の可能性が大きい土地・建物についての詐欺事件で逮捕するのは、あまりに、刑事訴訟法を無視した「国策捜査」ではないだろうか。
上記夕刊フジの記事を書いた須田慎一郎記者も「今回の逮捕劇が相当に無理筋であることは明らかだろう」としている。
では、なぜ、このような国策捜査をしたのか?須田記者が引用する検察庁有力OBは、「特捜部-というよりも検察サイドには、何が何でも立件させなくてはならない特別の事情があったのだろう」と述べるにとどまり、須田記者はそこから先を語らせていないが、公安調査庁の解体論を防ぐためのものであることは明らかだろう。元長官がビジネスの相手として、しかも、苦境を救う形で関与するということは、総連がそんなに危険な組織ではないことを認めるようなものだ。
公安調査庁の公式サイトには、「内外情勢の回顧と展望 ―深刻化する核・テロ問題及び混迷する国際情勢と日本―」(平成19年1月) として、末尾に記載するような目次が掲載されている。つまり、総連の監視は、公安調査庁のメーンテーマなのだ。それにもかかわらず、元長官自らが、安全な組織だと宣言するような行動をとった。
これは公安調査庁にとってはまさに存亡の危機だ。
しかも、拉致疑惑で点数を稼ぎ、テポドンで危険だと世論を煽ってきた安倍にとっても、市民が「北朝鮮って大して危険でないんだ。だって、北朝鮮とつながっているのは明白な総連と元長官がビジネス関係にあるのだから」と真の姿に気付かれるのは困る。
こうして、官僚と政府の利害が一致し、国策捜査へと踏み込んだと考えるのが合理的だ。
そういえば、ついこの間までは、総連をも犯罪者とする形で、すなわち、強制執行妨害罪で本件を上げ、総連をも一網打尽にしようとしていたが、さすがに、土地建物の名義を直ちに戻したことにより、それは無理だと分かったのだろう。捜査方針を転換し、元長官逮捕に絞って、元長官に犯罪者のレッテルを貼ることによって、長官の行為を特殊な行為と印象づけ、公安調査庁維持及び北の脅威論維持だけは獲得しようとしているのだろう。
そういう背景があると思われるなかでの、無罪と思われる土地建物の詐欺容疑での元長官逮捕は、許されざる「国策捜査」であり、参議院選挙で、与党を完膚無きまでにたたきつぶさなければならないことが、この事件からも分かるのではないだろうか。
■■上記目次引用開始■■
はしがき
第1 平成18年の公安情勢の概況
第2 平成18年の国際情勢
1 北朝鮮・朝鮮総聯
(1) ミサイル発射・核実験で緊迫した北朝鮮情勢
(2) 「不安定化」要因の増大が続く北朝鮮の国内事情
(3) 北朝鮮の核実験などにより,日朝関係が更に悪化
(4) 「友好」から一転,相互不信と対立を深めた中朝関係
(5) 北朝鮮のミサイル・核問題で迷走する南北関係
(6) 逆風の中で組織の結束・統制強化に努める朝鮮総聯
2 中国
(1) 胡錦濤国家主席,政権基盤の強化を図りつつ,「和諧社会」実現を指向
(2) 対米協調を維持する中で,発展途上国などとの関係を一段と強化し,国際社会における影響力拡大を企図
(3) 日中首脳会談再開で,「戦略的互恵関係」の構築を打ち出し,“関係改善”をアピール
(4) 陳水扁政権の危機的状況を背景に中国の対台湾平和統一攻勢が一段と浸透
3 ロシア
サミット開催などにより存在感の誇示に努めたロシア
4 中東・アジア
(1) イラクでは新政権発足するも治安は悪化,相当深刻な状況
(2) 不透明なイラン核開発問題の行方
(3) 混迷深まる中東和平プロセス
(4) 治安情勢が深刻化するアフガニスタン
5 国際テロ
(1) 国際社会に拡散するイスラム過激派などの脅威
(2) 我が国を含む先進諸国はテロ対策を一層強化
第3 平成18年の国内情勢
1 オウム真理教
(1) 観察処分の期間更新(第2回目)決定。その後も,危険性を保持するオウム真理教
(2) 麻原の死刑判決が確定するも,麻原への帰依は変わらず。死刑執行が現実的となる中,不法事案じゃっ起の可能性も
(3) 教団運営をめぐる意見対立から上祐が“新団体”設立構想を表明
2 共産党・過激派等
(1) 共産党,過激派は,在日米軍再編計画の日米合意に反発し,反対活動を活発化
(2) 共産党,過激派は,自衛隊イラク派遣や北朝鮮核実験を取り上げて反戦・反核運動を実施
(3) 共産党,過激派は,国民投票法案,教育基本法改正案,「共謀罪新設」法案などの重要法案をめぐり,政府批判を展開
(4) 内部対立などを抑えつつ組織基盤の強化に努めた過激派
(5) 自民批判層・無党派層への浸透に努めた共産党
(6) パレスチナ問題に再び重点を置き始めた日本赤軍
(7) 各国団体との交流に力を注ぎ,運動基盤の強化に取り組んだ反グローバル化勢力
3 右翼団体
外交・領土問題などを中心に活動する中で,凶悪事件をじゃっ起した右翼団体
■■引用終了■■
★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
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