政治家の世襲制度について批判をしてきた手前、弁護士の間での世襲についても触れないわけにはいかない。正直、結構、親や親族が同じ弁護士や裁判官だったりする弁護士は少なくない。裁判官や検察官でもそうだろう。少なくとも、職業全体での平均世襲率と比べると明らかに、法曹では世襲割合が多いと思う。もちろん、政治家という市民の代表者ではないのだから、世襲すること自体を批判するつもりはない。しかし、2世、3世ばかりになることは、司法における多様性を失わせることになるのではないでしょうか。そう思いませんか。
親の姿を見て、社会のために働きたいと思って弁護士になる人も多いように思う。しかし、はっきりいうと、ビンボー人(私もそう環境で育ったので、わかりやすくそう表現する)の苦労が分かる割合は、2世、3世の方が、そうでない法曹よりも小さくなるはずだ。そうだとすると、2世、3世ばかりになると、ビンボー人の気持ちが分からない弁護士が増える可能性が大きくなるのではないだろうか。パンがないなら、ケーキを食べたら…ていうのは大げさでも、育った環境を無視して「何でもっと努力しないんだ」という見方をすることになりかねない。
ご存じの方も多いと思うが、司法試験に合格した後の研修中(いまは1年間)に国から支給される生活費(月額20万円程度)が来年の合格者から廃止される予定となっている。
残念ながら、これについて、疑問視する声は大きくはない。「弁護士になれば、それくらい払えるだろう」「自分が儲けるための研修なのだから、返して当然だ」…簡単にいえば、そう思われているのだろう。
しかし、司法試験が一発勝負型から、運転免許スクール型(=ロースクール)になったために、スクールに通うのにかなり高額の費用がかかる。それを負担するだけでも貧乏人にはつらいのに、さらに、研修期間の生活費まで貸付になってしまうと、弁護士を始めるときには500万円くらいの借金をかかえることになりかねない。
果たしてその弁護士は、ビンボー人側に立つことができるだろうか。儲かる側で仕事をするほかなくなるのではないだろうか?
高校から奨学金をもらってきたビンボー人出身者としては、研修期間の生活費が給付制であったことが救いだった。もし、給付制でなかったら、司法試験を受けることすらなかったかもしれない。
周りの若手弁護士をみても、結構経済的に厳しい人が少なくない。それでも、儲かる途を安易に選択しないで、頑張っている。
その人が社会から受ける恩恵は、社会の中でその人が行う役割に応じて変わってくるはずだ。例えば、診療拒否ができない医師と違い、弁護士には受任拒否ができる。それゆえに、弁護士の多様性が必要になる。多様性を維持させるための社会の仕組みが必要になる。
研修期間の生活費の給付はその一つだ。これが貸与制になれば、志望の時点で躊躇するビンボー人が出てくるかもしれないし、研修中のビンボー修習生は、アルバイトに精を出し、弁護士などとしての研鑽が十分できないかもしれない。卒業試験(2回試験)に合格できず、資格を取得できないかもしれない。
リーガルエイドを充実させ、ビンボー側で仕事をしても十分に生活していけるようになればまだいいのだが、そういう仕組みもない。
未来の弁護士、裁判官に格差社会を是正することを期待することなんてできるのだろうか…。
冒頭の書籍は、自民党の河井克行議員によるもの。【日本の法曹界にとんでもないことがおきている。それは「法科大学院」とその法曹養成を柱にした法曹人口「年間3000人増員計画」である。日本国を蝕むこの2つの問題をとり上げ、司法の危機的状況を訴えるのが著者(前法務副大臣)である。先の2008年9月11日に発表された平成20年新司法試験の合格者数は、司法試験委員会が公表していた合格者数の「目安」である2100人~2500人の下限さえも割り込む2065人であった。翌朝の各紙報道はその状況とあわせ、現在の司法改革に疑問を投げかけるものが多かった。しかし、こうした報道では知られない大問題がこの問題には隠されている。】…目次を見ると、「あまりにも理不尽な『年間3000人増員』の根拠」、「金持ちの子供しか弁護士になれないのか」、「このままでは弁護士だけでなく、判事、健治の質も低下していく」などと自民党議員らしからぬ表現だが、それだけ危機感を持っているということだ。
民主党政権になったいま、そして、日弁連会長選挙が迫ったいま、考えてみる必要があるテーマではないしょうかねぇ…。
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★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
★「News for the People in Japanを広めることこそ日本の民主化実現への有効な手段だ(笑)」(ヤメ蚊)
※このブログのトップページへはここ←をクリックして下さい。過去記事はENTRY ARCHIVE・過去の記事,分野別で読むにはCATEGORY・カテゴリからそれぞれ選択して下さい。
また,このブログの趣旨の紹介及びTB&コメントの際のお願いはこちら(←クリック)まで。なお、多忙につき、試行的に、コメントの反映はしないようにします。コメント内容の名誉毀損性、プライバシー侵害性についての確認をすることが難しいためです。情報提供、提案、誤りの指摘などは、コメント欄を通じて、今後ともよろしくお願いします。転載、引用はこれまでどおり大歓迎です。
親の姿を見て、社会のために働きたいと思って弁護士になる人も多いように思う。しかし、はっきりいうと、ビンボー人(私もそう環境で育ったので、わかりやすくそう表現する)の苦労が分かる割合は、2世、3世の方が、そうでない法曹よりも小さくなるはずだ。そうだとすると、2世、3世ばかりになると、ビンボー人の気持ちが分からない弁護士が増える可能性が大きくなるのではないだろうか。パンがないなら、ケーキを食べたら…ていうのは大げさでも、育った環境を無視して「何でもっと努力しないんだ」という見方をすることになりかねない。
ご存じの方も多いと思うが、司法試験に合格した後の研修中(いまは1年間)に国から支給される生活費(月額20万円程度)が来年の合格者から廃止される予定となっている。
残念ながら、これについて、疑問視する声は大きくはない。「弁護士になれば、それくらい払えるだろう」「自分が儲けるための研修なのだから、返して当然だ」…簡単にいえば、そう思われているのだろう。
しかし、司法試験が一発勝負型から、運転免許スクール型(=ロースクール)になったために、スクールに通うのにかなり高額の費用がかかる。それを負担するだけでも貧乏人にはつらいのに、さらに、研修期間の生活費まで貸付になってしまうと、弁護士を始めるときには500万円くらいの借金をかかえることになりかねない。
果たしてその弁護士は、ビンボー人側に立つことができるだろうか。儲かる側で仕事をするほかなくなるのではないだろうか?
高校から奨学金をもらってきたビンボー人出身者としては、研修期間の生活費が給付制であったことが救いだった。もし、給付制でなかったら、司法試験を受けることすらなかったかもしれない。
周りの若手弁護士をみても、結構経済的に厳しい人が少なくない。それでも、儲かる途を安易に選択しないで、頑張っている。
その人が社会から受ける恩恵は、社会の中でその人が行う役割に応じて変わってくるはずだ。例えば、診療拒否ができない医師と違い、弁護士には受任拒否ができる。それゆえに、弁護士の多様性が必要になる。多様性を維持させるための社会の仕組みが必要になる。
研修期間の生活費の給付はその一つだ。これが貸与制になれば、志望の時点で躊躇するビンボー人が出てくるかもしれないし、研修中のビンボー修習生は、アルバイトに精を出し、弁護士などとしての研鑽が十分できないかもしれない。卒業試験(2回試験)に合格できず、資格を取得できないかもしれない。
リーガルエイドを充実させ、ビンボー側で仕事をしても十分に生活していけるようになればまだいいのだが、そういう仕組みもない。
未来の弁護士、裁判官に格差社会を是正することを期待することなんてできるのだろうか…。
冒頭の書籍は、自民党の河井克行議員によるもの。【日本の法曹界にとんでもないことがおきている。それは「法科大学院」とその法曹養成を柱にした法曹人口「年間3000人増員計画」である。日本国を蝕むこの2つの問題をとり上げ、司法の危機的状況を訴えるのが著者(前法務副大臣)である。先の2008年9月11日に発表された平成20年新司法試験の合格者数は、司法試験委員会が公表していた合格者数の「目安」である2100人~2500人の下限さえも割り込む2065人であった。翌朝の各紙報道はその状況とあわせ、現在の司法改革に疑問を投げかけるものが多かった。しかし、こうした報道では知られない大問題がこの問題には隠されている。】…目次を見ると、「あまりにも理不尽な『年間3000人増員』の根拠」、「金持ちの子供しか弁護士になれないのか」、「このままでは弁護士だけでなく、判事、健治の質も低下していく」などと自民党議員らしからぬ表現だが、それだけ危機感を持っているということだ。
民主党政権になったいま、そして、日弁連会長選挙が迫ったいま、考えてみる必要があるテーマではないしょうかねぇ…。
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★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
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