あ可よろし

「あきらかによきこと」は自分で見つける・おもしろがる
好奇心全開日記(不定期)

見えない戦争

2009-10-06 | 本(文庫本)
三崎亜記さんの『となり町戦争』を読みました。この作家さんの作品を読むのはこれが初めてです。衝撃的なタイトルだし、第17回小説すばる新人賞受賞作品だし、映画化もされた(いつものことながら私は見ていません)ようですから、以前から興味はありましたが、「ようやく読めた」という感じです。

ある日届いた町の広報に「舞坂町はとなり町・森見町と戦争を始めます。開戦日5月7日。終戦予定日は8月31日」というお知らせがあった。ごく普通のサラリーマンである「僕」は、よく状況が飲み込めないまま、なぜかとなり町の偵察業務に就かされてしまう。しかし日常は「戦争中」とは程遠く、いつもと何ら変わりない日々が過ぎていく。ところが、その後に発行される広報を見ると「戦死者」の数が掲載されている。どこでどんな戦争が行われているのかもわからないまま、「僕」は対森見町戦争推進室の「香西さん」と偽装結婚をしてとなり町へ居を構え、本格的な偵察業務に入る。徐々に「僕」の中に戦争は侵食し、知らず知らずのうちに戦争の中心に「僕」はいた…。

作品の中には、戦争状態にあるシーンも出てきます。やはりとなり町との戦争は行われていました。しかしそのドンパチなシーンよりも怖かったのは、自分ではまったく実感がないのに「確実に戦争にかかわっている」という事実。戦争が「公共事業」として行われ、町の経済にプラスになるから戦争が行われているのだ、という「となり町戦争」の理由でした。
公共事業のために戦争が行われ、戦死者が出る…。「ンなアホな!」なんですが、そう思うのは私が平和ボケしている日本人だからなのかもしれないと考えると、背筋がちょっと寒くなりました。
自国が行っている戦争でなくても、意識していなくても、すでに戦争にかかわっているものなのかも…。
この作品、ガツンと心にくるものではなく、後でじわじわ効いてくるボディブローのような小説でした。
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2 コメント

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へー (ハナキャップ)
2009-10-08 23:52:08
なんか斬新なストーリーだねぇ… 興味湧きます。
あれ? もしかして、何年か前に映像化されてない?

台風はご無事でしたかしら…?
こっちは進路がズレてくれたので、
雨はなかなかですが、風はたいしたことなく済みそう…。
でも、テレビで観ると結構ひどいとこはひどかったそうな…
こういう日は本当に仕事休めたらいいのにね。
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ハナキャップさん (とみ)
2009-10-10 11:01:57
例の台風、ご心配かけました 「電車の混みようが凄かった!」以外は大丈夫でした。
夜中の「叩きつけるように降る雨」が凄くて、すっかり目が覚めたための寝不足の方が辛くてね~

リアリティはないんだけど、でも「まったくあり得ない話じゃない!」ってところがミソです。
公共事業としての戦争って、そういうことをする自治体に住んでいたら、すぐに引っ越しちゃうけどね。
ちょっと面白い作品を書く作家さんだな~って興味がわいて、もう1冊、続けて読みました。
その紹介はまた後日!
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