【申告】
1.数ヶ月前から、おててセンサーをパッチンした後に話し出すまでに時間が空いたり、話し出しても言葉と言葉に時間が空きます。 (自然に話し出した時も同様)
2.まぶたが閉じたままの時間が長かったり、まぶたが開きっぱなしの時間が長かったりしており、まぶたが半分閉じた状態などになることがありません。
3.寝かしつけセンサーが反応しません。
【初診】
関東地方からの来院です。
このユメルくんは、お家に来てから10年以上経っている家族です。これまでに2013年,2014年,2015年、2019年と2つのおもちゃ病院で治療履歴がありました。その際のカルテも提供いただき治療に当たることができました。
背中のスイッチ類に異常はありません。
電池BOXにも異常はありません。
リセットボタンを押し、動きを確認するとまぶたの開閉動作に間が開きます。
おててセンサーの持病は、やさしく握ってられるのか異常有りません。
おててセンサーを押しても、反応が遅かったり、反応しなかったりします。
姿勢センサーも動作していません。
寝かしつけ動作は、姿勢センサーが動作していませんので内部を診ませんと確認が出来ません。
何か、マイコンに原発動作があるのか暗雲立ちこめるスタートでした。
頭部を開け、まぶたのギヤBOXを確認します。
まぶた駆動のギヤには、破損などはありませんでした。まぶたの開閉位置を決める4つのスイッチも機械的な動作はしています。テスターにて、スイッチの導通を確認出来ました。
ユニバーサル電源を接続して動きを観察すると、まぶたの開閉動作をしていないときも約300mAの電流が流れています。これは、異常値です。おしゃべりだけしている間は、100mA程度です。これだけの電流が流れるのはモータです。そこでモータを確認しました。モータを外し単体での動作確認です。
モータには、異常は有りませんでした。
2019年12月に治療しているおもちゃ病院のカルテにも電流が300mA流れ、まぶたの開閉位置を決めるスイッチの接点を磨いて、治癒した記録がありました。
他病院で4つのスイッチ全てを磨いたか否かはわかりませんが、異常に汚れていたのがカルテの写真から確認出来ます。それから3年半経過しているのですが、極端な接点汚れとは思えませんでした。念のため4つのスイッチを磨くと300mAの電流は流れなくなりました。
以上の状況からすると、病気の症状はつぎのように起きていたと考えられます。
・まぶたの開閉位置を検出するスイッチの接点汚れ(酸化膜)により、電気的接続が不安定になっていました。
・プログラムのロジックはわかりませんが、まぶたの動きに合わせて次の動作に移行しているため、まぶたを動かすモータを駆動しまぶたの開閉位置を検出するスイッチからの信号を待ちます。ところが、スイッチからの信号が戻ってこないため、この間にギヤは回転範囲を超えてしまいモータの回転を伝えるベルトが空回り状態になります。おそらくこの時の電流値が300mAになっていたものと思います。一方プログラムは、スイッチからの信号を待つのですが、堪忍袋の緒が切れて次の動作に移って行きます。この時間が"動作の間"として感じられたと思います。
今回接点を磨いても同じ症状になるまでの時間は短いと思われますので、4つのスイッチを全て交換しました。
これで申告のあった症状の1,2は解消されました。
次に申告3の寝かしつけセンサーが反応しない病状への診察です。
寝かしつけるには、姿勢センサーがユメルが仰臥位であり、寝かしつけセンサーが働く必要があります。
姿勢センサーからの確認です。
これも接点の導通具合が良くありません。10年以上を経過していますので代替センサーを取り付けることにしました。
ねかしつけセンサーを確認します。
以前のおもちゃ病院で、センサーの配線剥がれ予防の目的かと思いますが、振動板が接着剤で固定されています。また、センサーの電極も半田付けされた部分だけになっており、これでは感度が低くなります。
センサーも交換しました。
圧電サウンダの配線半田付け部に負荷がかからないようにカバーを作成し、配線の出口を接着剤で配線を固定しました。
これで、寝かしつけもできるようになりました。
【治療後記】
動きにプログラムが介在すると解析が難しくなります。今回は、過去のカルテを提供していただけたので診察にとても役立ちました。
比較的病気の多いユメル君でしたが、その度に病院に通い治療してもらい元気に今日まで過ごしてきたようです。
経過観察後に退院です。これからも元気でいられることを祈っています。
【おまけ】
姿勢センサーについては、次の記事を参照してください。