【申告内容】
後輪を押しつけると、サイレンが鳴るのだがならなくなった。
電池を新しく替えたが状況は変わらなかった。
お気に入りのおもちゃで早く治したい。
【初診】
この患者さんは、1996年生まれでサスペンション機能を活かし、車体を上から押し込むことで赤色灯が点滅してサイレンが鳴るものです。
申告通り、サイレンは鳴りません。赤色灯も光りませんので駆動の基本部分に病巣を抱えています。
電池BOXの負電極に液漏れによる腐食がありました。軽く研磨しましたが変化はありませんでした。
お気に入りのおもちゃなのでしょう。角張ったところなどかなり塗装が剥がれています。トミカの宿命かもわかりませんが。(^_^;)
トミカの車体は、アルミダイキャストで製造されていて車体とシャーシはかしめで結合されています。
開腹するにも、このかしめ部を壊すことからです。治療後の閉腹方法も頭の隅に置いての治療になります。
簡単に車の構成からです。
治療内容がわかりやすいように始めにサイレントミカのメカニズムから説明します。その後今回の病気の原因を説明していきたいと思います。
車体が押し込まれることで後輪車軸の高さまで車軸受板が跳ね上げられます。車軸受板はSWレバー押しリンクを持ち上げ,起動スイッチの接点が閉じられます。
この時、車軸受板は起動スイッチの接触を確保するために、樹脂のカシメ部、後輪車軸部、SWレバー押しリンク部により”への字”状に曲げられます。車軸受板はステンレス綱でできていて弾性はあるのですが、繰り返し動作により少しずつ変形が起きたようです。その結果が次の写真とイメージ図です。
車軸受板が変形しているために、起動スイッチの接点を閉じるまでSWレバー押しリンクを上げられないため接点が閉じられずに動作をしない状態になっています。
治療中に車軸受板を留めてあった樹脂カシメ部が破損して車軸受板も外れてしまいました。ここにも長い時間の疲労が蓄積していたものと思います。
車軸受板の変形を修正しシャーシに固定しなければなりませんが、かしめてあったピン状の樹脂先端が破損し力の掛かる場所でもあり、熱を加えて接着とはいきません。
そこで、シャーシの一部を加工してハトメ留めをすることにしました。
本来ならば1つのハトメで留めるのですが、シャーシの厚みがハトメ長より厚く届きません。そのためサイズの違うハトメで上下方向から挟み込むようにして接着剤で固定しました。
起動SW接点で接触不良は困りますが、車体の押し込み力が弱くても起動SW接点が閉じるように起動SWレバーを若干曲げました。
負電極に液漏れによる腐食とへたりが感じられたので交換です。燐青銅でおきかえました。
参考までに回路図です。回路図に落とす程ではありませんが。
基板に実装されている部品です。この面の裏側にCOBがあります。LEDは、開腹するために外さなければならず写真にはありません。この面に実装されます。
閉腹準備です。車体に穴を開けねじ止めです。アルミなので雌ねじを潰さないようにねじを切りながら締めていきます。
最後に化粧直しです。塗装の剥がれた箇所に色づけしました。焼き付けではないので耐久性はありませんが、きれいになったでしょうか?
【治療後記】
24,25年にもなるトミカのくるまです。お父さんの遊んだトミカでしょうか?。今はサイレントミカは発売されていませんが、メーカも手を変え品を変え人気のあるおもちゃの一つです。
元気になって退院しました。