欧州の様相が気になる。欧州議会選挙で極右政党が躍進した。もっとも、議席は全体で750もあり、中道右派が圧倒多数の構図に大きな変化はない。更に極右政党というのもマスコミの扇動的表現で、本当の極右(国益だけを追求し暴力を厭わない)ではない。但し、これが大きな変化の兆候という可能性はある。
なぜなら、この変化は環境政策や移民政策に対する国民の不満の高まりを意味するからだ。ガソリン車の生産中止や酪農業の強制廃業、移民増加による治安悪化などに訴求する極右の主張が受け入れられつつあるわけだ。環境を前面に出す緑の党は20議席も失い、中道も当然その主張に寄り添うだろう。
内政が不安定化した国もある。特に仏国では、マクロン大統領が敢えて下院を解散し総選挙に打って出た。凶と出れば、ルペン率いる極右政党「国民連合」が国民議会を支配する。独国では「ドイツのための選択肢」が国内2位の得票率を得て、ショルツ首相の「社会民主党」を上回った。
その中で伊だけは、メローニ首相が極右政党「イタリアの同胞」所属なので安定だ。メローニ首相は、今回のG7会議の議長も務めた。しかし、昨年の広島G7に比べ各国の代表者は内政基盤が不安定で、世界情勢を語る迫力に欠けていた(英仏米日の代表者は来年のG7には来ないかも)。
この流動的な情勢の中で、ウクライナ問題では強気だった。米国は供与する武器による露国内への攻撃を認め、仏国はミラージュ戦闘機を提供し、英国では徴兵制を復活させ、独国も兵士の募集を強化するという。露の凍結資産の流用(元金や運用益を戦後復興支援に使う)も検討されている。
露はこれに反発し、露国内の各国の資産凍結や流用に出るだろう。更には、プーチン自ら中共国や北朝鮮を訪問し軍事協力を取り付けた。大西洋で軍事演習を行いキューバに(核兵器を搭載した)原潜を派遣した。1962年のキューバ危機の再来かと見まがうばかりだ。第三次(大惨事)のきな臭さが漂う。
戦闘の長期化、ウクライナの劣勢、中東での戦争勃発、エネルギー価格の高騰などでEUの国民は支援疲れにある。その中で支持を得つつある極右は早期停戦を訴えている。もしトランプが当選すれば、米国は戦争から手を引く。かくて欧州は、今まで何度も痛い目をした露の強さを再度思い知らされるのか。